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【産学連携】
三井化学と金沢工業大学材料システム研究所の共同研究成果がSpringer Nature『Mechanics of Time-Dependent Materials』に掲載。
自動車・航空機などの軽量構造材の設計に新たな指針を提供
三井化学株式会社と金沢工業大学材料システム研究所(所長:中田政之教授)との共同研究成果がSpringer Natureのジャーナル『Mechanics of Time-Dependent Materials』に掲載されました。炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)の長期信頼性向上に寄与し、自動車・航空機などの軽量構造材の設計に新たな指針を提供するものとして期待されています。
当研究の概要
炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)は、軽量・高強度・リサイクル性に優れ、次世代モビリティや航空宇宙分野で注目されています。しかし、長期荷重下でのクリープ変形(時間依存の変形)が課題でした。今回の研究では、ポリプロピレン(PP)の結晶化度がクリープ特性に与える影響を解明し、熱履歴による耐久性向上のメカニズムをモデル化しました。
主な成果
・結晶化度の増加で耐久性が向上
アニーリング温度・時間を変化させた実験で、結晶化度が高まるほど融点と剛性が上昇し、クリープ寿命が延びることを確認。
・時間・温度・結晶化度の「重ね合わせ則」を発見
熱履歴による結晶化進行を「シフトファクター」で整理し、時間–温度–結晶化度スーパー・ポジションにより長期挙動を予測可能。
・新しいクリープ予測モデルを提案
従来モデルを拡張し、結晶化度を考慮した5要素モデルを開発。結晶化度40%→60%でクリープ寿命は約2.6倍に延長。
当研究成果の社会的インパクト
・脱炭素社会への貢献
軽量化による燃費改善とCO₂排出削減を実現し、環境負荷を低減。
・資源循環と環境負荷低減
長寿命化で廃棄物削減、リサイクル性向上によりサステナブルな製造を促進。
・安全性の確保
長期使用時の性能劣化を抑制し、交通機関や産業機械の信頼性を向上。
・産業競争力強化
航空宇宙、EV、再生可能エネルギー分野での応用により、日本の製造業の国際競争力を高める。
掲載論文名
Influence of crystallinity change on creep properties due to thermal history for polypropylene
(ポリプロピレンの熱履歴による結晶化度変化がクリープ特性に与える影響)
『Mechanics of Time-Dependent Materials』(Published: 05 November 2025) https://doi.org/10.1007/s11043-025-09836-2
[執筆者]
・伊崎 健晴
三井化学株式会社 高分子・複合材料研究所(現所属:先端材料・ソリューション研究所)
金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター 客員教授
・金村 繁成
三井化学株式会社 生産技術研究所 兼 三井化学分析センター
・中田 政之
金沢工業大学 材料システム研究所 所長
金沢工業大学 工学部 機械工学科 教授
・宮野 靖
金沢工業大学 材料システム研究所 顧問
金沢工業大学 産学連携室 教授
・森澤 洋子
金沢工業大学 材料システム研究所
・鵜澤 潔
金沢工業大学 材料システム研究所
金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター 所長
金沢工業大学 大学院工学研究科 高信頼ものづくり専攻 教授
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