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e-テキスタイル技術とIoTを用いたスマートシューズで活動量や歩き方の変化を検知し、健康寿命の延伸に活かす。地域高齢者の健康と見守りを支援するモニタリングシステムの研究開発を産学連携で開始します。

金沢工業大学が研究代表となり応募した「地域高齢者の健康と生活空間の見守りを支援するe-テキスタイル技術を用いた歩容センサークラウドシステムの研究開発」が総務省平成30年度「戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)」重点領域型研究開発 ICT重点研究開発分野推進型3年枠に選定されました。研究開発期間は2018年度から2020年度まで。採択通知書の交付式は5月22日(火)11時から北陸総合通信局 局長室(金沢市広坂2-2-60 金沢広坂合同庁舎6F)で行われました。

研究代表者:金沢工業大学修学基礎教育課程 佐藤進教授(専門:健康科学)

参画機関:金沢工業大学情報工学科河並崇研究室、ミテネインターネット株式会社(福井市)、福井県工業技術センター、株式会社金沢エンジニアリングシステムズ(金沢市)

採択通知書の交付式

本取組では、靴の中敷に装着したテキスタイルセンサーを通じて歩行時の特徴を検出するウェアラブルな歩容センサーを開発します。さらに歩容センサーとクラウドシステムを連携させることで高齢者に対する健康支援と、家族や自治体などよる見守り支援機能を有するICTシステムインフラの構築を目指します。

これにより高齢化や過疎化が進む山間部の高齢者の健康寿命の延伸と、外出機会の増加に伴う認知症予防や骨粗鬆症予防が期待されます。

e-テキスタイル技術を用いた歩容センサークラウドシステムの研究開発の詳細

超高齢化社会が進行し、我が国が目指すべき高齢者の健康観が「活動的な85歳」へとシフトする中、転倒予防や要介護・寝たきり予防、ロコモティブシンドローム(運動器の障害による移動機能の低下)予防、老衰や筋力低下などの虚弱予防といった、健康寿命の延伸を目的としたさまざまな施策が実施されています。しかしながら、その多くは転倒予防教室や介護予防教室といった施設通所型のアプローチであるため、自治体が地域の高齢者全体に展開するには人的な面や経済的コストの面で限界があります。

このたび総務省の事業に選定された「e-テキスタイル技術を用いた歩容センサークラウドシステムの研究開発」は、近年進歩してきたICTやIoT向けの無線通信技術である「LPWA」(Low Power Wide Area)等の先端技術を活用して、日常生活の中で自然な形で無理なくデータを収集するモニタリング型・センサー型アプローチにより、健康寿命の延伸を目指すものです。また高齢者の行動範囲の広さや身体活動量の多さは認知機能の低下と密接な関係があり、日光浴時間と運動量は骨密度や骨量の保持とも関係していることから、本取組により高齢者の身体活動量の増加や外出機会の増加を促進できれば、多くの地域住民の認知症予防や骨粗鬆症予防への効果も期待できます。

研究グループでは、織物の圧縮特性を利用して歩行時の圧力を電気信号として検知するテキスタイルセンサーを靴の中敷に装着することで、歩行の特徴から高齢者の老化度や疲労度、歩行年齢などを測定できるウェアラブルな歩容センサーを開発します。さらに歩容センサーとクラウドシステムを連携させることで、高齢化・過疎化が進む山間部の高齢者に対する健康支援と、遠隔地に居住する家族や自治体などよる見守り支援機能を有するICTシステムインフラの構築を目指します。

開発中の歩容センサーのプロトタイプ

開発中の歩容センサーのプロトタイプ

本取組は、金沢工業大学が今年4月に開設した白山麓キャンパスを実証試験の環境として、研究開発を進めます。白山麓キャンパスは、研究活動で生み出された様々な技術シーズを社会実装するための実証実験キャンパスとして開設されたもので、産学連携の技術移転におけるいわゆる「死の谷」を越えるために活用されます。

白山麓キャンパスでは企業との共同開発のための環境設備としてNTTドコモ社のLPWAサービスLoRa基地局を既に設置しており、本取組においてもこの環境が要となります。

高齢者世帯や独居高齢者が増加する一方で、それを支える人的・財政的資源に問題を抱える自治体が急増する中、本取組が地方における新たな健康支援・見守りのモデルになることが期待されています。

金沢工業大学は国連全加盟国が「誰一人取り残さない」を理念に合意した世界を変えるための17の目標である「SDGs」の達成に貢献する社会実装型教育研究を全学的に推進しています。本取組もSDGsの目標の一つである「すべての人に健康と福祉を」に対して寄与できるものと考えています。

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