平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

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KITトピックス/活動報告(平成29年度)

北陸スマートアグリプロジェクト 環境土木工学専攻1年 笹原弘道
工学技術を農業に生かす手法を研究

「北陸スマートアグリプロジェクト」について、環境土木工学専攻1年の笹原が発表させていただきます。
まず農業の現状についてお話しします。日本の農業は就業人口が年々減っていて、就業者の平均年齢は上がっています。一方で新規雇用の若い就農者は増加傾向にあり、農業生産法人の数も増えています。このことによって、農業の新しい担い手は増えても、従来からのノウハウがうまく受け継がれないという問題が起きています。
新規就農者は生産管理のノウハウがないために、作物を美味しく作れない、うまく育てられないなどの悩みを抱えています。古くからの農家が培ってきた経験を数値化できれば、もっと効果的な生産管理が実現できると考える方は少なくないようです。

本プロジェクトはそうした農業ノウハウの数値化をはじめとして、工学の技術を農学に適用し、生産性向上につながる手法を開発することを目的としています。「農学と工学の連携」をキーワードに、化学・情報・土木の3つの分野から農業を活性化するための研究に取り組んできました。

農地の生産管理にドローンを活用

今年度にチャレンジしたのは、対象物を遠隔地から測定するリモートセンシング技術の農業への応用です。ドローンで圃場(田んぼ)を上空から撮影し、その画像から圃場の水面の高さや植物の元気の良さなど、生産管理に役立つ数値を引き出す技術を研究しました。
衛星画像ではなくドローンを用いる利点としては、雲などの遮蔽物がないことや現地の状況をリアルタイムで撮影できることがあります。ドローンの画像で稲の生育状況を判断できれば、広大な圃場の隅々まで足を運ぶ必要はなくなり、管理は容易になります。




実験で使用したドローン

連携企業として、志賀町の農事組合法人しなんたのご協力を得て、ご所有の圃場を実験場所としてご提供いただきました。しなんたの皆さんには今の農業の現場におけるニーズについて教えていただいたり、栽培用の種もみを見せていただくなど、農業の素人である私たち学生に対して、親切にご教授いただけたことを感謝しております。

圃場の水位と稲の植生を画像診断

実際の活動では2つの研究テーマを設定しました。
1つ目はドローンを活用した圃場水位計の開発です。米作りにおける水位の管理は、非常にデリケートなバランスを要求されます。水位が高過ぎると稲が腐ってしまうが、反対に低過ぎると育ってくれない。適切な水位を保つにはセンチ単位の精度が求められると聞き、この課題を解決する技術が必要だと考えました。
そこで私たちが製作したのは、図のような直角三角形の構造を用いた水位計です。水面に出ている三角形の大きさで水位が分かるため、ドローンの画像から水位を求めることができます。実験の結果、実際の水位が5.5センチだったのに対して、5.0センチ、5.2センチとミリ単位の精度を得ることができました。従来の水位測定機器の価格は数十万円にも達しますが、こちらはドローンと水位計を合わせても数千円の費用で実現できます。




2つ目はドローンを活用した収穫時期の選定です。
稲はタンパク質の含有量が低いと、お米として美味しくなると言われます。NDVI値とは植物の元気の良さを示す植生指数ですが、稲の場合はこのNDVI値とタンパク質含有量に相関関係があり、NDVI値が低くなれば、タンパク質含有量も低くなり、美味しいお米になります。そこでドローンで圃場1面を撮影した画像からNDVI値を求めることで、適切な収穫時期が判断できるのではないかと考えました。
結果として、収穫2~3日前にドローンの画像から求めたNDVI値と、収穫後の米のタンパク質含有量の間には、非常に高い相関性が得られました。適切な収穫時期を数値から知ることのできる可能性が証明されたと言えるでしょう。




低コストで効率的な生産管理の実現へ

ドローンの画像を元に、圃場の稲の3Dモデルを作成する試みも行っています。3Dモデルによって稲の高さが分かれば、稲が倒伏していたり、成長が悪かったりする場所を特定して、対処することができます。また稲が実って傾いていく様子も分かり、収穫時期の選定材料にもできるのではないかと考えます。オートパイロット機能による撮影についても検証しました。オペレーターが操縦する手間をかけることなく、指定した時間に自動操縦で現場へ飛んでいき、写真を撮らせることができれば、さらに効率的に情報を得ることができるでしょう。

この技術の将来像として、比較的安価なコストで揃う機器を用いて、屋内にいながらにして、広範囲の農地の様子を把握できる生産管理技術の実現を目指しています。また今回の取り組みをさまざまなメディアに取り上げていただいたことも、私たち学生にとっては貴重な経験になったと感じています。以上です。ありがとうございました。

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