- 虎ノ門大学院ブログ
- 2019年08月29日
【授業レポート】IPランドスケープ要論(杉光一成/小林誠/野崎篤志)
知財データを経営戦略・事業戦略策定に活用する注目の手法!
■ 欧米の先進企業の知財担当者の最も重要な仕事 |
欧米の先進企業において、ここ数年で急速かつ頻繁に使用され始めた新しい用語「IPランドスケープ」。知財データを活用した最新の経営戦略・事業戦略の支援手法であり、新たなマーケティング・リサーチの手法ともいえます。日本国内でもナブテスコや富士フィルム等の企業において実施されています。
従来の特許調査と決定的に違うのは、その分析結果を経営陣に提案すること。事業環境分析が、実は定性的な情報だけで行われているケースは意外に多いものです。そこに知財データという客観的かつ定量的なデータを提示し、事業戦略を方向づける有力な材料や根拠を提供します。
日本では、2~3年前までこの言葉はほとんど知られていませんでしたが、2017年4月に公開された経済産業省「知財人材スキル標準ver2.0」の中で用いられ、日本経済新聞でも大々的に報じられました。今後は相当のスピードで普及していくであろうと予想されます。このような状況を受けて、KIT虎ノ門大学院では、2019年度1学期から新たに「IPランドスケープ要論」を開講することになりました。
■ 基礎的な理論から応用・実践事例まで |
本科目では、IPランドスケープという最新手法について、理論から応用・実践事例までを取り扱います。担当するのは、日本におけるこの領域のトップランナーである豪華教授陣。経済産業省による「知財人材スキル標準ver2.0」策定において委員長を務めた杉光一成教授、㈱テック・コンシリエにおいてIPランドスケープを実際にコンサルティングしている小林誠客員教授、そして世界中の特許調査・分析に関わる知財情報コンサルティング・サービスを提供している㈱イーパテントの野崎篤志准教授の3名です。
「これまで知財部門が行ってきた主な業務は、他社特許に抵触しないためという消極的な調査でした。IPランドスケープは、事業として成功するために行う、より積極的な調査といえます。例えば、ある事業を成功させるため、特許データを踏まえ、シナジー効果を生み出すと考えられるアライアンス候補先企業・M&A候補先企業を分析します」と、杉光教授はその可能性を熱く語ります。
■ データを明確化して、経営層を動かしていく |
旭化成の知財部門トップとして活躍する中村栄氏の特別講義
ちょうど取材当日は、90分×8コマで構成される本科目の最終日というタイミングで、ゲスト講師として、旭化成(株)の知的財産部長である中村栄氏を招いての特別講義が行われました。
これまで学んできた内容が、実際の企業経営や事業戦略策定の現場でどのように実践・活用されているのか。大変リアルな内容で、ここでは詳細をご紹介できないのですが、「理念・理想ではなく、具体的な実践としてどう経営層・幹部層を動かしていくか」「その際のポイントは何なのか」。現場で使用された貴重な資料の一部を共有頂きながらお話し頂きました。
中村氏が特に強調されていたのが、分析手法を導入することが目的になってしまうケースの危うさ。「経営層・幹部層が何となく感じていることをデータで明確化・見える化し、レポートにしてぶつけることで、経営層に気付きを与え、ビジョンや意見を引き出す。そこまでやらないと定着しない」と、何度もおっしゃっていたことが印象的でした。
■ 多士済々な受講生の顔ぶれ |
最後の締めくくりは、3名の担当教員も加わっての質疑応答・パネルディスカッションです。今回受講生の数は22名。そのうち10名が科目等履修生の方々で、KIT修了生の方も数名もいらっしゃいました。皆さん弁理士をはじめ企業知財部や特許事務所の方、経営コンサルタントなど、現場を担う実務家の方ばかりです。それゆえ質疑や発言のレベルは高く、活発な議論となり大いに盛り上がりました。
この「IPランドスケープ要論」は、4学期(2019年11月~)にも開講されます。1科目から受講できる科目等履修生制度の対象科目となっていますので、ご関心がある方はぜひ受講をご検討ください!