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金沢工業大学、国際高専が東プレ株式会社と産学連携で、農業用水を利用したナノ水力発電の実証実験を養鯉場にて開始
金沢工業大学、国際高等専門学校と、東プレ株式会社(東京都中央区)は、農業用水を利用したナノ水力発電の実証実験を石川県白山市下吉谷町にある養鯉場にて開始しました。
東プレ株式会社は、開発部が中心となり、金沢工業大学からは、ロボティクス学科の鈴木亮一教授、機械工学科の杉本康弘教授、国際高等専門学校からは機械工学科の伊藤恒平教授の3つの研究室が参画しています。学校・学科・分野を越えた共創教育研究の取り組みとして、東プレ株式会社との共同研究を推進しています。
東プレ株式会社では、新規事業として農業用水や工業用水などが保有する余剰圧力(未利用エネルギー)を活用したナノ水力発電システムの開発に取り組んでいます。今回、養鯉場を対象に養殖目的に給水されるパイプラインを利用しナノ水力発電システムの実証実験場を10月23日に設置しました。
この養鯉場には、養殖に必要な水中ポンプ・エアポンプや自動給餌器、また実験データ取りに必要な計測器やデータを送る通信機器、更には連続稼働状況を確認するための遠隔監視装置や照明等があり、設置したナノ水力発電システムにて、これらの機器・装置が消費する電力すべてをまかなうことができます。
このナノ水力発電システムは、東プレ株式会社が強みとする塑性加工と流量制御、インバータ制御技術と、杉本教授が専門とする流体工学を応用して、これまで開発してきたものです。近年普及しつつある小水力発電装置(マイクロ水力発電装置)よりも小型であるため、中山間部の用水路のような、従来の小水力発電装置では設置しにくかった場所でも容易に設置可能です。パイプラインより取水し、装置中央にある直径100mmのデュアルタービンを回転させることで両端につけられた発電機で発電します。設置場所の発電ポテンシャルにより発電量は変化しますが、昨年度の検証では1kW(一般家庭の平均消費電力2世帯分)を超える発電量を確認しています。本システムは、流れる用水の一部を取水するため水量の変化による発電量の変動は少なく、一日中安定した出力で発電することができます。発電した電力はパワーコンデショナ(インバータ)を通じて100Vに変換し、一般電力として使用、余った電力はバッテリに蓄電することができます。
今年度は、このナノ水力発電による連続発電の実証実験を長期間実施し、塵芥除去に関する課題やシステムの効率や耐久性といった課題に対し改良等を加え、最終的には2021年度中の商品化を目指し展開していきます。
金沢工業大学では、再生可能エネルギーによる電気と熱の地産地消や、自然災害に対し強靭な社会を目指すエネルギーマネジメントプロジェクトに取り組んでおり、これまでバイオマスによる電気や熱、他にも太陽光発電、風力発電、熱電発電による電気エネルギー、加えて移動可能なEVの蓄電池や自転車発電による電気エネルギーを活用した実証実験を展開しています。
この発電の1つに、ナノ水力発電も組み込む予定で、今後、エネルギーミックス社会の実現を目指していきたいと考えています。金沢工業大学・国際高等専門学校と東プレ株式会社の双方が当プロジェクトの目的を達成するため、今後は互いの成果を活用しWin―Winの関係を構築しつつ、地方創生や持続可能な社会への貢献を目指して取り組みを続けていきます。
ナノ水力発電システムの開発背景・特長について
再生可能エネルギーの活用が世界的に注目される現在、太陽光や風力だけではなく、発電量としては小さいものの、地方に豊富にある未利用エネルギーを活用できるナノ水力発電も、発電システムの候補として注目されています。また、スマート農業や獣害対策用等の電力としての活用も期待できることや、既存の大規模送電システムから独立した構築が可能であり、大規模停電(いわゆるブラックアウト)の影響を受けずに電力をまかなうことができるという、エネルギー・レジリエンスの特長も持っています。