平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択 地域志向「教育改革」による人材育成イノベーションの実践

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KITトピックス/活動報告

プロジェクトリーダーが語る
データ活用によるまちづくり支援

よりよい未来を創るための羅針盤となれ - 情報フロンティア学部 経営情報学科 教授 武市 祥司(地域共創イノベーション研究所 所長)

撮影/金沢工業大学「アントレプレナーズラボ」にて

金沢工業大学では、包括連携協定を締結する野々市市からの委託を受け、データ活用に関する共同研究を行っています。その拠点となっているのが平成26年に誕生した「地域共創イノベーション研究所」であり、野々市市の将来の施策や現状の改善点に結びつくデータ分析に取り組んでいます。

データ活用の新境地へ

-野々市市と共同研究を行うことになった経緯は?

平成27年に本学が所在する野々市市より「野々市市まち・ひと・しごと創生に係る人口分析基礎調査業務」の委託を受けて以来、データ活用共同研究に取り組んでいます。
委託の背景には、各地で進む人口減少時代への懸念があります。幸い、本学が所在する野々市市は、新しい街並みが次々と生まれ、人口増加を続ける数少ない都市です。しかし、国立社会保障・人口問題研究所によると、平成52年(2040年)を境に減少に転じ、65歳以上の人口は現在の約2倍になると推計されています。

人口の減少は市勢の活力をそぎ、地域経済へも大きく影響します。人口減少に対し、手をこまねいているばかりではなく、転換期を遅らせる手立てはないのか。また人口減少時代の到来に向けて今後どういったインフラの整備に力を入れるべきか ― その手がかりは、データを活用することで手に入れられるかもしれません。

近年、ビッグデータやIoTという言葉が脚光を浴び、データ活用が注目を集めていますが、現状、国や県の単位では行われていても、市町村、それも我々が手掛けているような「地区」という詳細なエリアで行われているケースは稀ではないかと認識しています。

膨大なデータを価値あるものへ

-プロジェクトはどのような形で進行してますか。

まず、本学の体制として拠点となる「地域共創イノベーション研究所」を設立した年から、幸いにして委託を受けることができています。自治体は膨大なデータを有してますが、分析のノウハウを持ちあわせてはいない場合がほとんどです。逆に大学はノウハウと設備はありますが、データが不足しています。両者が連携することで、自治体は市政に役立つ提言を得ることができ、学生はスキルを身に付けることができるWin-Winな関係が成立します。

〔地域共創イノベーション研究所〕

多様かつ複雑な地域の問題に対して、学術の面から解決を図る地方創生を促進するプラットホームを目指します。
研究所のミッションは以下の3点です。
○地方創生・地域活性化に関する 情報技術の支援
○地方創生・地域活性化に関する 人的支援と交流の場の提供
○地方創生・地域活性化に関する コンサルティング支援(地域貢献・政策提言)

プロジェクトでは、卒業研究としてオープンデータを利用した分析に取り組む学生が多く、実作業は個々の創意工夫に任せます。学生は「相手が求めるレベルのものを期日までに提出する」ことでスキルを身に付け、年齢も立場も違う人との折衝を通じてビジネスマナーを学びます。
平成29年3月に提出した最終報告書(資料1)のデータは、エクセルという一般的なソフトを利用しており、データを差し替えれば他の地域でも利用可能な汎用性を持たせました。


(資料1)野々市市に提出した報告書
地方創生を促す拠点として、データ活用の新境地を切り拓く

自治体、あるいは地域の企業との「共創」へ

-データ分析はどのように市政にフィードバックされるのでしょうか。

たとえば、野々市市在住の女性の年齢別のデータから出生率の推移を分析すれば、未来に必要な保育園のクラス数を予測できます。また高齢者の増加率がわかれば、それを基に介護の対策が計画できます。さらにエリアを狭め、地区ごとに分析を行えば、より有効な施策を立案できるでしょう。

今回は野々市市の経済において一定期間に行われた財・サービスの産業間取引を一つのマトリックスに示した「産業関連表」も作成しました。それによって、何らかのイベントを開催した場合の経済的な波及効果もある程度予測ができ、市の事業に役立てることができます。

―今後、どのような形でデータ分析を進めますか。

前述したように、プロジェクトで開発したツールは、元となるデータを差し替えれば他でも利用が可能です。将来的には自治体の枠組みを超えて、地域の企業が蓄積している顧客データの有効活用による産業の活性化も実現したいと考えています。
たとえば、生産工場が持っているデータをIoT(Internet of Things)化することで、工場内のラインが順調かどうかを「見える化」できますし、トラブルも未然に防げる可能性が高くなり、生産性の向上につながります。
もっと身近な日々の暮らしでは、地域の小売業がポイントカード等を通じて取得した顧客の購入履歴を利用して販促活動を行うこともできます。このような社会の実現をめざして、プロジェクト開始以来、定期的にフォーラムを開催し、地域の方々と「まちの未来」に対する意識を共有できるよう努めています。

人口の減少に歯止めをかけるのは難しいかもしれませんが、データから知見を導出すれば、減少をゆるやかなものにする手立てを講じることができると考えています。
私たちは教育機関ですから、基本は学生の「学び」に置きつつ、このプロジェクトがさらに進化し、地域の活性化の一助となることを願っています。

【これまでに開催されたフォーラム】

調査分析結果の一部を市民に公開し、それらのデータから将来の野々市のあるべき姿を市民が考え、その実現に向けての行動を考えるフューチャーセッションを行っています。

地域共創フォーラム ~自治体と大学のビッグデータ活用~
日時:平成28年2月23日
場所:野々市市情報交流館カメリア ホール椿
概要:(一社)オープン・コーポレイツ・ジャパン 東氏による基調講演/パネルディスカッション
ののいち創生市民フォーラム 「日本一楽しいまち・野々市市」を実現する
日時:平成27年7月25日
場所:金沢工業大学12号館 アントレプレナーズラボ
概要:オリエンテーション/情報工学科 中野淳教授による野々市市内の町別・校区別人口構成、人口移動の現状分析講演/未来思考グループディスカッション/発表

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