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情報工学科の長田研究室が安藤ハザマとの共同研究でコンクリートの締固めAI判定システムを開発。深層学習に基づくプログラムを用いてリアルタイム判定を実現
金沢工業大学(メインキャンパス:石川県野々市市)の長田茂美教授(情報技術AI研究所所長)と安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:福富正人)は、深層学習(注1)に基づく「コンクリートの締固めAI判定システム」を開発しました。システムのプロトタイプを用いた実地試験をコンクリート製品工場で実施し、AIによる締固めの完了および未完了の判定結果をリアルタイムに表示できることを確認しました。
長田教授はAI等の知能化技術を専門としており、林業分野の共同研究においてAIや画像認識技術を用いた樹種判別・資源量推定のシステムを開発するなど、これまでも社会実装型の研究・開発に携わっています。今回の安藤ハザマとの共同研究では、深層学習や画像認識などの専門的な知識・技術を提供するとともに、安藤ハザマと共同で締固めの判定プログラムの開発を行いました。
1. 開発の背景
コンクリートは、構造物の設計および施工条件に合わせて所要の品質(圧縮強度、耐久性等)が得られるように配合選定(注2)が行われます。しかし、適切に選定されたコンクリートであっても、適切な打込み・締固め(注3)が行われないとコンクリートの性能は最大限には発揮されません。一方、コンクリートの締固め作業の完了時期は、作業従事者の経験に基づく目視評価を基に判断(注4)されており、その判断は人によって異なるという課題がありました。近年、建設業就業者の減少による労働力不足、熟練工の減少による品質低下が懸念されており、コンクリート工の生産性向上、作業従事者の力量によらない技術の開発が求められています。
2. 本システムの特長
本システムは、従来の目視評価に基づく判定手法の代替として、深層学習に基づく判定手法を提案するものです。本システムの特長は以下のとおりです。
①コンクリート専門家の締固め判定を深層学習で実現
コンクリートの専門家の判断に基づく完了判定をAIが深層学習によって繰返し学習することで、コンクリートの専門家による完了判定に近い判定を実現します。
②リアルタイム判定
ビデオカメラで撮影した締固め中のコンクリート表面の映像を判定プログラム搭載パソコンに転送し、リアルタイムに締固め判定を行い、その判定結果をモニタ上へ表示します(タイムラグ1秒程度)。
③メッシュ毎に枠の色で判定結果を表示
撮影した映像はメッシュ状に自動分割(プロトタイプでは24分割)してメッシュ毎に判定し、締固め未完了の場合は赤色、締固め完了の場合は緑色に枠の色を変化させて表示します。
3. 本システム適用の効果
実地試験では、コンクリート締固め作業に従事する技能者に、AIによる締固めの完了判定結果をリアルタイムで示すことができました。これにより、作業従事者の力量によらない締固め判定ができるようになり、コンクリートの施工品質が安定します。
4. 今後の展開
判定プログラムにさらなる改良を加え、安藤ハザマの自社のコンクリート製品工場(屋内施工)への展開をめざします。
(注1)深層学習
AIの手法の一つで、予めビデオカメラで撮影した締固め中のコンクリート表面のフレーム画像と締固め状態(完了もしくは未完了)との対応関係を学習させておくことで、入力するフレーム画像を確信度の高いクラスに分類することができる。
(注2)配合選定
コンクリートの原材料はセメント、水、粗骨材(砂利)、細骨材(砂)などで、これに空気量などに影響を与える混和剤を加えて製造される。コンクリートは所要の品質に合わせてこれら原材料の比率を変えて配合が選定されている。
(注3)打込み・締固め
コンクリートは原材料を練り混ぜただけのまだ固まらない状態(通称、生コンクリート)で型枠に打ち込まれ、バイブレータを用いて締固めが行われる。この締固め作業によってコンクリートを型枠の隅々まで充填し、製造、運搬および打込みの過程でコンクリート中に巻き込まれた余分な空気を追い出すことによって締固めが完了する。
(注4)目視評価を基に判断
締固め作業により、コンクリートの充填および巻き込み空気の追い出しを行うと、コンクリートの表面では、体積が減っていくように見える。また、比重の小さい水が浮いてくるため、光沢が現れる。これらコンクリート表面の状態変化は、コンクリートの締固めが十分である根拠とされている。