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【工芸作品にインタラクティブな動きを加えるプロジェクションマッピングを制作】
ドイツ短期留学では、他分野の企業を自分の目で見て学ぶ。
メディア情報学科4年の徳山美結さん
「KOGEIデジタルアートミュージアム」展示作品より
自在置物《Protectopus》 プロジェクションマッピング[動画]
メディア情報学科・出原立子研究室の4年生5名が携わった工芸とデジタルアートを融合した展示会、「KOGEIデジタルアートミュージアム」が、2025年10月11日(土)・12日(日)の2日間、金沢市内の石川県政記念しいのき迎賓館で開催されました。
展示で特に注目を集めたのが、金工作家の古田航也氏の自在置物《Protectopus》を題材としたプロジェクションマッピング。金属ならではの精緻な可動構造と曲線美を持つ《Protectopus》(タコ)に映像が重なり、作品が呼吸し、動き出すかのような錯覚を生み出しました。
この演出を手がけたのは、メディア情報学科4年の徳山美結さんでした。

今年、金沢工業大学大学院に進学する徳山美結さんに話をお聴きしました。
Q:「KOGEIデジタルアートミュージアム」でのプロジェクションマッピングが話題になりましたね。
A:人の動きでプロジェクションマッピングの映像が変化するインタラクティブな作品を制作しました。
多くの来場者に観ていただき、頑張った甲斐がありました。
Q:プロジェクションマッピングにはもともと興味があったのですか?
A:私は国際高専(金沢工業大学の併設校)からメディア情報学科3年次に編入したのですが、インラタクティブなプロジェクションマッピングは国際高専在学中から興味を持っていました。国際高専3年生のときは「SDGs達成に役立つプロジェクションマッピング」をテーマに取り組みましたが、「触れる」プロジェクションマッピングまでは実現できなかった。だから5年生の卒業研究では、SDGs教材ゲーム開発をテーマに、人間の動きに反応するプロジェクションマッピングを制作しました。この時に技術的な指導を受けたのが金沢工業大学メディア情報学科の出原立子教授でした。出原教授の研究室は金沢駅の鼓門やしいのき迎賓館でインタラクティブなプロジェクションマッピングをされていました。
Q:だから金沢工業大学ではメディア情報学科を選んだのですね。
A:「金沢工業大学を進学先に選んだ」というよりも、「出原研究室に入りたかったから」です(笑)。
Q:メディア情報学科3年次の後学期に念願の出原研究室に決まりましたね。
A:「作品制作」という授業の中で、出原教授から「金沢市が毎年開催しているKOGEIフェスタ!が来年(2025年)に開催10周年をいう節目を迎えるにあたり、新しいこととして工芸とデジタルを組み合わせた展示を計画しているのだが、やってみないか」とお話がありました。そこで展示作品へのプロジェクションマッピングについて、見え方、見せ方について検討を行い、後学期の半年分かけプロトタイプを作りました。

Q:徳山さんは自在置物《Protectopus》(タコ)に取り組みましたね。
A:2025年4月の段階で金沢市との話が進み、10月に実施することになったので、研究室の4年生5名で制作を進めることになりました。「金属工芸」「加賀友禅」「珠洲焼」の3点を選び、工房を訪問。作品を見せて頂いたり、触ったり、体験させていただいたりして、演出のアイデアを考え、どれにするか決めていきました(珠洲焼はオンラインで実施)。
・金属工芸:金工作家 古田航也氏
・加賀友禅:加賀友禅作家 毎田仁嗣氏・毎田健治氏
・珠洲焼:珠洲焼作家 中島大河氏
私は、インタラクティブなプロジェクションマッピングがしたかったので、どの作品が調和するのか考え、金属工芸を選びました。そして武藤慎哉さん(メディア情報学科4年)との二人で《Protectopus》(タコ)に取り組むことにしました。
Q:《Protectopus》(タコ)を選んだ理由は?
A:金工作家の古田さんは鍛金・彫金と呼ばれる技法を使い銅や真鍮の板を金槌でたたき制作をされています。特に「自在置物」と呼ばれる江戸時代からある技法を使った作品づくりをされていて、「現代の自在置物」をテーマにした可動式の動物オブジェに取り組んでいます。関節があるので、本物の動物の様に動かせる仕組みになっているほか、制作した動物に甲冑を着せることで、劣悪な環境下でも生き抜いて行くための人間に対する「抵抗」と「共生」を表現しています。
特に《Protectopus》は長い「足」に一個一個関節がつけてあるので、見た瞬間「めちゃ存在感がある!」と思いました。変化していく海洋環境から身を守るため、ガスマスクを纏っているが、その一方で、人間と共生していくことを望んでいる。そういうコンセプトも興味深く感じました。

