- 虎ノ門大学院ブログ
- 2020年01月11日
【授業レポート】ソーシャルファシリテーション特論(野村恭彦/村上敏也)
クロスセクターでの社会・地域課題解決を目指す
■ 地域・社会の課題を解決するファシリテーションを学ぶ |
KIT虎ノ門大学院では、新事業の創出や異業種の連携など、イノベーションを推進するためのファシリテーションを学べる「イノベーションファシリテーション特論1」と「イノベーションファシリテーション特論2」を以前より開講しており、人気授業の一つとなっています。
そして今回ご紹介するのが、2019年度から新しく開講した「ソーシャルファシリテーション特論」です。企業・行政・NPOのセクターの壁を超えた多様なステークホルダー(利害関係者)が集い、地域・社会の課題解決を目指すためのファシリテーションを学ぶことができます。
2015年に国連で採択された持続可能な開発目標「SDGs」の普及にも後押しされ、社会課題の解決は、いまや行政やNPOだけが取り組むものではありません。企業セクターにとっても、重要な経営トピックの一つとなっています。
そんな時代を反映してか、企業セクターからの参加者が多く、年齢はもちろん業界・職種の異なった多様なバックグラウンドを持つ約30名の受講生を迎えて開講することができました。授業の開講日は金曜の夜19時~22時10分です。皆さんお仕事の疲れもあると思うですが、貪欲に学ぼうとする姿勢は変わらず、本当にパワフルです。
■ ファシリテーションのプロとケースメソッドのプロが担当 |
授業を担当するのは、野村恭彦教授と、村上敏也教授のお二人です。
野村教授は、この領域の草分けであり第一人者。富士ゼロックスで事業変革ビジョンづくりや新規ナレッジサービス事業の立ち上げに携わったのち、2012年に株式会社フューチャーセッションズを設立。「渋谷をつなげる30人」など、企業、行政、NPOを横断する社会イノベーションに取り組んできました。そして2019年10月、「市民協働のイノベーションエコシステム創出」に、よりフォーカスするため、Slow Innovation株式会社を自ら事業分割するかたちで設立されました。
先ほどご紹介した「イノベーションファシリテーション特論1」「イノベーションファシリテーション特論2」の担当教員でもあります。
村上教授は、KIT虎ノ門大学院ではビジネス分析や会計・財務などの講義を担当されていますが、ケースメソッド教授法のプロでもあります。広島県主催「、イノベーション道場(TIES)」や中小機構「中小企業大学校」にてケースメソッドを応用したカリキュラムの開発・実証にも挑戦しています。
村上敏也教授(左)と野村恭彦教授(右)の絶妙な掛け合いのもと進行していく
本科目では、クロスセクターでの革新的な協働の場を生み出すために求められる高度な知識と能力を多面的に獲得するため、ケースメソッド教授法を用います。渋谷や広島、名古屋での具体的なケースに基づき、社会イノベーションを実現するために必要な個人や組織の要件について議論します。
■ 「革新的な協働の場」について学び、対話し、実践する |
全4日間(2コマ連続×4日)の授業の構成は、次のようになっています。「革新的な協働の場」について講義やケース、実践者との対話から学びます。最終的には、受講生自身が経験したビジネスの成功やプロジェクトの失敗をもとにケースメソッドを作成し、授業そのものを設計・実践する流れになっています。
◆1日目:イントロダクション、広島のケースメソッド実習、ケース構想案について
⇒課題:受講生自身による「革新的な協働の場」についてのケース構想案を作成する
◆2日目:各自が作成したケース構想案の共有、漠然としたイメージやアイデアを言葉に変え学びを形にするケースライティング基礎、渋谷のケースメソッド実習
⇒課題:構想案から実際にケースを書くトレーニングを行う(A4用紙3ページ)
◆3日目:ケースメソッド実践:渋谷をつなげる30人、特別ゲストのプレゼン(ナゴヤをつなげる30人・京都をつなげる30人)へのインタビュー、全体共有・討議、授業設計に関するアドバイス(時間配分、ケースメソッドの設問、授業の中での発問)
⇒課題:ケースメソッドの作成(A4用紙15ページ)および授業準備
◆4日目:受講生自身が作成したケースメソッド発表、授業の実践、振り返り・総括
取材日は2日目でしたが、この日は受講生それぞれが「革新的な協働の場」の事例を持ち寄り、「革新的な協働の場とは?」「そこから何を学べるか?」という問いを議論しました。
グループでの議論では、まだあまりお互いのことを知らない人も多く、最初は少し緊張感もありましたが、そこは野村先生・村上先生のファシリテーションにより徐々に場がほぐれ、いつのまにか議論にも熱がこもってきます。
たった数十分の議論で、すべてのグループが、個人が持ち寄った意見と比べてはるかに豊かな結論に到達していたのがとても印象的でした。まさに「革新的な協働の場」の片鱗を垣間見た気がします。
各グループの発表と対話を通じて新たな問いが生まれる
その後は全体での共有。ここでは各グループの発表に対して、二人の先生から鋭い質問やコメントが投げかけられ、議論が深まっていきます。「すっきり」だけでなく、「モヤモヤ」や「問い」もたくさん生まれました。
授業終了後に先生方にお話を聞くと、「良い『モヤモヤ』や『問い』に向き合うことがイノベーションには大切なんだよね」とのこと。なんと!これも授業設計の一部だったのです。この授業で学んだことを職場や地域に持ち帰り、すぐに試してみることで、受講生自らが答えをつかみ取っていくのでしょう。
ぜひ一人でも多くの人にこの場を体感してほしい。そんな思いを強く持った授業でした。