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学生が鹿島建設株式会社で長期間業務に従事し、3Dプリンティング用のコンクリートの研究や、点検用の光ファイバの検証などに取り組む。「KITコーオプ教育プログラム」の成果報告会を実施

12月21日(水)に、「KITコーオプ教育プログラム」の成果報告会を実施し、プログラムに参加し鹿島建設株式会社(以下、鹿島)の業務に長期間従事した学生2名が、4ヵ月間の成果を発表しました。

「KITコーオプ教育プログラム」とは、企業の第一線で活躍する技術者を「実務家教員」として招聘し、学生が実際の業務に従事しながら企業が持つ最先端の技術について実践的に学び、社会と顧客への貢献と課題解決を習得できる本学独自の産学協同プログラムです。金沢工業大学では、鹿島の他にも、NECグループや西日本電信電話株式会社(NTT西日本)等の企業と連携し、コーオプ教育プログラムを実施。産業界と協力しながらこれからの持続可能な未来の社会を実現するために取り組みを進めています。

金沢工業大学と鹿島が実施するコーオプ教育は、今年度が初めて。同社社員による寄附講座「建設業における分野融合によるDXと脱炭素への取組み」を2022年度前学期の4月20日~6月15日に開講しました。さらに、受講者の中から選抜された学生2名が8月から4か月間、鹿島にて専門的な業務に携わりました。

今回選抜され、鹿島のコーオプ教育に参加したのは、大学院工学研究科環境土木工学専攻博士前期課程1年の浦上和也さん(宮里心一研究室)と、工学部環境土木工学科4年の寺尾静夏さん(田中泰司研究室)の2名。8月22日から12月23日まで鹿島の技術研究所で業務に携わり、浦上さんは土木材料グループ、寺尾さんは先端・メカトロニクスグループに所属しました。

成果報告会はオンラインで開催され、金沢工業大学、鹿島から関係者が出席し実施されました。浦上さん、寺尾さんの成果報告が行われたほか、鹿島の塩谷正樹氏(金沢工業大学 客員教授)と金沢工業大学 大澤敏学長による講評などが行われました。

浦上和也さんの取り組み

浦上和也さんは、鹿島の土木材料グループに所属し、主にセメント系3Dプリンティング(※)に使用するコンクリートの研究等に従事しました。研究では、実験計画書の作成から打ち合わせ、見積もり資料の作成から実験までを一貫して実施。また、3Dプリンティング以外の研究や、現場支援業務として橋梁での施工指導への立会などを行いました。期間は4ヶ月間に渡り、短期間のインターンシップ生とは異なり、1研究員として日々の業務に携わりました。

浦上和也さん

コーオプ教育を通して、浦上さんは、他分野と複合的に考える必要があること、損益について意識をもつことの重要性を実感し、企業のレベルの高さを肌で感じたと感想を述べました。開発した技術で新たなビジネスを開拓するという視点も、大学ではなかなか経験することができないことで、大きな学びになったようです。コーオプ教育の初期は、緊張しがちだったそうですが、発言の重要性や、自分の意図を正確に伝えることの重要性を次第に実感。取り組んだセメント系3Dプリンティングについての専門性などを高めることができ、金沢工業大学に戻ってからは、今回の経験を活かし、自身の勉強や学生同士の情報共有などを行っていきたいと、今後の展望を話しました。

丁寧に実験を進めていく浦上さんの姿勢は、鹿島からも高い評価を受けました。熱心に実験に取り組み、学生ならではの新しい視点からの提案も行い、研究課題でブレイクスルーも生まれた。また、鹿島から、コーオプ教育のメリットとして、浦上さんを教える若い社員の後輩指導の機会になったことが挙げられました。

※:金沢工業大学と鹿島は、2022年4月に設置した「KIT×KAJIMA 3D Printing Lab」を拠点として、3Dプリンティングによる環境配慮型コンクリートを適用した構造物の具現化に向けて研究を進めています。

金沢工業大学と鹿島がセメント系3Dプリンティングに関する共同研究を開始(2022年5月23日)

寺尾静夏さんの取り組み

寺尾静夏さんは、鹿島の先端・メカトロニクスグループに所属し、インフラの点検用の光ファイバの実験をメインに取り組みました。コンクリートのひび割れ評価に関する知見を深め、その他にも、光ファイバ計測の標準化のための資料作成などにも従事しました。

寺尾静夏さん

メインの実験では、田中泰司教授の研究室がこれまでに行ってきた旧・妙高大橋の載荷実験データと構造性能評価をベースに、光ファイバによるひずみの計測を実施し、実際のひび割れ箇所と光ファイバセンサによる結果の比較検討を行いました。寺尾さんは実験データの比較・整理を行うとともに、寺尾さんが独自に考案した方法により、光ファイバによりひび割れ箇所を特定することができることを確認しました。今後、この光ファイバ計測の技術が実用化すれば、人が行けない場所であってもインフラを効率的に点検することができるようになり、インフラ構造物の安全と、点検の効率化につながることが期待されます。

環境土木工学科に所属する寺尾さんは、専門外の光ファイバを扱うのは初めてでしたが、知識を深めることができ、また授業で学習した内容の理解度をさらに高められたと、コーオプ教育に参加しての感想を話しました。毎週の進捗の報告、他部署との打ち合わせにも参加する機会があり、常に自分の考えをもって取り組むことの大切さや、行動に移す重要性に気づき、自身の成長を感じられたそうです。

報告会の中で、「載荷実験データの分析という貴重な業務に短時間で集中的に取り組めたことは意義が大きい」と、鹿島から寺尾さんの取り組みの評価をいただきました。田中研究室の実験データを用いたテーマ設定も奏功し、鹿島、寺尾さん両者にとって今回のコーオプ教育が意義深いものとなりました。仮説を自ら立てて取り組み、異分野の取り組みにも関わらず結果を出すことができ、寺尾さんにとって充実した4ヶ月間となりました。

鹿島とのコーオプ教育の初年度実施を通して

金沢工業大学と鹿島は、内容の協議から寄附講座の実施、学生の派遣・受け入れまで、新たなプログラムをつくりあげ、実施してきました。浦上さんと寺尾さんは、4ヶ月間の業務従事を通して専門分野の学びを深め、また成果を出すことができ、鹿島からも高く評価をいただきました。

金沢工業大学の建学綱領のひとつは「雄大な産学協同」ですが、KITコーオプ教育プログラムは、既存の産学連携の取り組みから一歩踏み込み、新たな人材育成を切り拓くものです。金沢工業大学は、今後も「KITコーオプ教育プログラム」の充実をはかり、鹿島との連携を深め、建設業における人材育成に努めていくとともに、これからのSociety5.0時代に資する実社会をフィールドとした教育研究を推進して参ります。

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