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リノベーションでCO2排出量を76%、廃棄物排出量を96%削減。 脱炭素社会実現に向け、金沢工業大学 佐藤考一研究室が産学共同研究を実施

金沢工業大学 建築学科 佐藤考一研究室は、リノべる株式会社(以下 リノべる)との共同研究で、国士舘大学 朝吹香菜子研究室の研究協力のもと、リノベるがリノベーションを実施した2棟の集合住宅「北習志野台プロジェクト」と「戸越公園プロジェクト」を対象に、リノベーションによるCO2排出量削減効果と廃棄物排出量削減効果を評価しました。その結果、既存建物を同規模の新築に建替えた場合と比較し、最大76%のCO2排出量と最大96%の廃棄物排出量を削減できることを確認いたしました(※1)。

 「北習志野台プロジェクト」の既存建物解体・設計監理・資材製造・建設段階におけるCO2排出量削減量は約3,300tとなり、これは杉の木約37万本が1年間に吸収する量(※2)と同程度で、杉林約375ヘクタール分、明治神宮約5.1個分(※3)に相当します。さらに1戸当たりに換算すると、CO2排出削減量は約66tでした。これは杉の木約7,500本が1年間に吸収する量に相当します。

今回の研究により、リノベーションが脱炭素社会におけるソリューション提案の一つとなり得ることが明らかになりました。今後も、プロジェクトを通してCO2削減量や廃棄物削減量の定量化を行い、リノベーションが環境に与える影響を検証・発表し、「リノベーション」による循環型社会実現、脱炭素社会実現に寄与してまいります。

取り組み(共同研究)の背景

2020年の脱炭素(カーボンニュートラル)宣言以降、2030年のCO2排出削減量目標が設定され、各分野で大幅な削減が求められています。また、企業活動においてもESGが重要視され、企業価値の評価に影響を及ぼすようになりました。そして、SDGsは産官民で取り組む世界共通の目標として、人々の消費における意思決定にも影響を与えはじめています。

建物のリノベーションは、新築と比較して投入資材量や施工時の燃料を大幅に削減することができ、CO2排出量の削減に貢献する取り組みであり、また、建物の解体により排出される廃棄物も大幅に削減することができます。しかしながら、建物のリノベーションは個別性が高く、これまでに調査された事例も少ないため、それらの効果が定量化・見える化されていない現状でした。こうした背景をもとに、今回、佐藤考一研究室とリノベるは、国士舘大学 朝吹香菜子研究室の研究協力のもとに、CO2削減効果と廃棄物削減効果を算出・見える化すべく、産学共同研究を実施いたしました。

1.CO2排出量調査結果:建替新築とリノベーションの比較(※4)

①既存建物解体・設計監理・資材製造・建設段階を評価の場合

北習志野台プロジェクト

1棟あたりのCO2排出量は、建替新築した場合に比べて76%削減され、削減量は約3,300tと算出された。これを1戸あたりに換算すると、削減量は約66t/戸と算出された。

戸越公園プロジェクト

1棟あたりのCO2排出量は、建替新築した場合に比べて63%削減され、削減量は約336tと算出された。これを1戸あたりに換算すると、削減量は約42t/戸と算出された。

②①に加え、リノベーションもしくは新築以後20年間のランニング(運用・改修段階)を評価の場合

北習志野台プロジェクト

1棟あたり・20年間のCO2排出量は、建替新築した場合に比べて34%削減され、削減量は約3,050tと算出された。これを1戸あたりに換算すると約61t/戸と算出された。

戸越公園プロジェクト

1棟あたり・20年間のCO2排出量は、建替新築した場合に比べて25%削減され、削減量は約272tと算出された。これを戸当たりに換算すると、約34t/戸と算出された。

2.廃棄物排出量調査結果:建替新築とリノベーションの比較(既存建物解体・建設段階)を評価の場合(※5)

北習志野台プロジェクト

1棟あたりの廃棄物排出量は、建替新築した場合に比べて96%削減され、削減量は7,289tと算出された。これを1戸あたりに換算すると、削減量は146t/戸と算出された。

戸越公園プロジェクト

1棟あたりの廃棄物排出量は、建替新築した場合に比べて94%削減され、削減量は751tと算出された。これを1戸あたりに換算すると、削減量は94t/戸と算出された。

▼対象物件

築年数、規模の異なる2物件を対象に評価いたしました。

北習志野台プロジェクト

築19年の共同住宅(千葉県船橋市、地上6階建て、延べ床面積4,042㎡、RC造、50戸、平均専有面積65.93㎡)の専有部・共用部を併せて一棟リノベーション。

戸越公園プロジェクト

築49年の賃貸共同住宅(東京都品川区、地上4階建て、延べ床面積487.34㎡、RC造、8戸、平均専有面積45.13㎡)の専有部・共用部を併せて一棟リノベーション。

(※1)既存建物解体・設計監理・資材製造・建設段階におけるCO2排出量と既存建物解体・建設段階における廃棄物排出量の比較「北習志野台プロジェクト」出典:『リノベーションによる二酸化炭素排出量および廃棄物排出量の削減効果』(リノベる・金沢工業大学佐藤考一研究室・国士舘大学朝吹香菜子研究室)

(※2)適切に手入れされている36~40年生のスギ人工林1ヘクタール(1,000本の立木)が1年間に吸収する二酸化炭素の量を約8.8トンと推定(林野庁試算)

(※3)明治神宮の広さは約73ヘクタール

(※4)評価は、各建物の既存建物の図面、リノベーションの竣工図面及び見積書から資材の種類・物量を算出して実施。設計・資材製造・建設・運用(エネルギーを除く)・廃棄段階のCO2排出量は、一般社団法人日本建築学会が公開する「一般建物用LCAツールVer5.00」を用いて算出。(なお集合住宅は非常に多種類の資材で構成されるため、物量が小さくCO2排出量の少ない資材は入力を省略し、外構・植栽は評価対象外とした)。リノベーション建物の運用エネルギー消費に伴うCO2排出量は、「共同住宅フロア入力法計算プログラムVer3.0.3」及び「エネルギー消費性能計算プログラムVer3.0.0住宅版」を用いて算出した各建物のエネルギー消費性能を、一般社団法人日本サステナブル建築協会が公開する「CASBEE建築(新築)評価ソフトCASBEE-BD_NC_2021v1.04)」に入力して算出。

(※5)評価は、既存建物の図面及びリノベーションの竣工図面を用いて、建物本体に由来する廃棄物の種類・物量を算出。

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