環境にやさしいまちづくりプロジェクト

環境・建築学部建築系 建築都市デザイン学科担当 准教授
建築アーカイヴス研究所研究員
川﨑寧史

外部との交流で引き出される学生の興味や能力

本プロジェクトでは、町に明かりのオブジェを灯すことで、普段は家にいる夜の時間帯に住民を外へと誘いだしました。住民は町に出ることで自宅の明かりを消し、パーソナルなエネルギーを使用しなくなります。月明かり、星明かりという自然エネルギーのもと、住民と学生が一緒になって自然空間を楽しみ、環境の大切さを肌で感じてもらうことをめざしました。

オブジェ制作にはLEDを活用するほか、里山保全に意義がある間伐材も使用しており、学生自ら山へ入り竹の伐採を行いました(山の持ち主に許可を受けて伐採しています)。自然の竹を自ら切り、洗って加工するというプロセスは、学生にとって初めての経験。業者任せの材料確保とは、環境に対して感じるリアリティが違います。また、教育的観点から見ると、外部で学ぶことは普段気づかない学生の能力や興味を引き出す上で非常に有効です。私自身、学内で見ている学生の能力は、個人が持っている資質のほんの一部分であることに何度も気づかされています。好奇心が旺盛な学生、責任感が人一倍強い学生、掃除の一生懸命さなら誰にも負けない学生、学内ではナイーブそうに見えた学生が外でのフィールド学に入った途端、頼もしいリーダーシップを発揮し驚かされたこともありました。普段とは違うシチュエーションでの学びを経験することで、学生が自分の能力や力不足の部分を確認できるという点も教育的意義があります。今後は、プロジェクトで発見した個人の能力を客観的に評価するシステムを提供していくことが、大学側の使命であるとも感じています。

金沢の魅力を発信していくプロジェクトに

プロジェクトのベースとなっているのは、学びのフィールドである北陸、金沢の豊かさです。特に金沢は文化水準が高く、市民の美意識が高い町。そこで学ぶことで、学生は多くの刺激を受け、ものづくりに欠かせない自由な発想や俯瞰的な視点を養うことができます。また、町全体が学生の学びに対し非常に寛容であることも特徴です。学生はプロジェクトの舞台として比較的容易に町の施設やスペースを利用することができ、地域コミュニティが生まれやすい。都会ではこれほどの自由さは難しいのではないでしょうか。

今後の課題としては、地域との連携をさらに強め、金沢の魅力を引き出すようなプロジェクトにすること。これからは地方の時代といわれますが、地方都市は個性を発揮しなければ、生き残れない時代でもあります。金沢は今までにない個性を発揮する潜在能力があり、それを発掘し、魅力ある形で発信していくのがプロジェクトの役目。大学研究という枠を超え、町の営みとなるような活動を生みだし、楽しみながら環境へ還元していけたらと思います。