専任教員インタビュー集

石井 大貴
Tomotaka ISHII
准教授/
博士(メディアデザイン学)
会社員×歌手デビュー×博士号
稀有な人生経験に
リーダーシップのヒントがあった
石井大貴

無謀だと笑われた目標でも12、13年でチャンス到来

目標を持つ際は「15カ年計画」で考える。人間力とは「やりたいこと」と「できること」が生む四角形の大きさである。やり抜くための「習慣作り」をするー。これらの考えを次々に伝えるのは、TBSテレビに15年間勤務しながら大学院に通い、博士号を取得した石井大貴准教授です。この大学院では、リーダーシップやメディア&エンタテインメントの講義を担当している他、千葉ロッテマリーンズをはじめとするプロスポーツチームや企業へのコーチングも行っています。

「チームにおいてリーダーシップを発揮するためには、まず自分自身をコントロールし、マネジメントすること(セルフマネジメント)が重要です。社会人になってまで大学院に通う学生の皆さんは、セルフマネジメント力が非常に高い方々だと思います。自身のキャリアをより充実したものに変えたいからこそ、刺激やきっかけが欲しいと考えているのではないでしょうか。私は、そんな皆様の力になりたいと思っています」

冒頭に列挙したのは、そんな石井准教授が口にした言葉。リーダーシップを発揮するために身につける、セルフマネジメント力を高めるためには、まず「目標」を持つことが重要だと話します。そして、目標を持つ際は「15カ年計画」で考えるというのが流儀です。

「5年先を見据えて目標を立てる人はよく見かけますが、本当に大きな目標を成し遂げるためには、もっと長い期間を掛けて取り組むことが重要です。私は実体験から15年の時間軸で考えていて、最初は周りから無理だと言われるような目標でも、12、13年くらいでチャンスが来るものです」

15年という時間軸に行き着いたエピソードは意外なもの。石井准教授は、中学生の時に3つの目標を立てていました。それは、1:大学で教鞭を執る、2:納得のいく書籍を書き上げる、3:歌手でメジャーデビューする、というものです。

「目標の1と2については両親も教育者ですから想像はつくのですが、歌手については滅茶苦茶ですよね(笑)。でも、思い続けて行動すればチャンスが来ます。私は中島みゆきさんのモノマネを中学1年生から練習していて、テープに吹き込んで確認するほど真剣でした。会社員時代に営業をしていた頃、レコード会社の方と行ったカラオケで披露すると褒められ、その人の勧めもあって毎週仕事終わりにボイストレーニングに通ったのです。3年間続けましたね。そのうちにレコード会社の方から『機が熟した』と言われ、メジャーデビューしました」

途方もない計画でも15年続けると芽が出てくる。その考えはこんな実体験から来ているのです。

「やりたいこと」の実現は「できること」の追求から

セルフマネジメントを行う上でキーになる「人間力」について、石井准教授は次のように話します。

「多くの人には、自分が本当に『やりたいこと』と、いま自分に『できること』の2軸が存在します。ただし、いきなり『やりたいこと』に突き進んで、結果を出せる人はかなり珍しい。まずは『できること』を愚直にこなしていくことで地力がつき、『やりたいこと』へと進む環境が整うのです。『できること』・『やりたいこと』をx軸・y軸としたときに、2軸から作られる四角形の大きさを『人間力』と表現できるのではないでしょうか。この土台が大きくなれば、周囲からの信頼も増し、また新たなチャレンジを続けられます」

そして、「15カ年計画」を遂行すること、「人間力」を高める上で最も重要なことは、やり抜くための「習慣作り」だと石井准教授は語ります。

「研究でも仕事でも、続けることが辛くなってはダメで、心地よく続けられる方法を見つけてください。それこそが『習慣作り』です。毎日、歯を磨かない人は滅多にいませんよね。歯磨きのように、やらないと気持ち悪い、やったら気分が良いという方法を見つけるのが良いでしょう。大学院でも、期限内に何が何でも論文を書き上げなければなりません。だからこそ、良い習慣を作り、コツコツと続けてみてください」

エンタメの正解は「グローバル戦略」だけとは限らない

もうひとつの講義領域であるメディア&エンタテイメントにおいても、TBSそして、研究者としての経験をもとに、学生たちに自らの考えを伝えています。

「コンテンツの世界でも、それぞれの目指す先やビジョンを明確にすべきです。それによってものづくりは変わりますから。確かに国内メディア産業は、海外のサービスに脅かされています。しかし、全てがグローバル基準である必要はありません。たとえ人口減少が進んでも、マーケットがある限り、その中でビジネスを成立させるのは一つの戦略です。もちろん、グローバルを旗印に戦う戦略だってあると思います。まずは、どうしてやるのか?なぜやるのか?を明確に、そこに向けてPDCAを回し続けることが重要です」

15カ年計画のように、長期で目指す旗を立てることが大切。そのスタイルは私生活でも一貫しており、「特定の趣味があるというより、目標を立てて、それに向かうこと自体が好きですね。逆に、やると決めたことをやらないと大きなストレスになります」とのこと。今なら「子ども達がリレーの選手になるという目標を立てたので、じゃあ私もサポートしようと。毎日ストップウォッチを持って、2人の子どもと坂道ダッシュをしていますよ」と笑みを見せます。

ユニークなエピソードを織り交ぜ、実体験から生まれた考えを伝える熱い教育者。自身の目標を追いかけながら、学生の将来をしっかりと後押ししていきます。

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