- 虎ノ門大学院ブログ
- 2025年01月07日
【授業レポート】技術標準化と経営戦略特論(江藤学)
グローバルビジネスの成否を左右する標準化活動
■ 標準化をグローバルな競争力の確保につなげるには? |
技術革新が加速し、競争がますます激化するグローバルなビジネス環境において、「標準化」の重要性が高まっています。たとえば、さまざまな企業が同じ規格を採用することで製品の互換性が生まれ、市場が広がる効果があります。
海外のグローバル企業は、どこを標準化すれば自分の企業にとって有利かという戦略をつくり、競争力の向上につなげています。しかし、日本企業において標準化活動は公的活動として捉えられがちで、経営戦略に十分活用されていないことが課題となっています。
今回ご紹介する「技術標準化と経営戦略特論」は、標準化活動を知的財産管理と一体的に考え、戦略的に活用することで、グローバルビジネスの競争力を高めていくためのアプローチについて、豊富な実例とともに学べる授業です。
担当するのは江藤学客員教授。経済産業省をはじめ、国際機関、研究機関、大学等での豊富な経験を持ち、2021年には『標準化ビジネス戦略大全』(日本経済新聞出版)を執筆された、日本におけるこの領域の第一人者です。
■ 豊富な事例とともに標準化の本質や意義を学ぶ |
実際に受講生の皆さまと一緒の環境で授業を見学させていただきましたが、抽象的なルールや制度も、誰もが知っている身近な事例(アイドルグループも出てきます)と紐づけた江藤先生の解説があることで、理解度が高まります。
この「技術標準化と経営戦略特論」は計4日間、90分×2コマ連続の隔週開講で、各回のテーマに基づき標準化が企業戦略に与える影響を多角的・網羅的に学びます。以下にシラバスに基づく概要をお知らせします。特に注目すべきは事例の豊富さです。
1日目:標準化とは何か/製品標準のビジネス
ビジネス視点での標準化の基本的な考え方を理解し、自転車や光ディスク、AKB48など多彩な事例を通じてその意義を探ります。また、DVDやシャンプー容器などの製品標準を題材に、標準化のビジネス効果をサプライチェーンの中で理解します。
2日目:試験方法標準のビジネス活用/知的財産戦略と標準化
光触媒や冷蔵庫、液晶テレビなどの事例をもとに、試験方法の標準化の活用法やリスクを整理します。さらに、知的財産戦略と標準化の関係について、携帯電話やDVDなどを事例に掘り下げます。
3日目:適合性評価・認証システムのビジネス活用/標準化機関の使い分け戦略
ISO-9000や抗菌プラスチックを例に、適合性評価や認証ビジネスを利用したブランド戦略を学びます。さらに、ICカードなどを題材に標準化機関をビジネスに合わせて活用する方法を考察します。
4日目:イノベーションと標準化
総まとめとして、様々な事例を通して標準化のタイミングの重要性や成功・失敗の戦略を総括し、標準化によるイノベーションの実現方法について学びます。また、最終日には受講生によるプレゼン発表を通じ、クラス全体で標準化活動の理解を深めます。
『標準化ビジネス戦略大全』の著者としても知られる江藤先生
■ 標準化の未来を担う人材にとって最適な学びの場 |
前述しましたシラバスを見ての通り、1コマあたりの情報量は圧倒されるほどですが、江藤先生の明快な解説と多彩な事例により、知的刺激に満ちた授業内容となっています。
企業経営にとって重要だが学ぶべきことが多く、事業戦略や知財戦略の担当者が独学で学ぶのは間違いなく骨が折れるテーマです。対象となる製品や素材、技術や業界も多岐にわたるため、社内の専門家や上司に聞いても分からないことも多いはず。
年明け一発目の授業レポートはいかがでしたでしょうか。本科目は、江藤先生が産・学・官という幅広い領域で活躍し、長年の経験を通して培ってきた知見がベースとなっており、体系的かつ実践的な学びを得ることができます。標準化を担える人材を目指す第一歩としても、さらなる成長を目指す方にとっても、社会人の学びの場として最適の環境と言えるでしょう。