
- 虎ノ門大学院ブログ
- 2025年10月03日
【授業レポート】生成AIとビジネス・知財特論(村上敏也/杉光一成)第一人者がリレー形式で語る、生成AI活用の最前線
GoogleのGeminiやOpenAIのChatGPTなど、生成AIは、一部の専門家だけが知る技術から、あらゆるビジネスパーソンにとって必須の教養へと急速に変化しました。しかし、日々更新される技術動向、ビジネスでの活用事例、そして法的なリスクといった多岐にわたる情報が断片的に流れ込んでくるため、多くのビジネスパーソンが「どこから手をつければいいのか」「何が本質なのか」を見失いがちになっているのが現状ではないでしょうか 。
2025年の2学期からスタートした「生成AIとビジネス・知財特論」は、こうした現代的な課題に応えるべく設計されています。この授業の目的は、生成AIの基礎からビジネス応用、知的財産、倫理といった、実務に不可欠な知識を総合的にカバーすることにあります。
■ 「オムニバス形式」で重要論点の最新動向を多角的にカバー |
新規したばかりの科目にもかかわらず、32名もの受講生が集まった最大の理由は、その「オムニバス形式」にあります。担当教員である村上敏也教授と杉光一成教授がファシリテーターとなり、毎回異なるテーマで、その分野の第一人者をゲスト講師として招聘するスタイルです。
AI研究の権威である大学教授、発明や特許戦略を専門とする弁理士、コンテンツビジネスに精通した弁護士、そして実際にAIビジネスを立ち上げた経営者といった、各分野の最前線で活躍するプロフェッショナルから、最先端かつ生々しい知見が得られます。また、講師と受講生どうしの距離感がとても近い校風を反映して、直接対話しながら学びを深めていきます。各回のテーマは以下の通り。
① 生成AIの基礎|野田晴義 氏 (3学期「生成AIの活用実務特論1」担当)
② ビジネス応用の現状/未来と社会的インパクト|田中誠人 氏 (株式会社大和総研 デジタルソリューション研究開発部)
③ 発明分野での生成AIの応用とビジネスチャンス|西田泰士 氏 (Axelidea株式会社 代表取締役 弁理士)
④ クリエイティブ分野での生成AIの応用|大橋卓生 教授 (弁護士)、石井 大貴 准教授 (博士)
⑤ 生成AIと知的財産|中崎尚 氏 (アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士)
⑥ データの倫理とプライバシー保護|中崎尚 氏 (アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士)
⑦ 生成AIのビジネス実例と成功/失敗分析|西本匠 氏 (株式会社CREX代表取締役、メタバース総研・AI総研運営)
⑧ 生成AIの実務導入事例紹介|槌野浩 氏(4学期「生成AIの活用実務特論2」担当)
これにより、受講者は各分野の最前線で起きているリアルな事象や、実践から得られた生きた知見に直接触れることができます。
■ 正解がないテーマに最前線で取り組む各分野の専門家から学ぶことの価値 |
例えば、第5回の授業では、「生成AIと知的財産:法的課題とリスク管理」をテーマに、AI法務の専門家である中崎尚弁護士(アンダーソン・毛利・友常法律事務所)が登壇しました。前半では、AI推進法の成立や知的財産推進計画といった、生成AIをめぐる国内の最新動向を解説。
それを踏まえ、AIを利用しなかったことが取締役の注意義務違反と問われる可能性や、プロンプト入力による機密情報漏洩リスク、AI生成物が必ずしも自社の著作物として保護されるわけではない問題など、経営判断に直結する具体的な法的リスクが議論されました。

ゲスト講師の中崎尚弁護士(アンダーソン・毛利・友常法律事務所)
授業の後半、質疑応答の時間になると、受講生からは自身のビジネス課題に根差した鋭い問いが次々と投げかけられました。「AI生成物が著作物と認められるための、試行回数といった具体的な基準は示されるのか」「自社が持つオリジナルのコンテンツをAIで改変した場合、その著作権はどう解釈されるのか」など、日々の業務に直結する切実な質問が続きます。講師はそれら一つひとつに丁寧に、実務家ならではの視点で応じ、熱気に満ちたやり取りが展開されました。
今回の授業レポートでご覧いただいた通り、生成AIという単一の正解がない新規のテーマに対し、各分野の専門家がそれぞれの視点から最新の動向と課題を提示する構成となっています。
法務、技術、ビジネス応用といった異なる領域の論点が、全8回の授業を通じて交差することで、受講者はこのテーマの複雑さと多面性を立体的に理解することができるでしょう。まさに、ビジネス×知的財産というKIT虎ノ門大学院イノベーションマネジメント研究科ならではの強みを活かしたこの授業は、MBA取得あるいはMIPM取得を目指す第一歩として最適です。
未来のビジネスリーダーとしてAIを使いこなし、ビジネスを加速させるために、まずはこの「生成AIとビジネス・知財特論」を受講をご検討いただければ嬉しく思います。