記事詳細

【災害に強いコンテナ型ワサビ人工栽培の実証試験】
露地栽培に比べ約3~4倍の生育速度に。大学のシーズを社会実装したコンテナ型水耕栽培方式の中規模ワサビ工場が完成

金沢工業大学では、NX商事株式会社(東京都港区)との共同研究で進めてきたワサビ水耕栽培の実証実験設備を2023年10月に稼働しました。また2024年3月8日(金)には報道関係者にお集まりいただき、コンテナ内部を初公開しました。

電気電子工学科 平間淳司教授による説明の後、報道陣にコンテナ内部を初公開した

一般の葉菜・根菜類に比べて条件が厳しく、採算性が悪いとされてきた植物工場でのワサビの水耕栽培を、IoT(センサー)を使って実現した最適な栽培環境に加え、葉面から誘発する極微弱な生体電位(葉面電位)を常時計測する金沢工業大学独自の技術を新たに加えることで、一般的なワサビ田での露地栽培に比べて約3~4倍の生育速度促進を目指します(金沢工業大学調べ)。

【本実証実験の概要】

コンテナ内部の栽培棚で育っているワサビの様子(苗を定植後、約3ヶ月)

日本固有種であるワサビは、世界的な和食ブームの到来と医療への用途転用等で、昨今注目を浴びています。一方でワサビは育成までに要する時間が長く、栽培地域も限定されるため、生産量が限られています。

植物工場におけるワサビ水耕栽培は従来から試みられてきましたが、生育環境条件が一般の葉菜・根菜類に比べて厳しく、かつ栽培期間も長いため、採算性が大変悪く、一般的に普及が困難とされてきました。

このたび新設され稼働が開始したコンテナ型中規模ワサビ工場は、金沢工業大学工学部電気電子工学科 平間淳司研究室(専門:生体情報工学、電子回路工学)が有すSpeaking Plant Approach(以下SPA)技術によるワサビの水耕栽培の研究開発成果と、コンテナ植物工場製造に知見と実績あるNX商事の特殊コンテナ製造技術を融合させたものです。

金沢工業大学扇ヶ丘キャンパス内に設置した大型(40フィートタイプ)のコンテナ利用による水耕栽培方式の完全閉鎖系ワサビ工場

SPAとは植物体の生体計測(草丈、葉面積、葉緑素、着果数など)を常時行い、植物体の生育状況を判断しつつ、至適栽培環境(光、温度、湿度、CO2、土壌や水耕の水分や養液など)制御によって生育促進を図る技術です。

特に、金沢工業大学の平間研究室では、葉面から誘発する極微弱な生体電位(葉面電位)を生育期間中に常時計測する独自の技術を開発。至適栽培環境に加えて「ワサビの健康診断」を併用することで生育促進効果の向上を試行的に行ってきました。

IoT・ICT活用による完全自動制御型の栽培システムの概要

ワサビ葉に電極を貼付け微弱な電圧(葉面電位)を測定中の様子。<br>この電圧変動から「ワサビの声」を聞き入れ栽培環境制御に生かす試みをする

葉面電位は、人間に例えるならば、「脳波」「心電図」の様に生体から誘発する微弱な生体電位に相当するもので、クラウド(IoT)管理された至適環境制御に加えて、葉面電位変動特性から「ワサビの健康診断」も同時進行させることで、「ワサビからの悲鳴」を検知した際は、生育環境制御パラメータを一時的に変更させて生育状態の経過観察に基づき健康状態に戻すことが可能です。

平間研究室ではこれまでのキャンパス内設置された小規模ワサビ工場で実証実験を行い、地元の在来種のワサビの芋(ワサビ可食部分)では、ワサビ田での露地栽培に比べて約3~4倍の生育速度促進を実現しています

「ワサビの声」をテクノロジーを使って聞きながら、ワサビが「喜ぶ」最適な環境をコンテナ内で実現させることで、季節や生産地にとらわれずに、安定した品質で、ワサビを産業として栽培する技術の確立を目指します。これによって、ワサビのグローバルへの展開を後押しすることに繋げていけると考えています。

※本実証実験では、金沢工業大学とサカ・テクノサイエンス株式会社が共同で先行開発した水耕栽培管理システム(Seeds-N)を基本とするワサビ栽培に特化した栽培システムを開発し、採用しています。

(関連ページ)

金沢工業大学研究室ガイド 電気電子工学科 平間淳司 研究室

金沢工業大学 平間研究室HP

NX商事株式会社 ニュースリリース 
コンテナ型水耕栽培方式の中規模ワサビ工場の実証試験を始動 (2024年03月08日)

KIT金沢工業大学

  • Hi-Service Japan 300
  • JIHEE
  • JUAA
  • SDGs

KIT(ケイアイティ)は金沢工業大学のブランドネームです。

Copyright © Kanazawa Institute of Technology. All Rights Reserved.