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【研究最前線】
氾濫するビッグデータを読み解き、世の中の「法則性」を探り出す! 情報工学科 中野 淳教授

情報工学科 中野 淳教授(データサイエンス/機械学習)はグーグル出身


氾濫するビッグデータを読み解き
世の中の「法則性」を探り出す!

コンピュータが自ら学び
成長する「機械学習」


機械学習やディープラーニング(深層学習)という言葉をご存じだろうか? いずれも今話題の人工知能(AI)を支えるキーワード。コンピュータが自らデータの中からルールや知識 を学習し、処理能力を高めていくのが機械学習、ディープラーニングもその一分野となる。


人型ロボットPepperやiPhone搭載のSiri、掃除機のルンバなど、人工知能を駆使した機器やサービスはどんどん身近になっている。金沢工業大学工学部情報工学科の中野淳教授に機械学習について聞いた。


「私の専門分野は、データサイエンス。ビッグデータと呼ばれるインターネット上の膨大なデータを解析して、有用な情報を抽出する手法を研究しています。こう言うと複雑そうですが、やっているのは、膨大なデータの中から何らかの法則性を見出し、現実の世界で役立てること。この法則性は従来、人間が見つけるものでしたが、最近はその役割をコンピュータ自体が担うようになりました。これが『機械学習』です。こうした技術は、遺伝子解析やネット上の画像認識、機械翻訳など、すでに幅広い分野で使われています」

機械学習のプログラミングの一例。コンピュータは、圧倒的な処理能力で、人間では気づかないようなデータの相関関係を見出すこともある


日本IBM、グーグルで
働いてきた異色の経歴


中野教授は、日本IBMで働いた後、コンピュータサイエンスの分野で世界的に有名なアメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校に留学。Ph.D.(博士号)を取得すると今度は グーグルに転職し、ネット広告の品質改善に携わってきた。変化の早いIT業界でどのような仕事に手がけてきたのだろうか。


「私がグーグルの日本法人で取り組んでいたのは、ネット広告を収益につなげるためのアルゴリズムの開発です。特定のユーザーが何を検索したか、何をクリックしたかというデータを自動で解析し、どのような広告をリストで表示 すればクリック率が上がるかを考え、アルゴリズムをチューニングしていきます。アルゴリズムとは、言わば最適化した計算方法のこと。先述のビッグデータの法則性は、アルゴリズム開発に役立つのです」


グーグルで検索をしていると気になっているアニメDVDの広告がリスト表示されたりして驚いた経験が誰しもあるだろう。これがまさに機械学習によるアルゴリズムの成果だ。ハードルが高そうなデータサイエンスの世界だが、中野研究室の学生たちは独自のアルゴリズムを続々と開発中だという。使用するのは主にPythonというプログラミング言語。ベースには数学や統計学の知識も求められる。しかし、もっと重要なのはアルゴリズムをビジネスにつなげる柔軟なアイデアだという。


「今年の研究室の学生のひとりは、ガソリンスタンドでのアルバイトの経験を活かして、車種や年式を画像認識し、給油口が左右どちらにあるか判別するアルゴリズムの開発に取り組んでいます。やっていることは難しそうですが、テーマはとっても身近なのです」



コンピュータを使いこなす側に
立ち続けることがますます重要

「人工知能プロジェクト」で
囲碁のプログラムを開発


中野教授は2016年から自らが顧問となり全学の学生が参加できる「人工知能プロジェクト」をスタート。現在、1年生のメンバーらも交えて、囲碁のプログラム開発に挑んでいる。また、大学のある石川県野々市市と共同で、過去の人口動態のデータを元に、2060年までの地域の人口予測なども行っている。最後に中野教授に人工知能やデータサイエンスが可能にする未来について聞いた。


「人工知能が人間の職業を奪うという記事をよく見かけますが、人工知能の進化によって、人間の新たな役割も増えることでしょう。機械学習やディープラーニングの登場により、高度なプログラミングの知識がなくても人工知能を使いこなせる時代が来るかもしれません。だからこそ時代を読み解き、アイデアを磨いて、常にコンピュータを使いこなす側に立ち続けることが重要になると思います」

