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【研究開発・イノベーション教育の未来を考える上で重要な知見】
音楽大学教員へのインタビュー研究で、心理情報デザイン学科 田中吉史教授が日本認知科学会奨励論文賞を受賞。
金沢工業大学メディア情報学部心理情報デザイン学科の田中 吉史教授が、日本認知科学会の2025年度「奨励論文賞」を受賞しました。受賞対象となった論文は、「芸術家はいかに学び,いかに教えるか? 音楽大学教員へのインタビューに基づく研究」(『認知科学』第32巻第1号掲載)です。

日本認知科学会の奨励論文賞は、同学会が発行する学術誌『認知科学』に掲載された論文の中から、独創性や学術的価値、学際性などの観点に基づく厳正な審査を経て選出される賞です。
このたび受賞した田中教授の論文は、芸術分野にとどまらず、研究開発やデザイン、イノベーション教育など、創造性が求められるさまざまな分野における人材育成のあり方を考える上でも重要な示唆を与えるものとして高く評価されました。
芸術家の「学び」と「教え」の仕組みを解明
田中教授の研究は、芸術家、とりわけ作曲家がどのように創作を学び、また次世代にどのようにその知識や経験を伝えているのかを明らかにすることを目的としたものです。
研究では、現代音楽の分野で活躍しながら音楽大学で後進を指導している作曲家2名に対して詳細なインタビュー調査を実施しました。その分析から、作曲家の成長や創作活動を支える学習資源として、
・楽譜や書籍、録音資料などの「資料」
・教師や師匠などの「指導者」
・同世代の学習仲間である「仲間(ピア)」
・自らの作品が演奏される「実演の機会」
の4つが重要な役割を果たしていることを示しました。
特に研究では、作曲教育は単に技術や知識を教えるものではなく、これらの多様な学習資源を適切に活用できるよう支援する営みであることを明らかにしました。
「正解を教えない」創造性教育の実態
研究で特に注目されたのは、熟達した作曲家が学生を指導する際の教育方針です。
調査対象となった教員たちは、記譜法や楽器法など演奏上必要な技術については具体的に助言する一方で、「このように作曲すべきだ」といった強い指示はほとんど行わないことが分かりました。代わりに、学生自身の発想や創作意図を尊重し、その考えを言葉で説明させながら、自ら答えを見つけられるよう支援していました。
また、多様な音楽作品や芸術作品に触れる機会を提供したり、自身の作品を演奏するコンサートの企画・運営を経験させたりすることで、教室内だけでは学べない実践的な知識や視野の広がりを獲得できるよう工夫していることも明らかになりました。
創造的人材育成への新たな知見
本研究の大きな意義は、創造性の高い人材を育成する仕組みを、実際の教育現場から具体的に解明した点にあります。
研究では、優れた創作者が後進を育てる際、自らの作風や価値観をそのまま受け継がせるのではなく、学生一人ひとりの独自性や創造性を引き出そうとしていることが示されました。田中教授はこの特徴を「積極的な非継承」と捉え、創作教育の重要な特徴として位置付けています。
この成果は、芸術分野にとどまらず、研究開発やデザイン、イノベーション教育など、創造性が求められるさまざまな分野における人材育成のあり方を考える上でも重要な示唆を与えるものとして高く評価されました。
今回の受賞は、芸術活動と教育実践を認知科学の視点から分析し、創造性教育の本質に迫った研究成果が高く評価されたものです。今後も田中教授の研究は、創造的人材育成の理解と発展に大きく貢献することが期待されます。
【受賞論文】
「芸術家はいかに学び,いかに教えるか?音楽大学教員へのインタビューに基づく研究」
田中 吉史(金沢工業大学メディア情報学部心理情報デザイン学科教授)
『認知科学』2025 年 32 巻 1 号 p. 129-151

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