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染色が困難であった「ポリプロピレン繊維」に、多様な色を付けられる世界初の染料を、福井大学、金沢工業大学、有本化学工業が、産学連携で開発に成功。環境に優しい染色技法で、消費者の多様な色ニーズに合った保温機能肌着やスポーツウェアも製造可能に

金沢工業大学は、このたび福井大学と有本化学工業株式会社(本社:大阪府八尾市/代表取締役社長:有本武文)と連携して、ポリプロピレン繊維染色用染料の開発に成功しました。

本研究開発には、金沢工業大学から宮崎慶輔准教授、福井大学から堀照夫教授、廣垣和正准教授、田畑功技術長、有本化学工業から古賀孝一氏らが参画し、大きな成果を得ることができました。

本件に関する特許は海外も含めて出願済みです。

ポリプロピレン樹脂は、石油精製時の排ガスを原料としているため非常に廉価です。

この樹脂を使用したポリプロピレン繊維は軽量で速乾性があり、耐薬品性、耐擦過性、耐屈曲性、帯電防止性など優れた特性を持つ繊維です。1960年代の出現当時は「夢の繊維」と称され世界中の話題となりましたが、染色が困難などの理由から衣料品としての用途は広がりませんでした。繊維を作る際に有色顔料を樹脂に練り込むなどしてあらかじめ色付けすることは可能ではありましたが、色を決めるタイミングと色数に制約があるため、有色のポリプロピレン繊維の活用例は非常に少ないのが現状です。

細いポリプロピレン繊維は水系染色技法では染色できないため無色

顔料を練り込んだポリプロピレン繊維は太く、色数にも制約があるため衣料品には適さない

従来の水を使った水系染色に代わる染色方法として、超臨界(流体)染色と呼ばれる、超臨界二酸化炭素を染色媒体として染色する方法が1991年にドイツで発表されました。

物質に高い圧力をかけながら高温にすると、気体・液体・固体と並ぶ物質の状態である超臨界流体になります。二酸化炭素の場合、31 ℃・7.38 MPaと比較的低温・低圧で超臨界状態になります。染料が溶解した超臨界流体を生地に通すことで染色を行う技術が超臨界流体染色です。超臨界流体染色では、染料の事前溶解や染布の後洗浄が不要となるだけでなく、水を使用しないため乾燥の工程が不要となります。

超臨界流体染色のイメージ図

現在は糸や布などの繊維製品を染色する際、大量の水を使う方法が取られていますが、淡水資源の有効活用の観点から、環境問題に敏感なアパレル企業や欧米のスポーツウェアブランドなどからは環境に配慮した染色方法の一つとして超臨界流体染色技術に注目が集まっています。

ポリプロピレン繊維を超臨界流体染色で染色する際、既存の染料では染色堅牢度(耐光、洗濯、汗、摩擦、昇華等、各種の外的条件に対する染色の丈夫さの度合)が低く、製品化は難しかったのですが、今回の研究開発成果によって、超臨界流体染色でも十分な堅牢度を持ったポリプロピレン繊維用染料の開発に成功しました。染料は赤、黄、青の三原色が揃っています。

本技術によってポリプロピレン繊維を様々な色に染色することが可能となったため、衣料分野(アパレル業界、スポーツ衣料)など、これまでポリプロピレン繊維が使用されてこなかった分野への展開が期待されます。

ポリプロピレン用染料(赤、黄、青)

超臨界流体染色で染色したポリプロピレン繊維

詳細は以下までお問い合わせください。

有本化学工業株式会社

営業部 藤井賢司

技術開発室 古賀孝一

〒581-0052 大阪府八尾市竹渕2丁目48番地

TEL:(06)6708-2123 FAX:(06)6708-7662

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