記事詳細

大阪大学大学院生命機能研究科山本亘彦教授のグループとの共同研究において金沢工業大学小島正己教授は、自身が研究する脳由来神経栄養因子BDNFが損傷した脳から軸索成長を促進することの発見に貢献。BDNF創薬、新たな脳疾患治療法の開発に向けた第一歩に

研究成果のポイント

*脳損傷後の軸索(※1)成長(神経発芽)を促進する分子メカニズムの研究

*その研究のなかで脳由来神経栄養因子BDNF(※2)が損傷脳からの軸索成長を促進することを解明

概要

金沢工業大学バイオ・化学部応用バイオ学科・小島正己教授(前・産業技術総合研究所)は、損傷した脳から神経回路が修復する仕組みを研究する大阪大学大学院生命機能研究科の張理正博士(現・延世大学研究員)、山本亘彦教授の研究グループの共同研究に参画し、自身が専門としている脳由来神経栄養因子BDNFがこの回路修復メカニズムとして重要であることの解明に貢献しました。

小島教授は脳由来神経栄養因子の専門家として、金沢工業大学では創薬・診断のための基礎研究を進めていますが、本共同研究では、脳由来神経栄養因子BDNFが損傷した脳神経回路の再生機能を行うという新たな役割の発見に貢献しました。

脳由来神経栄養因子BDNFの研究が脳の健康・治療・創薬そして診断に貢献すべく、さらなる研究の発展を目指します。

本研究成果は、米国科学誌「the Journal of Neuroscience」に、12月9日にプレビュー、オンライン公開されました。

また研究内容の詳細解説については、研究代表者である大阪大学大学院生命機能研究科のプレスリリース
https://www.fbs.osaka-u.ac.jp/ja/research_results/papers/detail/1033
をご参照ください。

用語説明

1 軸索

神経細胞から伸びる突起構造は、形態的機能的特徴から2つに分類されます。(軸索と樹状突起)。軸索は電気的興奮(活動電位)を伝える機能を行い、他の神経細胞や効果器の細胞への情報出力を担います。

2 脳由来神経栄養因子BDNF

Y-A Barde博士(イギリス・カーディフ大学)が発見した脳の成長因子。脳に強く発現していること、神経活動依存的に発現が誘導されること、さらにはチロシンキナーゼ型受容体であるtropo-myosin related kinase B (TrkB)を介してニューロンの生存、樹状突起や軸索の伸展、シナプス形成、シナプス機能調節、細胞死、記憶学習促進などライフコースのなかで多岐多様な機能を担うタンパク質として世界的に研究されている。

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