人工知能プロジェクトの開発画面。囲碁やオセロゲームの好手を人工知能に学習させていく



研究室公開の際に、出題されたアルゴリズムを理解するための問題。中野教授によれば、グーグル社の採用試験でも同様の問題が出されるのだとか


データサイエンスの実験例。銀河のスペクトル分布を二次元座標に変換し、銀河までの距離で色付けした図

*当記事は「研究」で選ぶ理工系大学進学情報誌『F-Lab.(エフラボ) 2017 世界を変える、大学の研究』(発行 allow corporation)より許諾を得て転載したものです。インタビュー内容は取材当時のものです。



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氾濫するビッグデータを読み解き
世の中の「法則性」を探り出す!

コンピュータが自ら学び
成長する「機械学習」


機械学習やディープラーニング(深層学習)という言葉をご存じだろうか? いずれも今話題の人工知能(AI)を支えるキーワード。コンピュータが自らデータの中からルールや知識 を学習し、処理能力を高めていくのが機械学習、ディープラーニングもその一分野となる。


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機械学習のプログラミングの一例。コンピュータは、圧倒的な処理能力で、人間では気づかないようなデータの相関関係を見出すこともある


日本IBM、グーグルで
働いてきた異色の経歴


中野教授は、日本IBMで働いた後、コンピュータサイエンスの分野で世界的に有名なアメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校に留学。Ph.D.(博士号)を取得すると今度は グーグルに転職し、ネット広告の品質改善に携わってきた。変化の早いIT業界でどのような仕事に手がけてきたのだろうか。


「私がグーグルの日本法人で取り組んでいたのは、ネット広告を収益につなげるためのアルゴリズムの開発です。特定のユーザーが何を検索したか、何をクリックしたかというデータを自動で解析し、どのような広告をリストで表示 すればクリック率が上がるかを考え、アルゴリズムをチューニングしていきます。アルゴリズムとは、言わば最適化した計算方法のこと。先述のビッグデータの法則性は、アルゴリズム開発に役立つのです」


グーグルで検索をしていると気になっているアニメDVDの広告がリスト表示されたりして驚いた経験が誰しもあるだろう。これがまさに機械学習によるアルゴリズムの成果だ。ハードルが高そうなデータサイエンスの世界だが、中野研究室の学生たちは独自のアルゴリズムを続々と開発中だという。使用するのは主にPythonというプログラミング言語。ベースには数学や統計学の知識も求められる。しかし、もっと重要なのはアルゴリズムをビジネスにつなげる柔軟なアイデアだという。


「今年の研究室の学生のひとりは、ガソリンスタンドでのアルバイトの経験を活かして、車種や年式を画像認識し、給油口が左右どちらにあるか判別するアルゴリズムの開発に取り組んでいます。やっていることは難しそうですが、テーマはとっても身近なのです」



コンピュータを使いこなす側に
立ち続けることがますます重要

「人工知能プロジェクト」で
囲碁のプログラムを開発


中野教授は2016年から自らが顧問となり全学の学生が参加できる「人工知能プロジェクト」をスタート。現在、1年生のメンバーらも交えて、囲碁のプログラム開発に挑んでいる。また、大学のある石川県野々市市と共同で、過去の人口動態のデータを元に、2060年までの地域の人口予測なども行っている。最後に中野教授に人工知能やデータサイエンスが可能にする未来について聞いた。


「人工知能が人間の職業を奪うという記事をよく見かけますが、人工知能の進化によって、人間の新たな役割も増えることでしょう。機械学習やディープラーニングの登場により、高度なプログラミングの知識がなくても人工知能を使いこなせる時代が来るかもしれません。だからこそ時代を読み解き、アイデアを磨いて、常にコンピュータを使いこなす側に立ち続けることが重要になると思います」

人工知能プロジェクトの開発画面。囲碁やオセロゲームの好手を人工知能に学習させていく



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データサイエンスの実験例。銀河のスペクトル分布を二次元座標に変換し、銀河までの距離で色付けした図

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