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金沢工業大学がカネマツ鋼材株式会社の生産管理システム導入を支援。北菱電興株式会社とともに産学連携で業務効率化を実現
金沢工業大学は、建設機械や産業機械などに使われる特殊鋼材販売を行うカネマツ鋼材株式会社(石川県白山市)の生産現場が抱える課題をICTで解決するための支援を行ってきました。この度、生産管理の最適化を図るシステムの稼働に至りました。
カネマツ鋼材株式会社は、豊富な機械設備により大物、超硬素材など多様な特殊加工に対応しており、高品質・短納期での加工品の提供実現に取り組んできた一方で、多様化、短納期を希望する顧客ニーズに対応するため、従来の管理手法に代わる効率的な生産体制の構築を必要としていました。
2018年9月に相談を受けた金沢工業大学は、カネマツ鋼材株式会社との数度にわたる意見交換の場を通じて生産現場が抱える課題を解決する思考方法や取り組み方法を提案。システムの計画にあたっては、情報工学科 長田茂美教授および産学連携局のURA(University Research Administrator)が共にコンセプトを検討し、システムの実現に向けて取組みました。また、長田研究室の学生がインターンシップにて、実際の鋼材加工を学ぶとともに、現場に入り込んで要件定義を共に進めてきました。学生は、研究室で学んだIoT及びAIの知見を活かしながら、加工現場での課題を抽出するとともに業務フローの見える化に取り組み、改善提案を行いました。
課題解決に向けた試行錯誤の結果、生産管理の最適化を図るシステムの稼働に至りました。人と機械稼働状況を視覚化する本システムにより、機械の最適な稼働管理、営業と生産情報共有がつながるシームレスな生産確認など生産性の向上が期待できます。
本システムは、県内企業を中心に製造現場のICTソリューション提供に強みを持つ北菱電興が開発と全体コーディネートを行いました。生産現場でのニーズと技術シーズの組み合わせによって構築したシステムのコンセプトをベースとして開発にあたり、その成果が実装に至りました。
地域での産学連携について
近年、生産現場の効率化及び自動化を目的にした様々なシステムが存在しますが、地域の現場で創意工夫を凝らしながら独自の技術を培っている企業への適用が容易ではないのが実情です。今回の事例では、カネマツ鋼材株式会社が有する独自の高い鋼材加工技術を、金沢工業大学と北菱電興が現場で共に学びながら進めてきました。得意分野の異なる産学が連携して現場での課題を共有し、解決策を模索すべくコミュニケーションを深め、システムを完成させました。
カネマツ鋼材の取り組みについて
カネマツ鋼材株式会社は以前より、業務改善と生産性向上を図る目的にて営業・生産現場・事務の各部門から課題を抽出し、課題解決や改善への産学連携にて模索を続けてきました。鋼材部門では顧客が発注した鋼材の受付から切断、加工、配送に至るまでの過程を視ることができるシステム開発を図り、石川県の令和元年度「AI・IoTを活用した業務効率化・省力化支援事業」に採択されました。カネマツ鋼材株式会社の社内作業の可視化により、顧客は専用画面を通してカネマツ鋼材株式会社からの製品納入予定日時を確認でき、生産計画を立てられるようになります。このシステムは同社基幹システムを提供している株式会社石川コンピュータ・センターと共同で開発を行いました。
また、加工部門では生産管理の最適化を図る、今回のシステムの導入を計画し、先般、稼働が始まりました。この生産管理システムの開発と全体コーディネートは北菱電興が行ったもので、この生産管理システムで人と機械の稼働状況を視覚化することにより、人材配置及び機械稼働の最適化、営業と生産現場がつながるタイムリーな管理体制構築により、営業力強化や顧客との更なる関係構築のための時間捻出が期待できます。
今後、金沢工業大学とカネマツ鋼材株式会社は、少子高齢化が進む中、一朝一夕には解決が困難だと言われている技術伝承や人材育成についても産学連携で解決策を探っていく予定です。