ニュース

NEWS

【大学間授業連携レポート】
金城大学・金沢工業大学が連携して異分野融合型授業。
全学科対象リベラルアーツ系科目「からだのしくみ」を開講。
人体を学び、各自の専門分野へつなげる

2026/10/5 NEW

金沢工業大学では、学生が専門分野の枠を超えて学び、多様な視点を身に付けることを目的として、他大学との連携による教育プログラムを実施しています。

2026年度夏期集中講義に、小島 聖教授(金城大学医療健康学部理学療法学科・大学院総合リハビリテーション学研究科)を講師に迎え、全学科対象のリベラルアーツ系科目・専門教養特別科目「からだのしくみ」を開講しました。授業は8月31日から9月3日までの4日間、全7コマの集中講義として実施され、27名の学生が参加しました。

本授業では、人体の構造を学ぶ「解剖学」、身体の働きを理解する「生理学」、運動や動作を力学的に捉える「運動学」を基礎に、人間の身体を科学的に理解するとともに、その知識をロボット開発や福祉機器、人に優しい環境やものづくりへどのように活かせるかを探究しました。学生たちは医療・健康分野の知見に触れながら、自らの専門分野との接点を見いだす学びに取り組みました。

人体を「システム」として理解し、骨格模型を使って体験的に学習

1日目は、解剖学(構造)・生理学(機能)・運動学(動作)の基礎を学びました。

講義では、人間の身体を工学システムと比較しながら理解する視点が紹介されました。骨や筋肉を機械の構造部材、関節を可動機構、神経系を制御システムとして捉えることで、人体が高度なシステムとして機能していることを学びました。

一方で、人間の身体には自己修復や適応、成長といった機械にはない特徴があり、生体ならではの仕組みについても理解を深めました。

実習では、全身骨格模型を利用して骨格を組み立てる演習を実施しました。学生たちは骨の名称や位置関係を確認しながら全身骨格を完成させ、肩関節や股関節、膝関節などの構造や動きを観察しました。教科書やスライドだけでは把握しにくい人体の立体構造に実際に触れることで、理解を深めることができました。

アンケートでも、「骨を自分で組み立てることで構造をよく理解できた」といった意見が寄せられ、実物を活用した学習の有用性がうかがえました。

筋肉と身体の動きの仕組みを体験的に学ぶ

2日目は、筋肉の構造とはたらきについて学びました。授業では、筋収縮が発生する仕組みに加え、肘関節の動きを例に主動筋と拮抗筋の関係を学習しました。例えば、上腕二頭筋が収縮して肘を曲げる際には、反対の働きをする上腕三頭筋が弛緩する「相反抑制」の考え方を学び、単一の運動でも複数の筋肉の協調によって成り立っていることを理解しました。

また、実習では、骨や筋肉を体表から確認する触診や、筋肉の長さと張力の関係を調べる実験、柔軟性評価、ストレッチングの効果測定などを行いました。また、深部腱反射を観察する実習では、膝蓋腱反射やアキレス腱反射を実際に体験しながら、神経系が筋活動を制御する仕組みについて学びました。

学生たちは自身の身体を教材として利用しながら学ぶことで、専門用語だけでは理解しにくい内容を体験的に理解することができました。

動作分析から見える身体のしくみ

3日目には、「運動と動作のしくみ」をテーマに、人間の身体活動を分析する方法について学びました。

まず、コンピュータやデータを活用した動作解析や三次元動作解析技術について紹介されました。人間の動作をデータ化して分析する技術が、スポーツや医療分野、ロボット開発や製品設計にも活用されていることを学び、人体の知識が幅広い工学分野に応用できることを理解しました。また、建築家のアントニ・ガウディや芸術家のレオナルド・ダ・ヴィンチが人体解剖を通して骨格や筋肉の構造を研究し、その観察結果を芸術や建築設計に活用した事例も紹介され、人体構造の理解が、工学やデザインなど多様な分野の発想につながることを学びました。

人体の運動や動作が工学と密接につながっていることを理解したうえで、学生たちは「なぜ人は転ばずに立てるのか」「なぜ楽に立ち上がれる姿勢とそうでない姿勢があるのか」といった身近な疑問を出発点に、重心や支持基底面、運動連鎖といった概念を学びました。

実習では動画を撮影しながら、日常生活の中で無意識に行っている動作を観察し、身体のどの部位がどの順序で動いているのか、どのような運動連鎖が生じているのか分析を行い、多くの関節や筋肉が連携する仕組みを理解しました。観察結果はスティックピクチャーを用いて可視化することで、動作分析の手法を体験しました。

身体の学びを工学へ繋げる

4日目には、授業を通して学んだ内容を基に、「人体の構造と機能の工学的応用」をテーマとした発表を行いました。学生たちは、介護支援ロボットやリハビリテーション機器、AIによる身体評価、まちづくりや建築設計など、それぞれの専門分野と人体の知識を結び付けたアイデアを発表しました。発表を通じて、医療・健康分野の知識が情報、建築、土木、機械など幅広い分野に応用できることを実感していました。

授業アンケートでは、「普段の授業では学べないことを知ることで視野が広がった」「身体の構造が建築や土木構造物につながることが分かった」「介護ロボットに活用できると感じた」などの意見が寄せられました。また、「異なる視点への理解」「専門性への有用性」に関するアンケート結果は肯定率95%以上となり、高い学習効果が確認されました。

まとめ

本授業は、人体の構造や機能を学ぶだけでなく、異なる専門分野を結び付けながら新たな価値を創造する力を育む機会となりました。学生たちは骨格模型を用いた演習や深部腱反射の体験、動作分析などを通して、人間の身体の精巧な仕組みに触れ、その知識が工学やものづくり、社会課題の解決につながる可能性を学びました。

金沢工業大学では今後も大学間連携による特色ある教育活動を推進し、分野を越えた知識や視点を融合しながら、未来社会の課題解決に挑戦できる人材の育成に取り組んでいきます。

(関連ページ)

金城大学 医療健康学部 理学療法学科 小島 聖教授

【工学×医療の知を融合】
金沢工業大学と金城大学が大学間連携フォーラムを開催。
10月24日(土)10:00~11:40 金沢工業大学扇が丘キャンパス(2026/10/2)

金沢工業大学のリベラルアーツ系科目について(CAMPUS GUIDE2026)