平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

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KITトピックス/活動報告(平成29年度)

ねばーるプロジェクト 応用バイオ学科3年 北川莉恵
化学肥料がもたらす環境問題に挑む

こんにちは。応用バイオ学科の北川莉恵が「ねばーるプロジェクト~バイオ産業への納豆菌の応用~」と題して発表させていただきます。納豆が苦手な方も少々お付き合いいただければと思います。
プロジェクトのメンバーは以下の通りで、教員4名、職員1名、学部生33名、大学院生1名、学外協力者2名のメンバーで構成しています。


私たちが今回のテーマに取り組んだ背景には、世界の農業が数多くの問題を抱えている現状があります。70億人を超える人口を支えるために事業の集約化と大規模化が求められ、それに伴って、機械化やICT化も進んだ結果、農業の現場には膨大なエネルギーが投下されるようになりました。特にほとんどが石油から作られている化学肥料は、収量確保のために大量に使用し続けた場合、エネルギー不足や環境汚染などの原因になることが考えられます。

化学肥料に多量に含まれる硝酸態窒素の問題もあります。化学肥料を散布することで、土壌に本来あるべき窒素量よりも過剰な窒素が供給されてしまうと、土壌中の窒素サイクルに影響し、地力の低下や植物の成長阻害などが起こる危険性があるのです。日本でも2016年4月から、地下水における亜硝酸態窒素の排出基準値が従来の250分の1にまで制限されるなど、窒素化合物が環境に与える影響の重大さは、社会的にも認知され始めています。


納豆菌の実力を3つの専門分野から検証

私たちメンバーは、こうした農業問題を微生物や化学の力で解決することができないかと考えて、まずは石川県内の農家や農場を見学しました。加賀野菜の金時草を製造している農家では、数十年前から納豆菌を使った土壌改善に取り組んでいました。経験的には納豆菌を散布すると金時草の品質は良くなり、害虫による被害も少なかったそうですが、それを科学的に実証できるデータはありませんでした。能登の大規模な農場では、土壌改善や地力回復、肥料の選定に苦慮しており、過剰な量の肥料を与えずに済む農法を模索していました。

プロジェクトではこれらの問題の解決法として、硝酸態窒素を栄養源として増殖する納豆菌に注目し、この性質を利用して、化学肥料や農薬による土壌への負担を減らす農法を確立すべく、実際に納豆菌が土壌や植物に与える効果や影響を調べることにしました。1つの専門分野だけの取り組みでは検証は難しいため、微生物・土壌分析・植物の各専門の先生方と、3つの班を編成しました。


A班は納豆菌の分離と散布用納豆菌の調整を担当しました。遺伝子解析などによって、自然界から硝酸態窒素を資化する(栄養源にする)能力のある納豆菌を分離し、最終的にそれらの入った液を市販の微生物製剤と同濃度に調整できるようになりました。


B班は土壌中の硝酸態窒素の濃度を測る方法を検討し、分光光度計を用いたパックテスト(色の比較による水質分析法)を応用した測定法を考案しました。これによって、モデル土壌中の硝酸態窒素濃度をより厳密に定量化できるようになりました。


C班はモデル植物のブロッコリースプラウトの栽培に市販の納豆菌を使って、新鮮重(重さ)、胚軸長(長さ)、ビタミンC量を測定し、植物への影響を調べました。その結果、新鮮重、胚軸長には差がなく、ビタミンC量が増加したことから、納豆菌には植物中のビタミンCを増やす機能がある可能性が発見されました。


プロジェクトの成果を農業の現場へ

今後は2018年5月に能登の大規模農場のハウスを一部お借りして、これまで得られた技術や知見を使った実地試験を行う予定です。実験室レベルで得られた成果が実際の現場でどの程度生かせるかについては、不安と同じぐらいの期待を感じています。
また、本プロジェクトでは月におよそ1回のペースで月例報告会を行い、各班の進捗状況の発表や質疑、今後の方針などを話し合ってきました。報告会には企業の方も参加され、そちらからのアドバイスも取り入れながらプロジェクトを進められたことは、私たち学生が地域との連携を学ぶ貴重な機会になったと感謝しています。以上で私の発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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