虎ノ門大学院ブログ

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2025年12月09日

【授業レポート】知的財産評価実務特論(小林誠)
知的財産という見えない資産の価値をどう測るか?

ビジネスのグローバル化とオープンイノベーションの進展に伴い、企業の競争力の源泉は、工場や設備といった有形資産から、特許やブランドなどの「知的財産(IP)」へとシフトしています。企業経営やM&A、事業提携の場面において、この「見えない資産」の価値をどう評価するかは、ビジネスを大きく左右する重要な要素です。

最近は、アニメ・ゲーム業界を中心に、IPビジネスが盛んになってきており、株式市場でもホットな話題です。しかし、知財の価値を金額で示すことはやはり容易ではありません。

こうした課題意識を持つビジネスパーソンに向けて、KIT虎ノ門大学院では「知的財産評価実務特論」を、毎年2学期に開講しています。今回の授業レポートではその概要や雰囲気をご紹介します。


■ 業界のトップランナーから知財評価の全体像を学ぶ

担当するのは、小林誠 客員教授です。外資系コンサルティングファームやM&Aアドバイザリー会社等を経て独立し、現在は株式会社シクロ・ハイジアの代表取締役CEOとしてM&Aや知財評価の実務の第一線で活躍されています。

経営や財務・会計の視点からのアプローチを主軸として、知的財産価値評価の理論と実務の基本を体系的に、豊富な事例とともに学ぶことができます。全8コマで構成されるこの授業では、主に「知的財産デューデリジェンス」「企業価値評価」「知的財産価値評価」の3つのテーマを取り扱います。

また、大きな特徴として、単なる知識のインプットに留まらない点にあります。各テーマにおいて、受講生同士で行うグループ討議や、自ら手を動かすExcelを用いたシミュレーション演習がセットで組み込まれています。

この理論と実践の往復運動を通じて、ともすれば抽象的な評価手法を、実務で使える具体的なスキルとして身体化させていくのです。


■ 理論とケースを学び、議論し、手を動かすからこそ学べるダイナミズム

今回は、中盤となる5コマ目の授業を取材しましたが、この日は2つ目のテーマ「企業価値評価」を扱いました。授業では、まず企業価値を測るための代表的な3つのアプローチ(マーケット、インカム、コスト)の概要が解説され、それぞれの実務上の使い分けが示されました。

また、単なる理論の紹介に終わらない点が、特に印象的でした。類似企業の株価を参考にするマーケットアプローチや、将来の収益力を基にするインカムアプローチといった代表的な手法について、実際のM&A事例を交えながら具体的な計算プロセスを追うことで、その抽象的なロジックがしっかり理解できます。


毎回、小林先生のオリジナルテキストが配布される

また、なぜ評価者によって算出価値が異なるのか、その背景にある戦略的な意図まで踏み込んで解説されることで、理論書だけでは得られない価値評価の実務的なダイナミズムが伝わってきました。

授業の最後には、小林先生と多様なバックグラウンドを持つ受講生との活発な質疑応答が行われ、各評価アプローチを実務でどのように「使い分ける」のかなど、現場での応用を意識した議論が交わされました。総合商社の方、コンサルティング会社の方、電機メーカーの方、半導体メーカーの方、創薬スタートアップの方、業種も職種も本当にバラバラです。

様々な手法がありますが、唯一絶対の正解はなく、複数のアプローチから導かれる「価値のレンジ」をいかに戦略的に交渉の武器とするか。そのプロセスこそが知財をビジネスで活かすためには不可欠なのだと感じることができました。

M&Aや事業開発、知財戦略などに携わる方はもちろん、それ以外の分野のビジネスパーソンにとっても、企業の「見えない資産」の価値を客観的に捉える理論や手法、そしてその実例を学ぶことは有益な知見となるでしょう。1科目から学べる科目等履修生として、ぜひ受講をご検討ください!

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