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【賢いロボットから賢い棚へ】
出村研究室の共同研究成果が『Advanced Robotics』に掲載。
人手不足が深刻化する小売業界の課題に挑む

2026/9/10 NEW

金沢工業大学ロボティクス学科の出村公成研究室と三協立山株式会社 タテヤマアドバンス社による共同研究成果が、ロボット工学分野の国際学術誌『Advanced Robotics』に掲載されました。
掲載論文は、「A shelf-cooperative robotic system for automated stocking and disposal in convenience stores(コンビニエンスストアにおける商品陳列・廃棄作業の自動化を実現する棚協調型ロボットシステム)」です※。
※筆頭著者: 瀧川紘平(大学院工学研究科機械工学専攻 博士前期課程2年)

人手不足が深刻化する小売業界の課題に挑む

近年、少子高齢化に伴う人手不足を背景に、コンビニエンスストアをはじめとする小売業界では店舗業務の自動化が強く求められています。なかでも商品の補充(陳列)や消費期限切れ商品の廃棄作業は、多品種の商品を狭い棚空間で頻繁に扱う必要があり、大きな負担となっています。

従来の研究では、ロボット自身の認識能力や把持能力を高めることで自動化を実現しようとする「ロボット中心」のアプローチが主流でした。しかし実際の店舗では、商品の配置や向き、棚のレイアウトが日常的に変化します。そのため、ロボットだけで複雑な状況に対応し続けることは難しく、システムの複雑化や開発コストの増大、運用の不安定化が課題となっていました。

「賢いロボット」だけでなく「賢い棚」をつくる

本研究では、この課題を解決するため、ロボットと陳列棚を一体のシステムとして設計する「棚協調型」の新しい発想を提案しました。

研究チームが開発したシステムは、

・商品の把持・移動を担当する6自由度ロボットアーム

・おにぎりのような定型商品の高速陳列を担当する3自由度直交ロボット

・能動的に動作する電動陳列棚

の3つで構成されています。

最大の特徴は、従来のようにロボットだけで作業するのではなく、棚そのものがロボット作業を支援する点にあります。

開発した電動陳列棚には、
•棚全体の昇降移動機構
•棚板の前後移動機構
•ベルトコンベヤ機構
•可倒式落下防止バー機構
が搭載されています。これらの機構によって、商品をロボットが取り扱いやすい位置まで自動的に移動させ、ロボットの認識や動作計画の負担を大幅に減らし、作業の高速化を狙っています。

商品を「まとめて受け渡し」する独自技術

研究の中核となる技術が、「棚一体型バッチ受け渡し機構」です。

従来のロボットシステムでは、棚上の商品を1個ずつ把持して移動する必要がありました。しかし本研究では、棚側コンベヤとロボット側コンベヤを可倒式落下防止バー機構によりシームレスにつなぐことで、複数の商品をまとめて受け渡しできる仕組みを構築しました。

これにより、
•商品を1個ずつ掴む回数を削減
•作業時間を短縮
•認識や動作計画を簡素化
•長期運用時の安定性を向上
することに成功しています。

さらに、おにぎり陳列専用ロボットには9個のおにぎりを同時に把持できる独自の「9-MPGA(Nine-Module Parallel Gripper Array)」を搭載し、高速な一括陳列を実現しました。

実験で高い作業性能を確認

研究チームは、World Robot Summit 2025のコンビニエンスストアチャレンジを想定した条件で評価実験を行いました。
54個のおにぎりを決められたレイアウトに陳列する実験では、平均作業時間は3分41秒となり、設計目標であった「10分以内」を大幅に上回る性能を実証しました。また、すべてのおにぎりを正しく陳列する満点(54点)を達成した試行も確認され、提案手法の有効性が示されました。

さらに、棚の搬送能力を検証する実験では、実運用で想定する約6kgを大きく上回る約25kgの搬送に成功し、システムの十分な耐荷重性も確認されています。

小売ロボットの新たな方向性を示す研究成果

本研究の意義は、これまで主流だった「ロボットの高度化」だけに依存するのではなく、「環境側をロボットに協力させる」という新たな設計思想を具体的なシステムとして実証した点にあります。

棚が能動的に動作することで、ロボットに求められる複雑な認識や動作計画を大幅に削減できるため、高速かつ安定したより実用的な店舗自動化システムの実現が期待されます。今後は陳列作業と廃棄作業をさらに自律化し、人手をほとんど必要としない次世代型コンビニエンスストアシステムの実現を目指します。

論文情報

論文タイトル
A shelf-cooperative robotic system for automated stocking and disposal in convenience stores

掲載誌
『Advanced Robotics』

オンライン公開日
2026年9月7日

DOI
https://doi.org/10.1080/01691864.2026.2726676

著者

・瀧川紘平(金沢工業大学大学院機械工学専攻 博士前期課程2年)

・厚地秀忠(金沢工業大学ロボティクス学科2026年3月卒業)

・田中航平(金沢工業大学ロボティクス学科2026年3月卒業)

・島田拓弥(金沢工業大学ロボティクス学科2026年3月卒業)

・塚越倭(金沢工業大学ロボティクス学科2026年3月卒業)

・林蒼生(金沢工業大学ロボティクス学科2026年3月卒業)

・坂崎大氣(金沢工業大学大学院機械工学専攻 博士前期課程2年)

・出村賢聖(D.K.T.)

・北出綾 (三協立山株式会社 タテヤマアドバンス社)

・不動祐乃 (三協立山株式会社 タテヤマアドバンス社)

・長澤信宏(三協立山株式会社 タテヤマアドバンス社)

・出村公成(金沢工業大学 情報理工学部 ロボティクス学科教授)

本研究は、金沢工業大学と三協立山株式会社 タテヤマアドバンス社との共同研究契約に基づいて実施されました。

(関連ページ)

三協立山株式会社 タテヤマアドバンス社

金沢工業大学研究室ガイド 情報理工学部 ロボティクス学科 出村公成 研究室

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