工房を訪れ、《Protectopus》を選んだのは6月末でした。でも7月は約2週間のドイツ短期留学にも行ったので(後述)、制作は夏休み中に行いました。私はUnityを使い、C#でプログラムを書き、武藤さんはBlenderで3Dモデルを制作しました。
Unityを使ったのは、センサを使ったリアルタイム制御をしたかったからです。作家の古田さんも「動く面白さを伝えたい」と希望されたこともありました。
センサは展示台の下に据え(270度検知)、足元を検出。人を検出すると、お魚が出てきたり、タコの足からアブクが出るといったインタラクティブな作品にしました。人間とタコが同じ空間をシェアすることで、共生を体験的に伝えるインタラクションを目標にして制作しました。

Q:そして「KOGEIデジタルアートミュージアム」の開催日が迫ってきました。
A:作品の完成はめちゃギリギリでした(笑)。出原研究室が入る金沢工業大学やつかほリサーチキャンパスの感動デザイン工学研究所1階のスタジオで予備実験を実施したのですが、スタジオでは天井からの投影まではできません。本番と同じ環境でできたのは、「KOGEIデジタルアートミュージアム」が始まる2日前の、しいのき迎賓館の会場ででした。

Q:観覧者の反応はどうでしたか?
A:研究室としいのき迎賓館とでは環境が全然違うので、センサが動くかどうか、イベントが始まるまで不安でした。また観覧者がどういう反応をするのかも心配でした。
でも会期中、小さなお子さんがたくさん来てくれました。展示台が低く、小さい子は作品との距離が近く、迫力を感じたようです。またお魚がでてくることだけに興味があったのではなく、作品も見てくれました。「どうしてタコはガスマスクつけているの?」といった子供らしい質問もあり、私は「海に捨てられたゴミから自分を守るためだけれども、本当はお友達と仲良くしたいんだよ」と説明しました。同行した大人の方も「なるほど」と納得していただいたようです。
Q:作品制作に入る前の7月の約2週間、ドイツに留学していましたね。
A:実は私が3年生だった2024年の後学期、金沢工業大学のドイツの提携校・Hochschule Hamm-Lippstadt(HSHL。英語名 Hamm-Lippstadt University of Applied Sciences)からテレサさんが留学していて、仲良くなりました。

金沢工業大学にはHSHLへの短期留学プログラムとして「HSHLサマースクール」というプログラムがあり(定員2名)、応募することにしました。将来海外で働く可能性を視野に入れ、現地の大学や企業を自分の目で見て学びたいと考えたからです。また、テレサから聴いたドイツの文化を実際に体験してみたいという思いもありました。そしてこれは一番の動機ですが、テレサとドイツで会いたかった(笑)。
このプログラムは、菱機工業株式会社(本社 石川県金沢市)からの奨学金と「こぶし会」という金沢工大学園の同窓会からの支援金があり、ありがたかったです。
Q:約2週間のドイツの滞在はどうでしたか?
A:めちゃ濃い2週間でした。研修では、午前中にHSHLの教授による講義や研究室訪問を行い、午後には半導体、バイオメディカル、再生可能エネルギーといった多分野の企業を訪問しました。講義で訪問先の背景や業界動向を学んだうえで現地を訪れることで、理解を深めることができたと感じています。
特に印象に残っているのは、再生可能エネルギー分野の企業訪問です。建築や都市計画の段階から環境への配慮が組み込まれ、それが日常や働き方の中で自然に実践されている点に、日本との大きな違いを感じました。また、世界各国から集まった学生との交流を通じて、多様な文化や価値観を尊重しながら学ぶことの大切さを実感しました。専門分野にとらわれず視野を広げることができた点も、この研修ならではの学びだと思います。今回の経験は、自分の将来を考える上で大きな刺激となりました。海外や異文化に少しでも興味のある方には、ぜひ挑戦してほしい研修だと感じています。
Q:4月からは金沢工業大学の大学院に進学予定ですね。
A:まず1月は今年度取り組んだインタラクティブ プロジェクションマッピングを卒業研究(プロジェクトデザインIII)としてまとめます。大学院進学後も出原研究室で研究を続けます。また機会があれば、インタラクティブな工芸アートのような作品づくりに携わりたいと思っています。
なお当取り組みに関する研究成果は、金沢工業大学扇が丘キャンパスで開催される「令和7年度金沢工業大学プロジェクトデザインIII公開発表審査会」で学生により発表されます。
メディア情報学科4年 徳山美結さん、武藤慎哉さんによる成果発表
2026年2月13日(金)8号館8・401室で11時48分頃から
【そのほかの発表プログラムは以下のWEBページにてご覧ください】
https://www.kanazawa-it.ac.jp/kyoiku/pd/pd3-presentation.html
(関連ページ)
【動画あり】メディア情報学部メディア情報学科出原研究室が、工芸×デジタルアートによる没入型展示「KOGEIデジタルアートミュージアム」を開催しました(2025/10/20)
