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【高大連携レポート】
石川県立寺井高校 × データサイエンス特別講座
―身近なデータによる“発見”と“成長”の2日間 ―

2026/3/18

2026年2月12日および2月26日の2日間にわたり、石川県立寺井高校の普通科1年生15名の生徒を対象に「データサイエンス特別講座」を実施しました。本取り組みは、DXハイスクールを軸とした高大連携の一環であり、将来どの分野を志す生徒にとっても不可欠となる“データを根拠として考える力”を育むことを狙いとして行われました。講師は、 金沢工業大学 基礎教育部 数理・データサイエンス・AI教育課程の渡辺秀治准教授が務め、体験型の実習から探究的思考のトレーニングまで、多様な構成で講座を展開しました。

1日目(2月12日)
体験を通じて学ぶ「データサイエンス入門」

冒頭、渡辺准教授は、データサイエンスを「大量データを整理し、意味ある情報を取り出す営み」と位置づけ、コンピュータで規則性を抽出する仕組みについて実例を交えて紹介しました。パソコンを使った演習も取り入れ、気象庁の過去データ(2016〜2025年、金沢・七尾・白山河内、気温・降水・降雪、約3万件)を用い、スプレッドシートでのテーブル化、フィルタ、単集計(平均・最大・最小・件数)、列の統計情報、さらにピボット(クロス集計)による年×月×地域の整理方法を体験しました。

後半はデータの可視化の重要性について説明しました。条件付き書式を利用したヒートマップによりデータの傾向を色で把握する方法や、散布図+近似直線による分析方法、バブルチャートの使い方を通して、分析方法だけではなくデータの見せ方の工夫についても学びました。その中で、実際のデータをさまざまな角度から見ること、そして事実とそれを説明するための合理的な説明を考えること、そして、その仮説の検証の大切さが強調されました。データを見ることの大切さの一例として2016年から2025年の金沢の平均気温が挙げられ、ここでは7〜9月平均気温は上昇傾向にある一方で、5月平均気温は年々低下しているという“意外な事実”が示されました。生徒は、一般的な温暖化のイメージと実際の違いを実感し、データ分析への関心を高めていたようです。

講義の最後に、生徒らは4つの班に分けられ、気象庁のデータから「意外な関係を探す分析」という課題が課されました。その際、渡辺准教授より発表のデモンストレーションが行われ、さらに探究的な班活動を行ううえでのポイントが示されました。

2日目(2月26日)
問いを立て、自分の言葉で伝える「データ分析発表会」

2日目は、生徒が気象庁の公開データを用いて分析した成果を班ごとに発表しました。生徒らは、金沢市の月別降水量の変化、月平均気温の年次推移、外れ値の発見、降雪量の年ごとの差異など多岐にわたり、地域の気象データをもとに「意外な特徴」について発表しました。発表資料には折れ線グラフや棒グラフが活用され、データの変化を視覚的に示そうとする工夫が見られました。各班の発表内容は以下の通り。

主な分析テーマ 主な発表内容
1班 金沢市の7〜9月降水量の変動 金沢市の7〜9月の降水量を対象に年次推移を整理し、2016〜2018年は降水量が比較的多かったのに対し、近年は雨が極端に少ない年があることが分かった。
2班 石川県の月平均気温(特に2月) 金沢・白山・七尾の2016〜2025年の月平均気温を比較し、全体的な温暖化傾向にもかかわらず、2月のみ周期的に気温が低下する現象に着目しました。外れ値除去を行っても波形が残るため、寒波の影響という仮説を立て、寒波発生日の整理表と気温グラフを照合したところ、気温低下と寒波のタイミングが一致する事例が多数確認されました。
3班 12〜2月の降雪量比較 金沢の12〜2月の降雪量を年ごとに比較し、大雪の翌年は降雪が少なくなる傾向を指摘した。ただし科学的根拠は確認できていない。視覚的にわかりやすいグラフを作成し、年ごとの差の大きさを印象づけた。
4班 白山市・川北町と周辺の降水量 白山市・白山河内・川北町周辺の降水量を比較し、2022年・2023年8月に多雨が集中していたことを示し、梅雨前線や湿った空気の影響を要因として整理した。一方、少雨年は台風の進路が日本海側に及ばなかった点や地域の晴天傾向を補足し、「雨が多い/少ない」の背後にある複合要因を整理した。さらに、多雨の夏の翌年に台風が増えるのではないかという新たな問いを提示した。

発表後には「ポジティブコメント」と「ネガティブコメント」に分けた相互フィードバックが全員で行われ、生徒間の学び合いが促進されました。良い点としては「比較対象が明確で分かりやすい」「注目点の設定が面白い」などが挙げられ、改善点としては「基準値の根拠が示されていない」「グラフの文字が小さく読みづらい」「説明の速度が速い」など、次の改善に直結する意見が述べられました。相互に素直な意見を伝える姿勢は、探究活動における協働の重要性を理解する機会となりました。

渡辺准教授からは、「コメントは相手を否定するためのものではなく、相手の目的達成をサポートし、より良い表現やより良い分析と考察、そして適切な行動へ繋げるためのものである」との説明がなされ、生徒たちも安心して議論に参加していた。短期間の準備にもかかわらず、いずれの班も明確な問いを設定し、得られたデータから考察を導こうとする姿勢が見られたことは大きな成果であるとし、生徒らの学びの深さを評価しました。

〇正しく読み、正しく比べるためのデータの扱い

生徒らの発表を踏まえ、渡辺准教授からは、「データを使ってよりよい判断をするために、どんな考え方が大切か」について補足されました。

まず、データ分析をするときは、目的があいまいだと、せっかく集めたデータをどう使えば良いか分からなくなるため、最初に「何をどこまで知りたいのか」という目的をはっきりさせることが大事だと説明されました。また、成果を定量的に評価する際に必要となる「評価指標」について、「速さ」と「遅さ(Slowness)」を例に挙げ、評価指標の妥当性や再現性、公平性の説明が行われました。

最後に、探究学習では自分で問いをつくり、小さく試して改善していく“早い失敗と速やかな改善”が重要だとまとめました。その中で、良し悪しの判断の前に、まずは行動と結果という因果関係を考えることの大切さが伝えられました。さらに目的に合わせた発生確率のコントロールと、目的を基準とした適切さという視点の重要性が伝えられました。その視点にもとづき、うまくいかなかったところを振り返り、次はどうすればよいかを考えることで、データを使った学びが深まるというメッセージが伝えられました。

アンケート結果

授業後のアンケート結果は以下の通りです(一部抜粋)。

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金沢工業大学数理工教育研究センター チューター紹介 渡辺秀治准教授