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皮膚に貼るヘルスケア デバイスの実現に一歩前進。人体近接アンテナの研究に大学院生が取り組み、成果。電気電子工学科 野口研究室

歩数や心拍数をスマートフォンやスマートウオッチで測り健康管理に活かすという方が多くなっています。

令和2年2月に金沢工業大学 電気電子工学科 野口啓介研究室(アンテナ工学)の大学院生 坪井聡汰さん(大学院博士前期課程電気電子工学専攻2年)が修士研究として発表した「人体近接アンテナの解析と特性改善に関する研究」が、人体に貼るヘルスケア デバイスの実現に一歩近づくものとして注目を集めました。

身体に装着したバイタルセンサで得られた生体情報を無線通信で送る場合、人体表面に近接してアンテナを設置する必要がありますが、人体組織がアンテナの特性に及ぼす影響は大きく、アンテナ効率などの性能が低くなるという課題があります。

ヘルスケア デバイスのイメージ

坪井さんは本研究で、人体表面上における小形アンテナの性能(利得)向上を目的に、メアンダダイポールアンテナ(以下 MDA)と呼ばれる小型で薄型なアンテナの特性解析に取り組みました。アンテナ特性への人体による影響を軽減するため、人体表面とアンテナとの間に銅板を設置。銅板と人体との距離に着目して、人体に近接した場合のアンテナの性能について調べました。

実験は金沢工業大学 電気・光・エネルギー応用研究センターにある電波無響室で行われました。

電波無響室での実験風景

人体ファントム(人体にみたてた寒天)とアンテナとの間に銅板を設置

銅板上のMDAを人体ファントム(人体にみたてた寒天)上に設置。人体ファントム表面と銅板表面との距離(g)によって、電波のインピーダンス特性と放射特性がどのように変わるのか調べた結果、距離(g)が小さくなるにつれてインビーダンスの変化が大きく、電波の放射特性は密着時(g=0mm)に高利得となる結果が得られました。また密着時での実測値として放射特性は最大利得が4.1dBiとなり、従来の研究よりも約7~21dB高い利得となりました。坪井さんは今回の研究を踏まえ、今後は広帯域化について検討をする必要がある、としています。

放射特性

金沢工業大学 工学部 電気電子工学科では、地球上に何兆個ものセンサが設置される「トリリオンセンサーユニバース」の実現に欠かせないIoT(Internet of Things)関連の研究として、地上デジタル放送やWi-Fiの電波を直流に変換して利用する研究や、電波を効率よく捉える小形アンテナの研究、さらに電波から得られた極低電力で駆動する電子デバイスの研究では世界でもトップクラスの成果をあげています。

生体情報を測るバイタルセンサを駆動する電力は地上デジタル放送やWi-Fiの電波から利用し、測定された生体情報は人体に密着した小形アンテナでクラウドに送信する・・・

そんなデバイスも金沢工業大学では夢ではありません。

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