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【高大連携レポート】
愛知県立木曽川高校 教員向け「生成AI研修」を実施
~知能情報システム学科 佐野准教授が生成AIを「ともに学ぶパートナー」として捉える視点を共有~
令和7(2025)年11月25日(火)、愛知県立木曽川高等学校において、金沢工業大学情報理工学部知能情報システム学科の佐野渉二准教授による「生成AI活用」に関する教員向け研修講座が開催されました。会場となった同校のプレゼンテーションルームには約30名の教職員が参加し、生成AIの基本から教育現場での応用、さらにプロンプト設計の実践演習まで幅広く学びました。

1.生成AIの基本理解から応用までを網羅
講義前半では、生成AIがどのように文章を生成しているのか、その基本的な仕組みについて丁寧な解説がありました。ChatGPTなどに代表される大規模言語モデル(LLM)は、あらかじめ学習した膨大なテキストデータをもとに、もっとも「自然」な語句のつながりを予測して出力を行うものであり、「正解を知っているわけではない」という特性を理解することが重要ですと説明しました。
また、AIが生成する文章には事実と異なる内容や偏り(バイアス)が含まれる可能性があること、さらにハルシネーション(事実誤認)が起こり得るため、回答を鵜呑みにせず注意深く検証する必要があると指摘しました。加えて、入力した情報がAIの学習に利用される可能性があるため、機密情報や個人情報は入力しないよう細心の注意を払うべきですと強調しました。
2.教育現場での活用事例と利点・リスクを具体的に紹介
講義中盤では、学校現場で想定される活用シーンが紹介されました。
・教材作成の効率化:小テストや記述問題のたたき台生成による作問業務の時短
・校務文書の草案作成:通知文、案内、議事録などの初稿づくり
・授業準備支援:導入の例え話、問いかけ、グループワーク構想
・生徒の探究活動支援:テーマ設定や文章化の補助(例:志望理由書作成)
一方で、著作権・個人情報の扱い、情報の正確性確認、依存傾向への懸念など、注意すべきポイントも明確に説明しました。
演習では、各自の端末で実際にChatGPTに指示(プロンプト)を与え、生成される回答の違いを比較することで、「AIに何を、どう伝えるか」が結果に大きく影響することを体験しました。
佐野准教授は、プロンプト設計の原則として以下を挙げました。
・役割や文脈、詳細な条件(例:専門家としての視点)を明確に指定すること
・出力形式(箇条書き、文字数など)を指定すること
これは、人間に質問する場合と同様で、曖昧な問いには曖昧な答えしか得られないことに通じます。探究学習のように正解がないテーマでは、一度の回答で満足せず、補足情報を加えて対話を繰り返すことが重要ですと説明しました。
3.校務支援と生徒の学習支援のAI活用
教育現場における生成AIの具体的な活用分野は、教員の校務支援と生徒の学習支援の二つに大別されます。主な利用方法は以下の通りです。特に、人に対して話すのは恥ずかしいと感じる生徒にとって、機械を相手にした会話練習(英語など)は有効な手段となります。
〇校務支援(業務負担の軽減)
・文書作成全般: 授業計画、研修の企画案、会議の議事録のフォーマット作成など。
・保護者対応: 言葉にしづらいデリケートな内容(成績不振やいじめなど)に関する保護者へのメールや配布物の下書きを作成する。
・教材作成: 練習問題や試験問題の叩き台を作成する。
これにより、教員の負荷を軽減し、生徒と向き合う時間を増やすことができる可能性が示されました。
〇生徒の学習支援
・全教科における発展的な知識の探究、練習問題の作成
・英作文添削や会話相手(特に対人会話が苦手な生徒に有効)
・探究学習でのアイデア出しやブレインストーミングの「壁打ち」相手
4.利用上の倫理と評価の原則
佐野准教授は、「金沢工業大学では、生成AIの利用を基本的に推奨していますが、授業内での利用ルールは各担当教員に委ねられています。自身の科目における原則として、AIの出力をそのままコピー&ペーストして提出されたレポートは「不正」と見なし、零点として扱うこととしています。これは、ウェブ検索と同様に、AIから得た情報を一度自分の中に受け入れ、理解し、自分の言葉で書き直すというプロセスこそが学びであるという考えに基づいています。生成AIは「東大入試の問題を解ける」ほど優秀ですが、「たまに間違いがある」という点で、佐野准教授はAIを「物知りだが、おっちょこちょいな後輩」のような存在として捉えています。利用者は、AIを「楽をするため」ではなく、「自分の知っていることの確認」や「能力向上」のためのツールとして主体的に利用すべきですと」と生成AIの利用時の注意を促しました。
5.まだまだ進化は止まらない
講演の最後には、AIは今後もAGI(汎用人工知能)やロボットと融合したフィジカルAIとして進化し続けることに触れ、教育現場においても新しい技術を導入し続ける必要性が強調されました。教職員は、AIのメリットとデメリットを理解した上で、学校内で明確な利用ルールを定めておくことが推奨されました。
森校長の総評
講演の謝辞として、森也寸司校長は「生成AIはすでに生活に入り込み、無料ツールでも高度な成果物が作れる時代になりました。学校現場でも特別な技術ではなく、身近な道具として捉える必要があります。試験問題だけでなく、小テストや教材づくりのたたき台をAIが作成し、教員はゼロから一を生む負担を減らし、その先の編集・改善で授業観や工夫を加えることが重要です」と述べました。
さらに、プロンプトエンジニアリングの必要性にも触れ、「ツールや指示の違いで結果が変わるため、教員も試行錯誤しながらリテラシーを磨くことが求められます。禁止しても生徒は使う時代であるため、危険性だけを強調して遠ざけるのではなく、正しい使い方を教え、学校全体で共通理解を育てながら上手に付き合うべきです」と続けました。
最後に、参加者への謝意と今後の継続的な実践への期待を示し、「授業改善や校務効率化に生かしつつ、皆が幸せになり『良い意味で手を抜ける』支援ツールとして前向きに活用していきましょう」と結びました。

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