ニュース
NEWS
【AI Tinkery創設者・スタンフォード大学のKarin Forssell博士が来日】
学生によるAI活用教材の成果を報告し、今後の連携強化を確認
AI Tinkery創設者であるスタンフォード大学のKarin Forssell博士が2026年3月、来日し、金沢工業大学で進めてきた「AI×推し×学習教材」の教育実践の成果報告と意見交換が行われました。

きっかけ
金沢工業大学Beyond SDGs推進センター(センター所長 平本督太郎 教授、旧:SDGs推進センター)は2025年夏にスタンフォード大学を訪問し、Forssell博士とのAI Tinkeryに関する打ち合わせや、Forssell博士がDirectorを務めるLDT(Learning, Design, and Technology) Master’s Programの成果発表会(ポスターセッション形式)への参加を通じて、スタンフォード大学の学生による実践的な取り組みや活動内容についての説明を受けました。また、それらの学びを金沢工業大学でどのように展開できるかについて意見交換を行いました。
その後、金沢工業大学では「AI×推し×学習教材」をテーマに、学生主体の教材開発に取り組んできました。この取り組みは、情報デザイン学部平本教授、狩野剛准教授、池田梨花講師の3名による合同研究室「THINK」に所属する学生たちを中心に進められてきたものです。
THINKでは、現在生成AIを活用しながら学習者の理解度やつまずきに応じた「個別最適化された補助教材」の開発を探究するプロジェクトを推進しています。2025年度は17名の学生が5つのチームに分かれ、国語・数学・英語を対象に、小説、ゲーム、音楽などの形式を用いた副教材を構想・開発しました。活動では、GeminiやNotebookLMなどを活用し、アイデア発散や事前調査、教材生成、プロトタイピングを進めるとともに、「推しのためなら頑張れる」という学習意欲の喚起を意識し、学習者一人ひとりの「推し」を教材設計に組み込んでいきました。また、「推し」を教材に組み込む際に気を付けるべき知的財産権等の観点から見直しも行い、法律に抵触しないようにするための工夫についても試行錯誤を繰り返しました。さらに、AIツールの探索、テーマ設定、個人プロトタイプ制作、動機づけ理論に関する査読論文の調査、複数回の制作とデモチェックを経て、最終発表へとつなげました。
Forssell博士に学生が教材をデモンストレーション
Forssell博士の今回の来日にあわせて、学生たちはこれまでの成果を発表し、生成AIを活用して開発した教材のデモンストレーションを行いました。 具体的には、以下のような教材が紹介されました。
英検準1級対策を想定した「ライティング」学習用ゲーム教材
学習者が「推し」のアーティストのプロデューサーとなり、英語ライティング問題に取り組むことで楽曲制作を進めていくゲーム型教材です。問題を解くことで歌詞が洗練されていく設定とし、路上ライブから5大ドームツアーの成功を目指すストーリーを通して、学習への意欲と継続的な取り組みを促す内容となっています。
全統模試高2対策を想定した「英語・リスニング」学習用音楽教材
英語のプロソディ(音の強弱、ピッチ、長さ、リズム、間)の習得を目的とした教材です。最終的に学習者が「推し」のアーティストの曲調をもとに、対象範囲の英語表現を含んだ楽曲を生成し、実際に歌えるように練習することで、英語の音声的特徴を体感的に学べる構成となっています。この教材は複数のステップを踏んで学びを深めていくことが特徴となっており、現在開発済みの最初のステップは自分が聞いて励みになる「推し」のセリフを題材として、英語のプロソディ習得を目指す内容となっています。
Forssell博士による評価・意見交換
これらの発表に対し、Forssell博士からは、単なるAIツール活用にとどまらず、新しい学習文化を創造しようとする取り組みであり、「Tinkery Networkのメンバーにも共有したい素晴らしい事例」であるとの高い評価が寄せられました。一方で、「推し」が学習者に与える影響が大きいからこそ、学習を前向きに継続するためのグロースマインドを適切に育めるよう、生成AIとの対話の方向性をコントロールする仕掛けが必要であるとの提案もありました。
当日は学生に対しても、「AIを活用した取り組みの中で、どのような点に学びを感じたか」「AIを使えば多様な答えが得られるからこそ、逆に学びにくくなることは何か」といった問いが投げかけられ、活発な意見交換が行われました。
今回の来日を通じて、本学はForssell博士への成果報告を行うとともに、今後のさらなる連携強化について確認することができました。本学は、本取り組みを通じて、スタンフォード大学との連携をさらに深化させるとともに、AIを活用した新たな学習の在り方の創出に取り組んでいきます。
スタンフォード大学「AI Tinkery」とは
Forssell博士がスタンフォードで運営する、教育者のための「生成AIをいじくり回す(Tinkering)」協働スペース。「禁止する」か「全部任せる」かの二択ではなく、自ら触って・考えて・より良い使い方を探すことを掲げ、生成AIを批判的に試せる場をデザインしている。本プロジェクトはこのコンセプトに着想を得ています。
