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【産学連携研究の最前線】
ICT・IoTを活用したおいしい「いちご」栽培に関する実証研究が産学連携で進行中。新たな農業従事者の担い手確保につながる次世代型の営農システムとして期待
金沢工業大学地方創生研究所では北菱電興株式会社(金沢市)と共同で「いちごの成長制御を目的とした圃場全体の制御システムの研究開発」に、2018年2月から取り組んでいます。環境モニタリングセンサ-を活用していちご栽培に最適な環境条件の確立を目指すもので、北菱電興株式会社と農事組合法人んなーがら上野営農組合(白山市)が共同運営する「いちごファームHakusan」(石川県白山市上野町フ14番地)で実証実験を行っています。新たな農業従事者の担い手確保につながる次世代型の営農システムとして期待されています。
本研究の概要
金沢工業大学地方創生研究所(所長 大澤敏学長)では文部科学省「平成28年度私立大学研究ブランディング事業」の一環として、金沢工業大学が有する「空間情報」「エネルギーマネジメント」「ロボット技術」「AI」「IoT」「センサ」「画像認識」などの技術を活用した地方創生の研究と実証実験に取り組んでいます。
北菱電興株式会社では地域の再生可能エネルギーを地域で利用する「地産地消型」の営農モデルとして、同社が開発したマイクロ水力発電を活用した「いちごファームHakusan」(石川県白山市上野町フ14番地)を農事組合法人んなーがら上野営農組合(白山市)と共同運営しています。
当営農施設では、金沢工業大学ロボティクス学科の竹井義法教授らの研究グループと同社が共同で開発を進める温湿度センサをハウス内に設置。既存のセンサと組み合わせて温度や二酸化炭素の濃度、湿度のむら、異常などをモニタし、必要に応じた空調管理やカーテンの制御をすることでハウス内の環境を一定に保ち、品質のばらつきを抑えた均質な美味しいいちごを栽培する実証実験が行われています。また応用バイオ学科の松本恵子講師がいちごの品質向上に関する研究を行っています。
この農業IoTやマイクロ水力発電に関する技術は、産学連携による実証実験を経て、社会実装がされ始めており、大学と企業のシーズ発展の模範的な事例と言えるものです。
ハウス内の環境はPCやタブレットで確認できるため、遠隔監視や遠隔操作による労働時間や労力の軽減にもつながり、次世代型の営農システムとして新たな農業従事者の担い手確保につながるものと期待されています。
また「いちごファームHakusan」が立地する旧鳥越地区は雪深く、冬の間は観光客が訪れにくい地域ですが、この気候条件がいちご栽培にとってはかえって好条件となっており(*)、12月中旬から6月中旬まで実施されるハウスでの「いちご摘み取り体験」は連日多くの来場者で賑わっています。
北菱電興株式会社・株式会社別川製作所・石川県立大学の三者により開発したマイクロ水力発電実証施設による再生エネルギーを使ったハウス栽培いちごとしてブランド化が進められており、当事業を観光資源としても活用することで地域創生の一助となりつつあります。
(*)促成栽培のいちごは授粉後約45日が食べごろとされています。当地域では太平洋側に比べて気温が低いため、熟成に時間がかかり授粉後45日から50日頃に果実が赤くなり酸味が少なく、より甘くておいしい、いちごとなります。
関連資料:マイクロ水力発電装置上野町設置機種(仮称:SuiREN-P10kw-TYPE)の概要について
【水車外形寸法】
・ランナ数:5連
・ノズル数:10連
・流量調整方式 :バルブ制御
・外形寸法:3500L×2200W×1500H
・参考重量:1400kg
【機器仕様】
・水車形式:多連ペルトン型水車
・伝達機構:Vベルト
・ランナ連数:5連
・開放弁仕様:電動バタフライ弁
・発電機種別:交流同期発電機
・発電機定格電圧:三相三線200V
・発電機定格回転数:1500rpm
【システム仕様】
〈計測項目〉
・管内水圧・取水桝水位・水車回転数・瞬時発電電力・積算発電電力量・流量・音量・振動 他
【水車性能】
・有効落差:11m
・流量 :0.18m3/s
・計画出力:10kw