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【nature scientific reportsに掲載】
アミメハギは尾びれを閉じることで平均加速度を最大で30%増加させていることを機械工学的に解明。前進性能の高い推進機構が得られる可能性も。金沢工業大学 機械工学科 福江高志研究室、のとじま水族館、岩手大学の研究チーム

金沢工業大学 工学部 機械工学科 福江高志研究室(専門分野:バイオミメティクス および 熱流体設計学)と、のとじま臨海公園水族館、岩手大学の研究チームは、アミメハギ(フグ目カワハギ科)が直進遊泳するときの力学的特性(Balistiform:背びれや尻びれを使って推進力を得る、魚の泳ぎ方のひとつ)に関する研究を行い、その成果がnature scientific reports(published: 08 May 2025)に掲載されました。

アミメハギ。<br>魚の高性能な遊泳能力は、生物学や生態学、機械工学など様々な分野の研究者を魅了する

研究の概要

アミメハギの行動を観察すると、ホバリング状態から加速して前進しようとする前に、尾びれを閉じる傾向がみられます。研究チームは、アミメハギが尾びれを閉じることで平均加速度※を向上させるという仮説を立て、水槽観察とCFD(Computational Fluid Dynamics/コンピュータを使った流体の流れをシミュレーションする手法)を使って検証に取り組みました。

※平均加速度:アミメハギが泳ぐ速度に到達するまでの平均的な加速度。

その結果、アミメハギの泳ぎについて

・アミメハギは尾びれを閉じることで平均加速度が最大で30%増加。尾びれの開き角が小さくなるにつれて加速性能が向上する。尾びれを閉じると、発生する推力そのものは低下するが、抗力の低下の方が大きいことから、相対的に前進の加速能は高くなる。

・尾びれを開くと、加速能は小さくなるが、その代わりに背びれと尻びれから流出した逆カルマン渦が、尾びれから発生したカルマン渦によって補強される。この結果、推進効率が向上し、輸送コスト(単位距離を移動するのに必要なエネルギー)が削減される。

ことがわかりました。以上の結果は、アミメハギが加速するときに尾びれを閉じるという動きが、流体力学的視点においても有意であり、アミメハギが必要なときに尾びれを閉じ加速能を高めることで、生存率を高めていることを示唆するものです。アミメハギのような小型魚類の生態や行動に対し、機械工学の視点から新しいビジョンを得ることができました。

アミメハギ周囲の渦のかたちをシミュレーションした画像

また、バイオミメティクスの視点からは、魚の遊泳能力は既存の水中ロボットよりも優れており、水中ロボットの加速性能向上に役立つ可能性があります。このたびの研究成果により、複数のひれの動きを連携させることで、前進性能の高い推進機構が得られる可能性も得られ、今後の工学応用も期待されます。

なお、本研究の推進には、東京大学情報基盤センターのWisteria/BDEC-01 スーパーコンピュータシステムを使用しております。記して謝意を表します。

研究の詳細は以下の「Scientific Reports」 をご覧ください。

【掲載論文】

Relationship between caudal fin closing motion and acceleration capability of Rudarius ercodes balistiform locomotion

nature scientific reports published: 08 May 2025

https://doi.org/10.1038/s41598-025-00315-9

著者

・金沢工業大学 大学院工学研究科 機械工学専攻 博士前期課程2年 藤壮寛さん(2025年3月修了)

・岩手大学 理工学部 澄川太皓 助教

・のとじま臨海公園水族館 展示飼育係 技師 平田尚也氏

・のとじま臨海公園水族館 展示飼育係 技師 木森喜大氏

・のとじま臨海公園水族館 展示・海洋動物科長 加藤雅文氏

・金沢工業大学 機械工学科 福江高志 准教授

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メカノエソロジーとバイオメカニクス(魚の泳動作と流れ学)

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