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温室効果ガスの大幅な削減に期待。
世界初の硬翼帆式風力推進装置搭載船「松風丸」の模型が商船三井からICCに贈呈

金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター(所長:鵜澤潔教授 以下「ICC」)は文部科学省が選定したCOI(Center of Innovation)拠点として、2016年より、商船三井が進める「Wind Challenger」(硬翼帆式風力推進装置)の大型船建造プロジェクトに参画してきました。

「Wind Challenger」は、最新技術を駆使して風力エネルギーを直接、船舶の推進力に変える装置で、温室効果ガスの大幅な削減が期待できます。

このたび「Wind Challenger」を世界で初めて搭載した石炭輸送船が商船三井と東北電力により建造され、2022年10月7日より運行を開始しました。「松風丸」と命名された本船は9万トン級の石炭専用船で、日本とオーストラリア間の石炭輸送に従事します。

「Wind Challenger」の導入による温室効果ガス削減効果は、従来の同型船と比較して、日本ーオーストラリア航路で約5%、日本~北米西岸航路で約8%が見込まれ、燃料輸送時の温室効果ガスの排出抑制に資するものと考えられています。

このたび商船三井から「松風丸」の1/400模型(長さ約60cm)が贈呈されることになり、2022年12月19日(月)15時30分から、金沢工業大学やつかほリサーチキャンパスの 革新複合材料研究開発センター(ICC)にて贈呈式が行われました。

贈呈式出席者

*川越 美一(商船三井テクノトレード代表取締役社長)

*大内 一之(大内海洋コンサルタント/KIT客員教授)

*山口 誠(商船三井執行役員 技術革新本部長)

*大西 暢之(㈱商船三井 技術部ゼロエミッション技術革新チーム チームリーダー/ICCメンバーシップ会員)

*若林 陽一(㈱商船三井 技術部ゼロエミッション技術革新チーム コーディネーター)

贈呈式の模様。写真左から大内氏、山口氏、ICC鵜澤所長

松風丸の1/400模型。風力エネルギーを推進力に変えることで燃料輸送時の温室効果ガスの排出を抑制

「Wind Challenger」について

2016年の「パリ協定」発効を受け、2018年4月、IMO(国際海事機関)により、2050年に船舶からのGHG(Greenhouse Gas、温室効果ガス)排出総量を2008年比で50%削減することなどが定められました。

「Wind Challenger」は、帆を使い再生可能エネルギーである風力を船の推進力に活用する硬翼帆式風力推進装置です。現在の大型商船は、進力のほぼすべてを化石燃料に頼っていますが、風力を直接推進力としてプラスすることで、スピードを変えることなく、大型貨物船の燃料消費を抑え、GHG排出量を大幅に削減することが可能です。

ICCは文部科学省が選定したCOI(Center of Innovation)拠点のひとつです。10年後の「活気ある持続可能な社会の構築」にむけて、「社会インフラ」「都市・住宅インフラ」「海洋インフラ」における今までにない革新的なアプリケーション(応用)を明確にした上で、その実現に必要な革新材料と革新製造プロセス技術の研究開発をアプリケーション実装研究と並行して進めてきました。

この研究開発の一環として、ICCでは「Wind Challenger」に搭載する大判FRPパネル(FRP:Fiber Reinforced Plastics 繊維強化プラスチック)の設計と耐久性評価、さらに大判FRPパネルを搭載した硬翼帆の耐久性と空力性能を陸上実証機で試験を実施し、空力特性は設計通りの性能を確認するとともに、航海モードごとの推力制御も目的の性能を得ることができました。

第1号船として建造された「松風丸」は実績のある従来の技術製法のパネルが搭載されていますが、ICCの持つ基盤技術である連続成型技術を用いることを今後検討しています。具体的には熱可塑性FRPのコアとスキンを連続成形技術で製作し、溶着加工によって大判のサンドイッチパネルの製造を行います。当連続成形技術の適用により、硬翼帆の製造コストの低減が期待されます。連続成形技術で製造された硬翼帆搭載船は、石炭専用船のほか、各種サイズのばら積み船やタンカー、LNG船での導入が検討されています。

「Wind Challenger」を世界で初めて搭載した石炭輸送船「松風丸」

【関連リンク】

■ 金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター

大型風力推進船を実現するためのFRPパネル帆の適用技術について

■ 商船三井 サービスサイト

WIND CHALLENGER 次世代帆船

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