[4] 学生心得

学生部長 佐藤 進

 金沢工業大学は、皆さんを「自ら考え行動する技術者」の素養と「人間力」を身につけた人材として、社会に送り出すことを最も大切な教育目的としています。昨年来、新型コロナウイルス感染症の影響により、世界中の人々が生活や仕事、学業などのさまざまな場面で難しい状況に直面していますが、このような状況を打開し、皆が前に進んでいくためには、また、アフターコロナの状況下では、どのような知識やスキル、思考、人間力を備えた人が求められるでしょうか。このような時期に、大学という場所で新たな学びをスタートしようとしている皆さんには、是非、現時点での自分なりの考えを持ち、大学生活のなかでそれらを実践してほしいと思います。
 本学では、学生・教職員・理事会が「KIT-IDEALS」 という価値観を共有し協同して、教育活動を推進しています。また、本学学友会は、学生としてのモラルや倫理の向上を図るため「学生宣言」を全学議会において平成18年に採択しました。この「学生宣言」は、各教室に「KIT-IDEALS」と共に掲示してあります。その序文に「学生ひとり一人が、本学学生としての人間力を備えた行動をとり、また地域社会の一員としての責任を認識し、学生宣言に掲げる行動規範を遵守します」とあるように、皆さんは学生としてのみならず市民としての責任と義務を意識した行動をとらなくてはなりません。この「学生宣言」に署名することで、その意味を理解し本学の学生として歩みだすことになります。
 それは、本学で学ぶ皆さんは、学園を形成する一員として、大学を支え、大学の発展に寄与する責任と義務があるということです。学生は学ぶ者の立場で、教職員は導く者の立場でお互いに努力し、力を合わせ、より優れた環境を形成することで、皆さんは高いレベルの成長を手にすることができます。自分が所属する組織・集団の発展や活力がひとり一人の幸せに繋がっていきます。特に大学は高等教育機関として、一生涯自分を高めるための絆を繋いでいく共同体であることを忘れず、勉学のみならず倫理観の育成やマナーにおいても真摯な気持ちで取り組んでください。学園全体で全力をあげて支援しますので、皆さんも自己実現に向かって一歩一歩着実に前進されることを大いに期待します。

修学上の心得

 学ぶ者の大切な姿勢は、自らが求めて学修しようとする意欲を持ち、実践し、そして継続することにあります。「こうでなければならない」「こうしなければならない」という発想からは、苦悩や苦痛が生まれがちですが、「こうしたい」「ああなりたい」という発想から生まれる活動の先には、多少苦労することがあったとしても、楽しさやうれしさ、充実感が得られやすいものです。与えられるのではなく、自覚と目的意識を持ち、自ら積極的に学ぼうとする姿勢が重要です。本学は、皆さんの努力を支援するシステムが確立されていますので、それらを十分に活用し、学びに対して謙虚な気持ちと真剣な態度で情熱を注ぎ、卒業時に、「これを学び」「これができるようになった」と明言できることを期待しています。本学は、面倒見の良い大学とは、このような姿勢の学生を全力で支援することにあると考えています。

生活上の心構えと学生生活

 キャンパスルールや生活上のルールは、人間としての基本的なマナーと常識で成り立っています。コロナ禍にあっては、ルールを守ることは当然として、自分の行動の影響力を考え、周囲の人を思いやる行動が求められています。自分の行動が引き起こす結果を想像できない学生や、ルールを守れない学生は、人としての信頼を失い、それまでのすべての努力が無になってしまうおそれがあります。十分な配慮と自戒を心がけてください。他者を思いやることができない人やルールを守れない人を皆さんは信用できるでしょうか。そのような人は、社会ではどのような評価を受けるでしょうか。他者から信頼されて仕事を任せてもらえるでしょうか。さまざまな行動を起こす前に、少し止まって、他者の立場になって考えてみてください。
 充実した学生生活のサポートを目的として「学生心得 Campus Diary」を配付しています。KIT-IDEALSにあるような行動規範を身に付け実践するための有意義な情報や、困ったときの対処方法・相談窓口なども掲載していますので、常に持ち歩いてください。
 皆さんが学ぶことを支えてくれている家族、協同している友人とのかかわり、支援を惜しまない教職員との関係を大切にし、自分自身の成長を目指して努力してください。皆さんの大学生としての一つ一つの行いが、この先の皆さんの人生とどのように繋がってくるのかは現段階ではわかりません。しかし、それらが影響し合いながら皆さんの未来を形づくっていくことは事実です。やるにせよ、やらないにせよ、よく考え、自らの責任のもとに判断し、行動していってください。日々の営みの延長線上に自分の将来があることを胸に留め、実りある学生生活を送っていくことを期待します。