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【大学間連携レポート】
金沢工業大学・金城大学 大学間連携フォーラム
異なる専門との出会いが新たな発想を生む
~異分野連携教育で広がる学生たちの視野と可能性~
2026年10月24日(土)、金沢工業大学扇が丘キャンパス8号館101教室において、金沢工業大学と金城大学による大学間連携フォーラム「異分野共創が拓く大学教育の未来」が開催されました。本フォーラムには両大学から教職員や学生らが約80名参加し、両大学が医療・福祉と工学という異なる専門分野を融合した教育の実践内容の共有と、今後の連携の可能性についてディスカッションをおこないました。

両大学は2018年に包括的な連携協定を締結して以来、教育・研究分野における交流を継続してきました。近年、社会課題が複雑化する中で、単一の専門分野のみで課題を解決することは難しくなっており、異なる専門分野の知見を結び付け、新たな価値を創出できる人材の育成が求められています。こうした背景のもと、今年度は新たな取り組みとして、双方の教員がお互いの大学で授業を行い、単位認定を伴う教育連携を実現しました。今回のフォーラムでは、その成果として実施された授業の内容や学生の学びを共有するとともに、異分野連携教育の意義や今後の可能性について活発な議論が行われました。
開会にあたり、金沢工業大学の大澤敏学長は、両大学による連携の歩みを振り返りながら、「これからの時代に必要なのは現場で得られる生きた情報であり、人と人が直接対話し、異なる価値観や考え方に触れる機会が重要である」と述べました。また、工学系学生と医療系学生が共に学び、相互理解を深めることによって、新たな発想やイノベーションが生まれることへの期待を語りました。
フォーラム前半では、双方の大学で実施された授業の成果発表が行われました。
金沢工業大学では、金城大学医療健康学部の小島聖教授による夏期集中講義「からだのしくみ」(全学科対象・リベラルアーツ系科目・選択・1単位)を開講しました。この授業では、骨格や筋肉、関節の構造と機能について学ぶだけでなく、実際の骨格標本の観察や身体機能の測定など、医療系教育ならではの実践的な学習が取り入れられました。工学系の学生にとって人体の構造や機能を体系的に学ぶ機会は多くありません。そのため、受講した学生たちは新鮮な視点で学習に取り組み、人体が持つ精巧な仕組みに強い関心を示していました。
受講した代表学生の発表では、学生たちが授業を通じて得た医療系知識を自身の工学系専門分野と結び付けながら考察した内容が紹介されました。メディア情報学科の学生は、人の動作や筋肉の働きをモーションキャプチャやVR技術の開発に応用できる可能性について発表しました。人体の自然な動きをより精密に再現することで、次世代のデジタルコンテンツや日常の姿勢を補正する機能があるものづくりや声帯の筋肉の動きを分析した音声学への興味・関心が高まったことが説明されました。また、建築分野の学生は、骨格の構造や関節の動きに着目し、それらを建築設計に応用するアイデアを提案しました。肋骨の構造を参考にした建物の屋根づくりのほか、骨が軽量でありながら高い強度を持つ構造や損傷した部分を修復しながら成長する仕組みを参考にすることで、持続可能で高機能な建築物の設計につなげられる可能性を示しました。学生たちからは、「医学的な知識が工学分野でも活用できることを初めて実感した」「異なる分野を学ぶことで新しい発想が生まれた」といった感想が聞かれました。

一方、金城大学では医療健康学部の学生たちに対し、金沢工業大学情報理工学部ロボティクス学科の鈴木亮一教授、河合宏之教授らによる夏期集中講義「リハビリテーションロボティクス」(医療健康学部・3年・2単位・必修の一部)の授業が実施されました。この授業では、医療現場の課題を工学的な視点から解決するための考え方や、ロボット技術、センシング技術について学び、加えて金沢工業大学の正課授業で実施しているイノベーション創出のためのディスカッション手法を取り入れ、課題解決のアイデアの質を高める方法を体験しました。本フォーラムの代表学生らの発表では、空気圧によって段差や傾斜を再現し、安全に歩行練習を行う「エアカスタマイズマット」や、AIと電気刺激を活用して転倒を未然に防ぐ「ハイブリッド型転倒予防システム」などが発表されました。いずれも、高齢化社会が抱える課題に対し、医療と工学の知識を融合させながら解決策を模索したものでした。発表した学生からは、「リハビリテーションは医療だけでは完結しない」「ロボットやAIを活用することで患者のQOL向上につながる可能性を感じた」といった意見が聞かれました。
続いて行われたパネルディスカッションでは、授業を担当した教員と受講学生が登壇し、異分野連携教育の意義について議論しました。冒頭、本フォーラムを企画した金城大学副学長の木林勉教授は、「予測困難な社会課題が増える現代において、一つの専門分野だけで問題を解決することは難しい」と指摘し、「気づく」「対話する」「組み合わせて形にする」というプロセスの重要性を強調しました。また、工学と医療の双方が互いの専門性を理解し、共通言語を持ちながら協働することが新たな価値創造につながると述べました。
また、学生からも授業を受講したことで視野が大きく広がったという声が相次ぎました。金城大学の学生からは「患者支援の可能性を広げるためには工学技術の理解が欠かせないと感じた」、金沢工業大学の学生からは「技術を開発する際には、その先にいる利用者や患者のことを考える必要があると実感した」といった感想が述べられました。また、異なる専門分野の学生同士が交流することで、自らの専門性を見つめ直す貴重な機会となったと、分野横断的な学びの効果がうかがえました。
閉会挨拶では、金城大学の米島學学長が今回の取り組みを高く評価するとともに、「自分の専門以外の知識や考え方に触れることは視野を広げる大きな機会になる」と述べました。さらに、「今後は看護、福祉、情報、経営など、さらに幅広い分野での協働へ発展する可能性がある。社会課題が複雑化する現代においては、多様な専門分野が連携して課題解決に取り組むことが不可欠である」と、今後のさらなる連携への期待を寄せました。

今回のフォーラムを通して見えてきたのは、異分野連携が単なる知識の交換ではなく、新たな価値創造の出発点であるということです。工学と医療・福祉という異なる専門分野が出会い、対話し、新たな価値を生み出す過程は、まさに「異分野共創」の実践そのものでした。学生たちは専門分野の壁を越えた学びを通して、自らの専門を新たな視点で見つめ直すとともに、社会課題の解決に向けた柔軟な発想の重要性を実感しました。両大学による教育連携は、未来の社会を支える人材育成の新たなモデルとして、今後さらなる発展が期待されます。
【登壇者】
□ 金沢工業大学
・鈴木 亮一 教授(学長補佐・情報理工学部 ロボティクス学科)
・河合 宏之 教授(教務部 副部長・情報理工学部 ロボティクス学科)
・米澤 太陽(メディア情報学部 メディア情報学科 3年)
・講神 さくら(建築学部 建築デザイン学科 1年)
・向井 彩弥香(建築学部 建築デザイン学科 1年)
□ 金城大学
・木林 勉 教授(副学長・医療健康学部 理学療法学科)
・小島 聖 教授(医療健康学部 理学療法学科)
・川上 あいり(医療健康学部 理学療法学科3年)
・中嶋 桃亜(医療健康学部 理学療法学科3年)
・今村 颯晴(医療健康学部 理学療法学科3年)
・東平 沙良(医療健康学部 理学療法学科3年)
