ニュース
NEWS
【動画あり】
[非合理性・偶然性・身体性を手がかりに、効率性が支配する現代社会へ新たな視点を提示]
メディア情報学科・村山研究室による研究成果発表展「視定点」が、金沢21世紀美術館 市民ギャラリーで開催されました
金沢工業大学 情報フロンティア学部メディア情報学科 村山祐子研究室は、村山祐子教授と大学院修士課程2年の林柊佑さんによる研究成果発表展「視定点」を、2026年10月27日(火)から11月1日(日)まで、金沢21世紀美術館 市民ギャラリーB2で開催しました。
本展は、「拡張・表現を創出する新たな試みの場」として企画されたもので、現代社会において当然視されている合理性や効率性をあらためて問い直し、「非合理性」「偶然性」「身体性」「遊び」といった要素に着目しながら、世界の見方を揺さぶる多様な作品を展示しました。
会場入口の展示メッセージでは、「私たちは世界を計算し、可視化し、分類し、予測しながら暮らしている」とし、効率性や正しさが重視される社会の中で、あえて非合理なものに身を委ねることで、効率や正しさだけでは到達できない新たな視点に出会える可能性を提示しました。来場者は作品を前に立ち止まり、眺め、迷い、遊びながら、それぞれの価値観や世界認識を見つめ直す機会となりました。

偶然性と生成の関係を探る研究作品
林柊佑さんは、「Generative Artの偶然性」と題した研究作品を展示しました。ジャカード織機による製織とアルゴリズムを組み合わせ、生地の状態をセンサで読み取り、その結果をもとに生成規則そのものを再構成する仕組みを構築しました。製織の結果が次の生成プロセスに影響を与える再帰的な循環によって、偶然が創造性を生み出す過程を表現しています。
本研究では、偶然性を既存の秩序や連続性を断ち切る「破壊」と、新たな関係や可能性を生み出す「生成」の両面から捉えています。アルゴリズムと物質との予期せぬ出会いによって生じる偶然が、新たな創造の契機となる可能性を探究しました。

[ムービー]
展示会場に持ち込まれた本物のジャカード織機
[ムービー]
手前に設置されたセンサが織りの状態を読み取り、コンピュータが自動で異なるパターンを生成。偶然が創造性を生み出す過程を表現
[ムービー]
コンピュータが自動で異なるパターンを生成していく様子
[ムービー]
Generative Artとは、コンピュータのプログラムや数学的アルゴリズム、自律的なシステムを利用して半自動的・偶発的に生成される芸術作品である

[ムービー]
ジャカード織機は、タテ糸を自由自在に動かしヨコ糸を織り込むことによって、自在な柄を織ることができる。ジャカード織機の綜絖にタテ糸を一本ずつ通す作業(村山教授と林さんで実施)を経て、実装に至った





コンピュータを「もの」として見つめ直す試み
同じく林柊佑さんによる作品「Relations #2」では、電源を切ったコンピュータの中身を展示し、普段は意識されることのないコンピュータの物質性に注目しました。便利な機能を支える道具としてではなく、一つの「もの」としてコンピュータと向き合うことで、人ともの、人工と自然の境界が揺らぐ現代社会における新たな関係性を問いかけています。

遊びや偶然から生まれる創造性を表現
村山祐子教員は、「ホンキノアソビ(どろだんご)」や「いろんな大丈夫がある」、「めいろくらべ」などの作品を出展しました。
「ホンキノアソビ(どろだんご)」では、遊びを徹底的に追究することが創造性や専門性につながるというメッセージを示し、効率性とは異なる価値観の重要性を表現しました。

また「めいろくらべ」では、ロボット、アリ、粘菌(モジホコリ)が同じ形状の迷路を進む様子を比較展示し、それぞれが異なる経路や振る舞いを見せることで、多様な知性や判断の在り方を可視化しました。

[ムービー]
ロボット迷路
[ムービー]
粘菌迷路
さらに、「いろんな大丈夫がある」「いろんな草があるwww」では、若者をはじめ近代の我々が頻繁に使用する「あ、大丈夫です」という言葉や、ネットスラングから始まった「草」という表現の裏に隠された幾層にもなる心の中の本当の想いを可視化した作品を展示しました。

林柊佑さんの「ダダイストの詩の作り方」では、プログラムにより、ニュース記事を文節ごとに分解し、無作為に並び替えて詩を生成する手法を紹介し、偶然性から生まれる表現の可能性を来場者に体験的に提示しました。


技術と芸術の境界を越えて
本展では、「技術」と「芸術」を分けて考えるのではなく、両者を行き来しながら既存の価値観や枠組みから逸脱する試みが紹介されました。合理性や効率性が重視される現代において、偶然性や身体性、遊びといった要素を積極的に取り入れることで、これまで見過ごされてきた視点や関係性を発見する試みとして、多くの来場者の関心を集めました。
本展の開催にあたっては、株式会社吉田機械の協力のもと実施されました
(関連ページ)
