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脳機能の解明を目指してロンドン大学と共同研究開始(7/8)

金沢工業大学は英国・ロンドン大学/ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(以下、UCL)、フランス国立科学研究センター(以下、CNRS)の研究者らと共同で、小動物脳磁研究所(KIT/UCL/CNRS共同小動物脳磁研究所/所長:デビッド・マッカルパイン教授)を設立しました。当共同研究所の開所式を現地日時7月8日(水)16時より、ロンドン・UCL 聴覚研究所(UCL Ear Institute)にて開催します。


ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)は、ロンドン大学群の中では最も古く、かつ最も大きなカレッジで、伊藤博文や夏目漱石も留学生としてここで学ぶなど、日本とも古くからつながりがある大学として知られており、多数のノーベル賞受賞者を輩出しています。


金沢工業大学先端電子技術応用研究所(所長:賀戸久教授)は、平成16年度~平成20年度に実施された文部科学省知的クラスター創成事業「石川ハイテクセンシングクラスター構想」に中核研究機関の一つとして参画しました。その一環で開発された動物実験用脳磁計システムの試作機の一つが、今年3月にUCL聴覚研究所に設置されました。UCL聴覚研究所では、聴覚の疾病や認知機能の解明を目的として、マウスやモルモットなどの小動物を用いた電気生理学的な研究を行っており、脳活動の神経生理学的信号を非侵襲的に得られる脳磁計は、理想的な観測手法となります。これにより、個別の神経細胞の活動と、画像診断装置によるヒトの脳機能イメージングの関連を解明する研究が可能になると期待されています。


開所式には金沢工業大学から、石川憲一学長、福田謙之大学事務局長、先端電子技術応用研究所所長賀戸久教授をはじめ数名の研究者が出席する予定です。


また、ロンドン大学とCNRSと、金沢工業大学との今回の共同研究の成果は、文部科学省知的クラスター創成事業(第II期)「ほくりく健康創造クラスター」のプロジェクト推進にも活用されることになっています。


ロンドン大学/UCL 聴覚研究所
UCL Ear Institute
332 Gray's Inn Road
London WC1X 8EE
http://www.ucl.ac.uk/ear/



< 用語解説 >
金沢工業大学 先端電子技術応用研究所
 金沢工業大学の附置研究所の一つ。脳磁計をはじめとするSQUID(超伝導量子干渉素子)を用いた超微小磁場計測装置に関する技術開発を基幹とした研究所で、1998年の設立以来、これまで横河電機や米国・マサチューセッツ工科大学等に技術供与してきました。2003年には横河電機が同研究所の技術を受けて、世界最高の440チャンネルの脳磁計システムを開発しました。SQUID磁場計測装置は、薄膜製造技術、低温技術、磁場遮蔽、信号処理技術などさまざまな技術の複合体で、すべての技術を備えた研究機関は国内ではほかに例を見ません。
 同研究所で開発されたヒト用の脳磁計は、これまでにアメリカ・マサチューセッツ工科大学、メリーランド大学、ニューヨーク大学やドイツ連邦物理工学研究所(PTB)やオーストラリア・マックゥェーリ大学などにも設置された経緯があります。今回の小動物用脳磁計は、平成16年度~平成20年度に実施された文部科学省知的クラスター創成事業「石川ハイテクセンシングクラスター構想」の枠組みの中で、脳磁計開発で培われた同研究所のSQUID磁場計測装置の要素技術を生かして開発されたものです。


小動物用脳磁計
 脳磁計とは脳神経の活動に伴って発生する微小な磁場を磁気センサで検出し、脳活動を観察する装置です。脳の磁場は地磁気の10億分の1程度の強度しかないため、検出にはSQUIDと呼ばれる超高感度磁気センサを使用します。検出した脳磁場データに、磁場源解析と呼ばれる処理を行うことによって、脳の神経活動を可視化することができます。ヒト用の脳磁計は現在では、脳機能解明の研究に利用されているほか、脳腫瘍手術の術前脳機能マッピングや、てんかんの焦点部位同定など、医療機関でも活用されています。
 小動物用脳磁計はヒト用脳磁計で培われた要素技術やノウハウを生かして開発されたものです。マウスの脳の大きさは体積比にしてヒトの脳の1000分の1程度の大きさしかないため、10ミリ角のシリコンチップに9つのSQUIDを作り込んだ新たなセンサを開発し、磁場計測の空間分解能を向上させました。また、システム全体をデスクトップサイズにコンパクト化し、電気生理の実験室への導入を可能にしました。
 このような動物実験用の生体磁場計測装置はこれまでになく、創薬の安全試験や、再生医療などへも応用範囲がひろがっています。

 
ヒト用全頭型脳磁計

ヒト用全頭型脳磁計(横河電機提供)

 

小動物用脳磁計システム

小動物用脳磁計システム

 

UCL聴覚研究所での実験
UCL聴覚研究所での、小動物用脳磁計測実験



SQUID(超伝導量子干渉素子)
 超伝導を応用した微小な磁場を感知することのできる素子。半導体デバイス技術を応用したニオブの薄膜技術によってシリコン基板上に作製されたSQUIDチップに、ニオブの細線で作製した検出コイルを接続し、磁気センサを構成します。この磁気センサは液体ヘリウムの極低温(−269℃)中で超伝導状態に保たれ、地磁気の100億分の1程度の小さな磁場を検出することができます。


ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン
 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)は、1826年に設立されたロンドン大学群に所属するイギリスの大学です。ロンドン大学群の中では最も古く、かつ最も大きなカレッジで、伊藤博文や夏目漱石も留学生としてここで学ぶなど、日本とも古くからつながりがありました。現在の学生数は約22,000人で、140カ国を越えるさまざまな国籍の学生がいます。また、多数のノーベル賞受賞者を輩出しており、2008年の英タイムズ誌の世界大学ランキングでは、米国・マサチューセッツ工科大学を抜いて第7位にランクされています。

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