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3Dプリンタを使ったオーダーメイド3次元線量計の作製に初めて成功。臓器の形状を正確にコピーできるため、より正確で安全な放射線治療が可能に。産業技術総合研究所と東北大学、金沢工業大学の研究グループ

国立研究開発法人 産業技術総合研究所と東北大学大学院工学研究科応用化学専攻および金沢工業大学応用化学科の研究グループでは、このたびラジオクロミック材料(放射線照射により発色する物質)を用いた3Dプリント線量計の作製に初めて成功しました。3Dプリンタで患者の臓器の形状を正確にコピーしたオーダーメイドの3次元線量計が可能となり、正確で安全な放射線治療に貢献できるものとして、今後の研究の進展が期待されています。

本研究の社会的意義

放射線治療では、がんを治療しながら、周辺の正常組織に影響を及ぼさないよう、放射線をどのように照射するか、綿密な計画が必要となります。そのため放射線の線量を測定する線量計は放射線治療において重要な役割を果たしますが、放射線治療には強度変調放射線療法や定位体放射線療法、高エネルギーハドロン療法など、さまざまな照射技術があり、線量分布を複雑にする原因となっていました。

当研究は、ラジオクロミック材料と3Dプリンタを使い、3次元線量計を作るという新しいアイデアを具現化したものです。照射後にラジオクロミック材料である透明ポリマーが着色するため、3次元線量分布が容易に可視化され定量化できます。これにより、患者さんの3次元X線CTデータをもとに臓器の形状を正確にコピーした線量計を3Dプリンタで製作することで、より正確で安全な放射線治療の立案に貢献できます。

(a)オーダーメイド3D線量計のデモに使用した試料の外観。 (b)3D CT用に撮影した試料のX線画像のうちの1枚 。(c)360枚のX線画像から再構成した3D CT画像

3Dプリントされた線量計。 (a)照射前。 (b)1kGyのX線(100kV連続源)を照射した後。 (b)の青緑色の着色は線量計の照射部分を示している

ラジオクロミック材料を用いて3Dプリントした医療用サンプル

掲載論文

Tailor-made 3D dosimeter using 3D printing technology

Radiation Measurements Volume 135, July 2020, 106376

https://doi.org/10.1016/j.radmeas.2020.106376

執筆者

■国立研究開発法人 産業技術総合研究所

計量標準総合センター 分析計測標準研究部門

放射線イメージング計測研究グループ

主任研究員 藤原 健

■東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻

分子システム化学講座 量子物理化学分野 浅井研究室

大学院生 河村 一朗

■東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻

分子システム化学講座 量子物理化学分野 浅井研究室

助教 藤本 裕

■金沢工業大学 バイオ・化学部 応用化学科

講師 岡田豪

■東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻

分子システム化学講座 量子物理化学分野 浅井研究室

准教授 越水 正典

論文のAbstract(翻訳)

本論文では、ラジオクロミック材料と3Dプリンタを用いて、オーダーメイドの3次元線量計を製作した初期の成果を報告する。照射後に透明ポリマーが着色することで、3次元線量分布が容易に可視化され定量化される。この技術を用いて、3Dプリントされた線量計でヒトの臓器の形状を正確にコピーし、より正確で安全な放射線治療の提供に貢献する、3D線量計を用いた新しい方法を提案する。

関連ページ

金沢工業大学 研究室ガイド バイオ・化学部 応用化学科 岡田豪 研究室

https://kitnet.jp/laboratories/labo0216/index.html

岡田豪研究室 研究成果

http://gookadalab.com/publications-jp.html


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