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養殖と水耕栽培を同時に行う生産技術「アクアポニックス」を用いた北陸地域の食文化に沿った魚・野菜を同時に生産する北陸モデルの共同研究を開始。白山麓キャンパスのドームハウスで実証実験に取り組む

金沢工業大学は、北陸電力株式会社、北菱電興株式会社、株式会社アクポニと連携し、魚の養殖と野菜の栽培を一体化させた生産技術「アクアポニックス」の北陸モデルの産学共同研究を本格的に開始します。金沢工業大学白山麓キャンパスのドームハウス内にアクアポニックスを設置し、実証実験に取り組んでおり、SDGsに資するための、北陸地域の食文化に沿った魚・野菜の生産を行う循環型生産システムの確立を目指していきます。

アクアポニックスとは、養殖と水耕栽培を掛け合わせた、次世代の循環型農業です。「魚」と「微生物」と「野菜」が共生する環境を人工的につくり維持することで、「魚」と「野菜」の収穫ができる生産技術です。自然界で発生する「排泄」「分解」「吸収」「浄化」の流れを利用した農業方法であり、従来の養殖と比較して節水が実現でき、環境負荷が非常に少ないという利点があります。生産性と環境配慮の両立ができる持続可能な農業として、近年注目が高まっています。

アクアポニックスの基本的なシステム構成と循環サイクル

今回の共同研究の目的は、アクアポニックスにおいて、センサー等を利用して取得する各種環境データを活用した最適な管理方法と省力化、微生物の働きや活性化条件などの実証実験を行うことです。通常、アクアポニックスで養殖する魚については「イズミダイ(ティラピア)」が、栽培する野菜については「リーフレタス」や「ハーブ類」が主流です。今回の共同研究では、北陸地域、特に金沢の食文化の特長を活かした魚の育成、野菜の栽培の研究を行っていく予定です(※1)。

金沢工業大学白山麓キャンパスにあるドームハウス(※2)内で、2020年度からアクアポニックスの実証実験を開始しています。これまでの実証実験を通して魚の育成、野菜の栽培を安定的に行えるようになり、今後、本格的にアクアポニックスの“北陸モデル”の研究を進めていきます。

ドームハウス内でのアクアポニックス運営は全国で初の試みです。ドームハウスとアクアポニックスはともに世界的な展開をめざしている技術であり、金沢工業大学をプラットフォームとした技術の相乗効果が期待されます。

本取り組みは、SDGsにおける「2 飢餓をゼロに」「14 海の豊かさを守ろう」「15 陸の豊かさも守ろう」「17パートナーシップで目標を達成しよう」の目標達成に貢献するものと位置づけられます。

ドームハウス内アクアポニックスの設備

野菜ベッド、魚タンク、貯水タンク、生物・物理濾過槽、ポンプ、ブロワ、LED ライト等、監視カメラ、計測装置、制御盤

●養殖品目および栽培品目

養殖品目:食用鯉  栽培品目:中島菜、大葉春菊、イチゴ等

ドームハウス内に設置されたアクアポニックスの野菜ベッドや魚タンクなどの設備

定植後のアクアポニックスシステム

ドームハウスに設置されたアクアポニックス(イメージ)

ドームハウス外観

共同研究体制について

アクアポニックス共同研究チームは、

・北陸電力株式会社(富山県富山市)

・北菱電興株式会社(石川県金沢市)

・株式会社アクポニ(神奈川県横浜市)

・金沢工業大学 地方創生研究所 町田雅之教授(専門:ゲノム科学)、相良純一准教授(専門:生命情報科学)

で構成されています。活動拠点として金沢工業大学 白山麓キャンパスのイノベーションハブ内に設置されたバイオラボを利用して進めていきます。町田教授と相良准教授は、アクアポニックスにおける微生物の作用と原理の分析を担当します。

本研究は北陸電力株式会社の発案によるもので、株式会社アクポニに蓄積された運用ノウハウ、北菱電興株式会社のリモートセンシング技術、金沢工業大学の微生物分析技術を組み合わせて行われます。

※1 創業1861年から様々な北陸の特色を持った野菜の種と苗を取り扱ってきた実績を持つ、有限会社松下種苗店(石川県金沢市)による協力を受けて取り組みます。

※2 白山麓キャンパスに設置されたドームハウスは、建築学科の後藤正美教授(専門:耐震工学)とジャパンドームハウス株式会社(石川県加賀市)の共同研究の一環で2019年12月に設置されたものです。白山麓という多雪地域で耐雪能力を検証しています。強度・密閉性・断熱性に優れているドームハウス内での今回の実証実験は、ジャパンドームハウス株式会社の協力のもと実施されています。

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