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生体磁気計測装置の事業化にむけリコーと金沢工業大学の共同研究促進

 脊磁計センサユニットのプロトタイプ



リコー(東京都)の三浦善司代表取締役社長と金沢工業大学の大澤敏学長は4月5日、石川県庁に谷本正憲知事を訪ね、リコーがヘルスケア分野に初めて進出し、金沢工業大学と連携した研究拠点を金沢に構える計画であることを表明しました。


金沢工業大学とリコーは2014年度から生体磁気計測についての共同研究契約を結び、主に脊磁計の開発研究を進めてきました。脊磁計は脊髄神経の活動に伴って発生する磁場を体表面で検出し、神経信号の電流の位置や大きさを可視化する装置。脊髄神経のはたらきを体の外から観察する無侵襲な機能検査ができるため、手足の麻痺やしびれなどの症状の原因部位を正確に診断することが可能で、今年1月に東京ビッグサイトで開催された第15回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」ではnano tech大賞を受賞しています。


リコーは今年4月1日に横河電機から脳磁計事業を譲り受けたことを受け、今年度から脳磁計と脊磁計の両方について金沢工業大学と共同開発を進めることになりました。脳磁計は神経活動によって脳から生じるわずかな磁気を痛みや苦痛を伴わずに計測し、脳内の神経活動の伝達を「見える化」するもので、てんかんの診断などに活用されています。


センサユニットの磁束電圧特性



これらの脊磁計、脳磁計の核となる技術は、金沢工業大学先端電子技術応用研究所が開発した高感度磁気センサ(SQUID)で、これをもとにした脳磁計や脊磁計などの生体磁気計測システムの開発も金沢工業大学で行なってきました。
リコーではその画像技術を活かして金沢工業大学の研究成果をもとに更に開発を進め、これらの装置で計測されたデータを医師や研究者などのユーザにより分かりやすい形で提供することを目指しています。


【金沢工業大学先端電子技術応用研究所について】
先端電子技術応用研究所は、超電導エレクトロニクスを基盤とした超高感度磁場センサとその応用分野の開拓を中心に、センサ技術や画像診断技術の医療や産業への幅広い応用を目指して研究開発を進めています。とくに、低温超電導量子干渉素子(LTS-SQUID)の分野では、SQUIDセンサ自体の開発から、低温技術、磁気シールド、微小信号計測技術まで、SQUID磁場計測システム開発に必要なすべての要素技術を有する国内唯一の研究所です。


【金沢工業大学先端電子技術応用研究所が開発した高感度磁気センサ「SQUID」について】
超電導量子干渉素子・SQUID(Superconducting QUantum Interference Device)は超電導技術を用いた非常に高感度な磁気センサです。
絶縁体を超電導の金属で挟み込むことで、絶縁体の中にも電流が流れるという「ジョゼフソン効果」を利用し、量子力学に基づいて開発されたもので、高感度、高速応答という特徴があります。現在、その高感度・高機能化とともに、広い分野への応用が期待されています。
次世代・脳磁計測システムの開発研究と、それを利用した脳機能の解明 脳や心臓などの神経や筋肉が活動するときには、必ず細胞単位でイオンや電子が出入りし、電流が流れ、磁場が発生しています。その磁場は、地磁気の1億~100億分の1という非常に微弱なものであり、SQUIDが開発されるまで、それを計測することはほとんど不可能な状況でした。
金沢工業大学先端電子技術応用研究所の脳磁計測システムは、SQUIDを利用した脳磁計と、磁気共鳴画像診断装置を連動させることで、脳の活動を画像として表示するシステムとなっています。これによって脳に影響を与えることなく、現在、脳がどのように働いているかを確認できるようになりました。



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