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建築学科土田研究室が寺町にある築100年の町家を再生
サウンドウォーク、かなざわ風鈴づくりなどのワークショップの実践拠点に

サウンドスケープ(音風景)の研究に取り組む建築学科土田研究室では、犀川W坂近くの寺町、伝統的建造物群保存地区に位置する築100年の元畳屋の町家を改築し、研究室のサテライトとして再生しました。



改装前(築100年の町家)





改装後(てらまちや風心庵)



「てらまちや風心庵」と名付けられたこの施設は、1階には世界初の風鈴ギャラリー付きのカフェやワークショップ等ができるシェアスペースが設けられ、2階はゲストハウスとなっていてます。




土田研究室では今後、「てらまちや風心庵」を、まち歩き(特にサウンドウォーク)や、かなざわ風鈴づくりなどを学生たちで立案・実施する実践拠点として活用していく考えです。







「てらまちやプロジェクト」について

てらまちやプロジェクトは、寺町の町家の活用プロジェクトである。町家の持つ風情を保全し、通りの風景を維持し、まちの中の拠点として活用する。「てらまちや」は、いわば「シェア町家」である。住むこと、憩うこと、愉しむこと、働くことに対して場を提供し、時間を共有する。


金沢のまちなみ
金沢は京都とともに戦災を免れた都市ということで、昭和初期以前の町並みが保持されている。江戸時代の地図を見て街を歩くことすら可能な町である。観光都市としてひがし茶屋街や主計町茶屋街、兼六園などは、昭和、平成とにぎわってきた。特に平成27年(2015年)3月の北陸新幹線の金沢延伸以降、観光客が格段に増えている。

その一方で、旧市街地においては空き家の増加が問題となっていた。まちなみ全体の風景を保全するためには、一つ一つの建物が保全されていることが必要である。空き家を放置すればその分だけまちなみの美しさが損なわれてしまう。寺町は国の重要伝統的建造物群保存地区として平成24年(2012年)12月に指定された。ひがし茶屋街、主計町茶屋街に並ぶ、金沢の大切な資産になっている。電柱の地中化は順次進められており、重伝建指定に伴う建物の助成もあるが、この地域では景観形成が未だ不十分である。

環境庁(現環境省)が平成8年(1996年)に選定した「残したい"日本の音風景100選"」に、「寺町の鐘の音」が指定されている。これは地元の有志「鐘音(しょうおん)愛好会」の活動のたまものである。目で見えるものだけが風景ではなく、音もまたまちの風景である。音風景(サウンドスケープ)は雰囲気を形成する重要な要素となっている。寺院の集積する寺町であるからこそ、鐘の音の響くまちなみはそのアイデンティティになっている。


まちの音風景をはぐくむ、守る、創る
土田研究室はサウンドスケープ研究を一つの柱として、様々な研究や実践活動を行ってきている。その一つに風鈴の研究がある。風鈴は、古代中国に起源を有し、日本には平安時代に伝来したといわれている。アジア地域を中心として各地に存在するが、日本で特異的に発展した文化である。日本人は、虫の音、鳥の声、水音など、音の中に風情を感じ、愛でてきたが、その一つとして風鈴がある。

研究室では平成25年(2013年)に「かなざわ風鈴」を考案し、市内で風鈴づくりワークショップを重ねてきた。平成27年(2015年)より、寺町台寺活協議会(※)の活動とも連携し、寺院に場を借りて市民を対象とした風鈴づくりを行っている。これも、風鈴というものを作ることを目的としているわけではない。風鈴を通じて、音風景を愛でる文化を継承し、新しい金沢の音風景を創出することを意図した活動である。


※地元の住職らが宗派を超えて連携して寺町台寺活協議会を平成26年(2014年)に結成した。寺院と市民の距離を縮めるため、様々な活動を行っている。


てらまちや 風心庵
風心庵は寺町通りに面する小さな町家である。大正時代に建てられたと推定されるこの家屋は傷みが激しいものであったが、ここを研究室のサテライトとして再生させる。また、1階は風鈴ギャラリー兼、カフェや会議などのシェアスペースとし、2階はゲストハウスとして地域外の方の宿泊場所として活用する。これによって、地域内外の方に寺町という場所を体感し、深く味わい親しんでもらうことを目指している。
改装設計は本学OGで、町家の改装経験のある「あとりいえ。」のやまだのりこ氏(1級建築士)によった。環境面の要求性能を示したうえで、それを実現することに尽力いただいた。


ゼミ活動とのかかわり
今回の改装にあたって、学生たちにも建築の現場を体験してもらおうと考えた。やまだ氏に依頼して、内装の塗装ワークショップを1日行った。また、1階に配置する家具の設計と制作を学生自身で行うことで、要求されることを満たすような解決策を考える実践的な機会とした。

今後はこの施設を拠点として、まち歩き(特にサウンドウォーク)、かなざわ風鈴づくりなどを、学生たちで立案・実施する。地域の魅力を再発見し、未来に残すまちを考えるような活動につなげる予定である。



家具の設計と制作を学生自身で行う


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