専任教員インタビュー集

加藤 浩一郎
Koichiro KATO
教授/博士(工学)/弁理士
日本企業の「宝の持ち腐れ」をなくそう
育てたいのは、経営がわかる知財人材、知財がわかる経営者
加藤浩一郎

教授転身を決めた「誰かがやらないと日本は成長できない」

日本企業は特許という“宝”を多数保有していながら、それを経営に十分活用できていない「宝の持ち腐れ」状態になっているケースがたくさんあるー。KIT虎ノ門大学院が設立された2004年、上述のような“危機意識”がきっかけとなり、日本IBMの知財部門からここへ来たのが加藤浩一郎教授でした。

当時はまだ「知財を経営に活用する」という意識はあまり一般的ではありませんでしたが、現在その考え方は確実に広まりつつあります。「実際に、ここ数年で企業の知財部の役割も変化しています。昔は特許の出願手続きや管理といった定型的な業務がメインでしたが、いまは自社の成長に向けてどんな特許を取れば良いか、特許をどのように活用すれば良いかなど、経営やビジネスに結びつけた知財戦略を立案して実行する役割を求められるようになりました。さらに、企業価値を上げる要素としても知財が重視されるようになってきています。PBR(※株価純資産倍率)が1倍を超える企業は、それだけ市場や投資家から企業価値を高く見られていると言えますが、このPBRを高めるために重要なのが企業の無形資産であり、知財はその代表格なのです」

経営者の意識も変化しており、「スタートアップを見ても、最近は起業時から知財戦略を念頭に置いていることが多いですね」と加藤教授。しかし、それでもまだこの“宝”を活かしきれていない企業もあり、その状況を変えたいといいます。

「特許をたくさん持ち、知財部のリソースも豊富ながら、まだ改革できていない企業は少なくありません。特に多いのは、技術力があり歴史が長い中・大規模の企業です。イノベーションのジレンマに陥っている面もあるでしょう。企業本来の力を存分に発揮するには、知財を活用することが重要です。だからこそ私は、さまざまな企業の知財事例を研究し、知見を共有化したいと考えました。誰かがこういうことをやらなければ日本企業が成長できない、そんな危機意識が始まりです」

IBMやマイクロソフトを知財で変革したリーダー、そんな人材を育成したい

知財を経営に活用するー。加藤教授がその重要性を強く感じたのは、まさしく日本IBMで知財の“経営効果”を目の当たりにしたときでした。

「1990年代に業績低迷したIBMは、経営再建のために知財の積極活用という戦略に舵を切りました。同社はもともと研究が強く、多数の特許を持っていました。その管理を厳格化して無断使用をなくしたほか、他社の課題に対して、IBMの特許技術を使った解決策を提案。こうした『ライセンス料を得るビジネスの強化』は業績回復に貢献しました」

IBMは伝統的に知財に力を入れてきた企業でしたが、それでも“改革前”はディフェンシブな活動が中心だったとのこと。「実務も法律的な知財の対処がメインでした」と振り返ります。それがこの時期、ビジネスと知財が融合するオフェンシブな動きになっていきました。

「このドラスティックな改革の裏には、経営陣にアイデアを提案したリーダーの存在がありました。この人は、のちにビル・ゲイツに請われてマイクロソフトに移り、リーダーとして知財戦略の立案・実行に取り組み、オープンイノベーション時代に対応できる会社への変革に成功しました。私が育てたいのは、そういったリーダーになり得る人材です。ディフェンシブだった知財を、経営・ビジネスに活用するものに変えていく人。それは必ずしも知財部の人間である必要はありません。経営者でもいいのです。経営がわかる知財人材、知財がわかる経営者を育てたいですね」

知財が法律から経営に広がり「答え」の出し方も変化

知財を経営・ビジネスに活用する上で重要なのは、「どの企業にも当てはまる“解”はないこと」だといいます。

「経営問題は、企業の前提条件やビジネスの内容、あるいは知財活用を担当する人材の特性・スキル等により解が異なります。法律問題は比較的解が似たものに収れんされやすいですが、経営になるとそうはいきません。1つの成功例を真似しても必ずしもうまくいかないのです」

加藤教授が多数の企業事例を研究し、共有する意味もそこにあります。1つの事例ではなく、業界を超えて多様な戦略を見る中で、自社のやり方を構築してほしいと考えているのです。

「IBMの事例も研究に強いという土台があったからこそ取れた戦略であり、ほかの企業が容易に再現できるものではありません。また最近は、企業が特許で囲い込む領域と、逆に解放して外部と共創する領域の両方を作るオープン&クローズ戦略も様々な形で増えています、そういった最新の事例も含め、広く知見を共有していきたいですね」

かつて企業人として知財の実務を担当していた加藤教授も、いまやこの大学院の専攻主任として教育に徹しています。「修了生のアンケートでは平均200万円ほど年収が上がっているという結果も出ました。ここに通った成果が明確に表れているのはうれしいですね」と語ります。「いまは知識を学ぶだけならさまざまな手段がありますが、学んだ知識を研究に活かしてその成果を論文としてアウトプットし、自分の仕事で活用できるレベルにまで育ててこそ、私たち高等教育機関の務めを果たせると考えています」

淡々と語る加藤教授ですが、仕事を離れると違った一面もあるようで、「ゴルフでミスショットをするとカッとすることもありますよ(笑)」と人間味を見せます。しかし、教育者としての顔はつねに冷静。そしてその裏には、知財活用のリーダーを育てたいという確かな熱さがあります。

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