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新型コロナウイルス対策下での、授業のさまざまな工夫を事例紹介。学生全員が所持するPC、「eシラバス」、各種ITツールなどを活用し、オンライ上でのチームによる課題発見・解決も実現。遠隔授業と対面授業のハイブリッド型で授業を運営

金沢工業大学では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため4月20日から遠隔授業を行ってきました。6月5日からは対面授業を一部再開しており、現在は遠隔授業と対面授業のハイブリッドで授業運営を行っています。

遠隔授業の形式は、オンライン会議システムZoomなどを用いた「リアルタイム型」、配布された資料を閲覧してオンデマンドで受講できる「教材配信型」の2つがあります。授業運営にあたっては、学内の授業プラットフォーム「eシラバス」が中心的な役割を果たしています。これは、アクティブラーニングの実施を容易にし、科目間や教員と学生をつなぐ双方向的な資料とすることをめざしたもので、授業資料のデジタルデータの配信、正課科目と課外活動との連携、レポートの受理、小テスト・アンケートの実施などが行えます。これまでも学生は全員が所持するPCでeシラバスを使用しており、eシラバスが授業のプラットフォームとしての役割を果たしていましたが、遠隔授業に際しても実施に大きな役割を果たしました。また、Zoomをはじめとする外部のツールも積極的に導入し、授業を行っています。

授業の具体的な工夫の例として、リアルタイム型授業の3つの事例を紹介します。

オンラインで、チームによる課題発見・解決型の授業を実施
プロジェクトデザイン入門(ロボティクス学科)

「プロジェクトデザイン」は金沢工業大学のカリキュラムの核となる教育です。1年次前学期に開講される全学科必修の授業「プロジェクトデザイン入門」では、5~6人のグループで課題を発見し、その課題について議論し、最適な解決策を導くプロセスと検証について学びます。

チームでの議論がメインとなるこの授業では、Zoomの「ブレークアウトセッション」(小部屋機能)の機能が使われています。学生5~6名はグループ単位でブレークアウトセッションに入室し、ノート共有をしながら議論の意見をまとめています。教員は授業の進め方を最初に説明するほか、ブレークアウトセッションに入室し、各グループにアドバイスを行うファシリテータの役割を務めます。発表テーマの絞り込み、種々のアイデアの示唆などを通して、TA(ティーチングアシスタント)の大学院生も参画しグループの議論の活性化を図っています。

ロボティクス学科のPD入門では、「新型コロナウイルスに関連した問題解決を考える」の大テーマを中心に、各グループが取り組む課題を設定し、解決策について議論しています。例えば、新しいショッピングシステムの提案、外出自粛のもとで運動不足やストレスを解消するロボットやサービスの提案などの具体的なテーマを学生たちが自ら設定し、解決策についてのディスカッションやプレゼンテーションが行われています。

前学期の授業最終日には、オンライン上で、それぞれのグループが取り組んだ課題と最終的な解決策を発表する予定です。

Slack、ZoomなどのITツール活用に、工夫をプラスしての遠隔授業
データアナリティクス、データベースマネジメント
(経営情報学科 徳永雄一教授)

「データアナリティクス」「データベースマネジメント」は、リアルタイム配信型の授業として行われましたが、さまざまなITツールを活用して授業が行われました。

徳永教授が担当したこれらの授業で中心的に使われたのが、企業での利用も多いチームコミュニケーションツール「Slack」です。学内の授業プラットフォーム「eシラバス」も併用されましたが、リアルタイム性の高い特徴を活かし、学生への資料配布、質問の受け付けなどにSlackを利用しました。授業の配信にはZoomが使用され、その他には資料提示のためのMicrosoft PowerPoint、オンライン・テストのためのGoogleフォーム、ハードウェアとしてホワイトボードの代用となるタブレットPCなどが活用されました。

一般的に遠隔授業には一方通行になりがちになるという課題がありますが、これを解決するような工夫も行われました。一例として、2つの授業の中心は教員による講義でしたが、授業中に学生をランダムに指名して質問するような、緊張感をもって授業に参加してもらう工夫を行ないました。また、各授業の最後には演習問題が出題され、学生はノートに手書きで回答を書き込み、それをスマートフォンで撮影して提出します。ITツールをつかいながらも、「手を動かして学んでもらう」工夫のひとつです。出席については、Zoomの参加ログ、授業中のSlackによる出席確認、演習問題の提出の有無、eシラバスに提出する書類などから判断しています。

これら授業での各種ITツールの活用がスムーズに進んだ背景には、遠隔授業の実施への準備があります。経営情報学科では、遠隔授業が始まるにあたり、1~3年生の授業についてはSlackとZoomを使って授業を行なうことを学科統一の方針として決めました。学科教員、各クラスの修学アドバイザー(クラス担任)は協力して、全学生にメール・電話で連絡を行ない、その結果、全学生のSlackとZoomのインストールは授業第2週目までに完了し、遠隔授業を開始することができました。さらに、ITツールに詳しい教員が、学科内でのツールの使い方の周知を担当し、遠隔授業運営の知見を教員間で共有しました。

データアナリティクスの遠隔授業では各種ツールが使われました

夢考房の協力を得て、遠隔授業で3Dプリンタを活用
プロジェクトデザイン入門(航空システム工学科 橋本和典教授)

航空システム工学科の「プロジェクトデザイン入門」の授業では、例年は材料によるたわみの計測、紙飛行機を使った実験、桁を作成した耐力試験などを行っていましたが、今年度は「新型コロナウイルス感染症対策に役立つものを考えてつくる」というテーマで授業が行われました。

授業の形態としては、Zoomのブレークアウトセッションを使ったディスカッションがメインになりました。6人ずつの11チームに分かれ、それぞれのディスカッションを行い、教員やTA・SAがセッションを回って議論を促しました。ディスカッション結果の発表(プレゼンテーション)もZoomを用いて行われました。発表の運用では、プレゼン後の質問にタイムラグがあり時間のロスが多いという課題があったため、チャットに質問を書き込み、次の授業時間でプレゼンテーションしたチームの学生がその質問に答えるという工夫も行われました。

この授業では、実際に成果物としてものをつくる必要があり、遠隔授業の実施にあたってこれをどう実現するかという課題がありました。この解決のため、授業の教員は夢考房と協力し、学生が設計した3Dデータを夢考房の技師が出力するという方法をとりました。受講する学生は「機械系製図」の授業で3次元CADソフトウェア「Solid Edge」の使い方を学んでおり、当該授業担当教員の指導を受け、このソフトを用いて3Dデータを作成し提出しました。3Dデータを元に夢考房の技師が3Dプリンタで実物として出力し、チームの学生に渡しました。

6月末になって対面授業が始まったため、7月の授業では、チームの学生が対面で集まって議論を行い、アイデアをブラッシュアップしています。最終の発表会はZoomを用いて行われる予定です。


【関連リンク】

オンライン授業プラットフォーム「eシラバス」を活用。4月20日からネット授業(遠隔授業)を実施しています(2020年5月1日)

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