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【金沢工業大学初の快挙】
金沢ゆかりの建築家・和田順顕を取り上げた卒業論文が「日本建築学会優秀卒業論文賞」を受賞
2024年3月に建築学部を卒業した武田拓磨さん(指導教員:勝原 基貴 講師)の卒業論文「建築資料にみる建築家・和田順顕の建築活動に関する研究」が、2024年(第35回)「日本建築学会優秀卒業論文賞」を受賞しました。
授賞式は明治大学駿河台キャンパスにて開催された「2024年度日本建築学会大会(関東)」の期間中に行われ、日本建築学会の竹内徹会長より賞牌と賞状が授与されました。
「日本建築学会優秀卒業論文賞」は、全国の大学から応募のあった当該年度の学部卒業論文を対象に優れた論文(環境、計画、構造系より最大計15件)を表彰するもので、卒業論文を執筆した建築学生にとって、最高賞・最難関の賞として知られています。
このたびの受賞は1990年の同賞設置以降、学部卒業論文、修士論文部門ともに、金沢工業大学初となる快挙です。
武田さんは、金沢出身の建築家・和田順顕に着目し金沢工業大学建築アーカイヴス研究所が所蔵する和田順顕の建築資料を用いて研究を行いました。建築資料を1点、1点、丁寧に整理、分析し、文献資料の網羅的な蒐集やご遺族への聞き込みの実施など、多角的な視点から和田の実像に迫り、彼の建築観とその生涯とを詳細に明らかにした点が、研究方法を含めて高く評価されました。
なお武田さんの研究成果をもとに構成された企画展[金沢ゆかりの建築家「和田順顕」―大正・昭和の金沢を彩った近代建築]が 9月28日(土)から10月3日(木)まで金沢市役所第二本庁舎1階エントランスホールで開催されます。
[受賞理由]
本論文で対象とした和田順顕は、当初は建築家養成教育を行っていなかった東京美術学校の卒業生の中で最初期に建築家として活動を始め、かつ地方都市でも活躍した。本論文は、これまであまり顧みられてこなかった、このような建築家研究の嚆矢と位置付けられる。所属大学が所蔵する膨大な資料を整理・分析し、さらに新規資料の発掘、遺族や関係者への聞き取り調査など、建築史研究として行うべき研究手法を堅実に行った労作である。とりわけ、自邸を対象に図面や文献史料を読み込み、理論と実践の双方から和田の建築観を考察した点は高く評価できる。
[武田拓磨さんのコメント]
この度は日本建築学会の優秀卒業論文賞を受賞することができ、驚きと共に非常に喜ばしい気持ちでいっぱいです。
本研究では大学に寄贈された建築資料をもとに和田の建築観を考察するという試みでした。
論文を一つ仕上げることも初めての経験であり、指導してくださった先生方、サポートしてくださった先輩、ゼミ生の皆さんに改めて感謝申し上げます。
正解のない問題を模索し、やり切ったこの貴重な経験を今後の社会人生活でも活かして頑張りたいと思います。
[指導教員の勝原講師のコメント]
武田さんの努力の賜物、その一言に尽きます。最初はうまく表現できないことの連続でしたが、決して妥協せずに最後まで果敢に取り組み続け、次第に自分のことばで表現できるようになってきた姿には、目を見張るものがありました。日本建築学会優秀卒業論文賞は、歴史意匠分野に限定すれば、全国から毎年1、2本の大変狭き門です。どこからでも日本一の研究ができることを示してくれたと思います。
※和田順顕(わだ・じゅんけん、1889-1977)
金沢市に生まれる。東京美術学校(現東京藝術大学)出身の建築家としては最初期の人物にあたる。丸ビルに事務所を構え、戦後は再び地元金沢にて要職を務め作品を残した。代表作に日本郵船横浜支店、濱口吉右衛門邸(現タイ王国大使公邸)、日本医師会館(現存せず)、加賀市庁舎など。
※金沢工業大学建築アーカイヴス研究所
金沢工業大学の附置研究所である「建築アーカイヴス研究所(2007年設置)」では、日本建築家協会(JIA)、NPO 法人建築文化継承機構、金沢市都市政策局歴史遺産保存部と連携しながら、建築資料の収集とアーカイブ化を行っています。これまでにJIA 所属の建築家 36 名の建築家・団体などと契約を行い、金沢市が保有 ・ 保管する建築等に関する歴史遺産関連資料をデジタル化してきたほか、寄贈された建築資料を活かした研究教育活動を展開しています。
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【写真と設計図で往年を偲ぶ】[金沢ゆかりの建築家「和田順顕」―大正・昭和の金沢を彩った近代建築]を開催。 9月28日(土)~10月3日(木)金沢市役所第二本庁舎1階エントランスホール