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電気系の三上教授がディスプレイ国際会議で最優秀論文賞を受賞


 宮崎国際会議場で第16回ディスプレイ国際会議(The 16th International Display Workshops)が12月9日(水)から11日(金)にかけて開催され、電気系の三上明義教授がBest Paper Award(最優秀論文賞)を受賞し、記念品として表彰状と盾が贈られた。本成果は本学の光電磁場科学応用研究所で取り組んだ研究テーマのひとつである。


 同国際会議は液晶、プラズマ、有機EL、電子ペーパー、立体表示など、電子情報ディスプレイ関連の研究・開発の成果を発表する場として毎年1回開催され、世界20ヶ国以上の地域から大学、公的研究機関および企業の研究者・技術者が集まる国際的に最も権威ある学会のひとつである。今回の参加者数は1,293名であり、発表論文数は555件であった。三上教授が受賞したBest Paper Awardは招待講演、一般講演、ポスター講演を含めたすべての発表論文から最も優秀な論文として選出されたものである。受賞論文のタイトルは「Light Extraction Techniques in High Efficiency 200-lm/W Organic Light Emitting Devices Coupled with High-Refractive-Index Substrate」であり、有機ELディスプレイの発光効率を飛躍的に改善するための光学理論を構築し、理論に基づいて発光素子を作製した結果、電力効率210-lm/W、外部量子効率57%の高効率化を実現したことが評価された。この値は蛍光灯の電力効率(100-lm/W)の約2倍に相当する。


 有機ELは数十ナノメートルの有機薄膜を積層した構造であり、素子内部では電気双極子の放射場が周囲の有機材料や金属電極と複雑に相互作用し、全反射効果を含めて放射エネルギーの約80%が熱的に損失していることが知られている。三上教授は、有機ELの光学現象を正確に理解するために、光線光学、波動光学、電磁光学および近接場光学理論を統合化したマルチスケール光学解析手法を開発した。更に、この解析結果に基づいて複雑な発光過程で失われる放射エネルギーを効率よく取り出すため、高屈折率基板上にマイクロキャビティ構造をもつ有機薄膜を形成し、マイクロレンズアレイ構造と組み合わせた素子構造を作製することで世界最高レベルの発光効率を実現した。


 現在、三上教授は経済産業省の委託研究として進められている国家プロジェクト「次世代大型有機ELディスプレイ基盤技術の開発」に参画していると共に、ディスプレイ装置、照明装置を手掛ける数社の民間企業と共同研究を進めている。同研究の成果は有機ELディスプレイの低消費電力化、次世代固体光源として期待されている有機EL照明技術などへの応用に繋がる。


 三上教授は、「企業の技術開発の成果が有利に捉えられる同学会において、大学の基礎研究の成果が評価されたことは有難い。有機デバイスはこれからの研究分野であり、今回開発した光学理論が産業界の発展に少しでも役立てば幸いです。」と語った。

 

 

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