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複合施設のリノベーションでCO2排出量を68%、廃棄物排出量を94%削減。 脱炭素社会実現に向け、金沢工業大学 佐藤考一研究室が産学共同研究を実施

金沢工業大学 建築学科 佐藤考一研究室、リノべる株式会社(以下 リノべる)、国士舘大学 朝吹香菜子研究室は、複合施設「BOIL」を対象に、リノベーションによるCO2排出量削減効果と廃棄物排出量削減効果を評価しました。その結果、既存建物を同規模の新築に建替えた場合と比較し、68%のCO2排出量と94%の廃棄物排出量を削減できることを確認しました。

「BOIL」の設計監理・資材製造・建設段階と比較したCO2排出量削減量は約947tとなります。これは杉の木約10万本が1年間に吸収する量(※1)と同程度で、杉林約108ヘクタール分、明治神宮約1.5個分(※2)に相当します。

今回の研究は、2021年11月30日発表の集合住宅の環境負荷軽減効果測定に続く第2弾となります。本研究により、企業の事務所・ビル等のリノベーションも、脱炭素社会におけるソリューション提案の一つとなり得ることが確認されました。今後も、さまざまなプロジェクトを通してCO2削減量や廃棄物削減量の定量化を行い、リノベーションが環境に与える影響を検証・発表し、リノベーションによる循環型社会及び脱炭素社会の実現に寄与してまいります。

取り組み(共同研究)の背景

2020年の脱炭素(カーボンニュートラル)宣言以降、2030年のCO2排出削減量目標が設定され、各分野で大幅な削減が求められています。また、企業活動においてもESGが重要視され、企業価値の評価に影響を及ぼすようになりました。そして、SDGsは産官民で取り組む世界共通の目標として、人々の消費における意思決定にも影響を与えはじめています。

建物のリノベーションは、新築と比較して投入資材量や施工時の燃料を大幅に削減することができ、CO2排出量の削減に貢献する取組みであり、また、建物の解体により排出される廃棄物も大幅に削減することができます。しかしながら、建物のリノベーションは個別性が高く、これまでに調査された事例も少ないため、効果が定量化・見える化されていないのが現状でした。

こうした状況を踏まえ、佐藤考一研究室とリノベるとは、国士舘大学 朝吹香菜子研究室の研究協力のもと、CO2削減効果と廃棄物削減効果を見える化すべく、産学共同研究に取り組んでいます。

 

対象物件:BOIL 溝の口

1972年に竣工したNTT溝の口ビル(神奈川県川崎市、延べ床⾯積:1293.77㎡、規模・構造:地上4階建て・RC造、用途:事務所)を⼀棟リノベーションした、サテライトオフィス・コワーキングスペース・ダンススタジオ・シェアキッチン・ブルワリーからなる複合施設

1.CO2排出量調査結果:建替新築とリノベーションの比較 (※3)
既存建物解体・設計監理・資材製造・建設段階を評価の場合
1棟あたりのCO2排出量は、建替新築した場合に比べて68%削減され、削減量は約947tと算出された。

2.廃棄物排出量調査結果:建替新築とリノベーションの比較 (※4)
既存建物解体・建設段階を評価の場合
1棟あたりの廃棄物排出量は、建替新築した場合に比べて94%削減され、削減量は3,021tと算出された。

リノベーションによる⼆酸化炭素排出量および廃棄物排出量の削減効果

出典:『リノベーションによる二酸化炭素排出量および廃棄物排出量の削減効果(BOIL)』 (リノベる・金沢工業大学佐藤考一研究室・国士舘大学朝吹香菜子研究室)よりリノベる作成

(※1)適切に手入れされている36~40年生のスギ人工林1ヘクタール(1,000本の立木)が1年間に吸収する二酸化炭素の量を約8.8トンと推定(林野庁試算)。

(※2)明治神宮の広さは約73ヘクタール。

(※3)評価は、各建物の既存建物の図⾯、リノベーションの竣⼯図面及び見積書から資材の種類・物量を算出して実施。設計・資材製造・建設段階のCO2排出量は、一般社団法人日本建築学会が公開する「⼀般建物用LCAツールVer5.00」を⽤いて算出。

(※4)評価は、既存建物の図⾯及びリノベーションの竣⼯図⾯を⽤いて、建物本体に由来する廃棄物の種類・物量を算出。

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