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私からは「街の達人発掘・発展学習プロジェクト」のご報告をさせていただきます。私の専門は人文系です。他のメンバーもそうですが、理工系に所属する人文系の教員が中心となり、地域と連携してどのようなことができるかという一つの例として話をお聞きいただき、ご意見があればぜひお聞かせください。
最初にこのプロジェクトの概要からお話します。地域住民のなかには、それぞれの分野で達人と言われる方が埋もれています。本プロジェクトでは、学生が主体となって、①地域のなかにいる街の達人を探しに行く ②コンタクトをとり、勉強会をしたいと交渉する ③テーマを設定し、本学を会場として勉強会を開く、というものすごくシンプルなプロジェクトですが、我々としては、学生が取り組みを通じ、いろいろと振り返る機会があると考えております。
そもそも授業で一生懸命課題をやっているだけでは気づかないこと、あるいは地域にこんなおもしろい人がいたんだという気づきなど、いろんな気づきのきっかけになることを目的としています。
また、自分自身の気づきはもちろんですが、「他人の気づきに気づく」ということもあります。君はそんなふうに面白いと思うのか、先生はそんなふうに思うんだなど。いろんなところで興味や関心、気づきの機会が持てるのではないかと思っております。
では実際に取り組んだとことについて、報告書をもとに説明させていただきます。プロジェクトではまず最初に、定期的にミーティングを実施し、それぞれの進捗状況を確認しました。学生にいきなり街に飛び出していって、おもしろい人見つけてきなさいと言っても難しい。初期のミーティングでやったことは、ちょっと気になっているんだけどまだ行ったことのない場所に行き、そこがどういう場所だったかを、みんなに報告してくださいという内容でした。まずは学外に飛び出してみようということから始めましたが、それでもなかなか難しかったですね。
その中で、2年生が中心となって売れるアイスクリーム店の調査を行ったグループがありました。1年生対象の必修科目に有機化学という授業がありますが、このグループは、その授業で調査結果を報告するところまでいたってくれました。
店舗に食べに行き、その後にインタビューをしたんですが、化学系の学生だけにそこでとどまらず、アイスクリームの成分分析をし、授業で発表してくれました。その方法が1年生は学んでいないことだったため、教員から説明がありました。これは授業で勉強していることを、社会のなかで実感できるいい機会だったと思います。
さらに物理的に市販されているアイスクリームの中には、有害性が指摘される物質が含まれていることもわかりました。そこで、その物質を使うのはどうなのかといった倫理的な問題をについても考えることができました。私はこの時の授業を見学しましたが、たいへん盛り上がったように見受けました。
ミーティングの様子 |
売れるアイスクリーム店について、 授業で報告を行った |
学生だけに達人探しを要求するのも難しいということで、今年度は調査と並行して教員が自分の授業に関連する達人を招き講演会をするいう取り組みも実施し、これまでに4回講演会を行いました。
1回目は「読書への誘い」と題して富山県の大島絵本館の館長を招きました。2回目は、学生に「広報するとしたらどうしますか」と問い、学生に広報の方法を考えさせましたが難しく、参加者が少ない結果になりました。
3回目は西田幾多郎記念哲学館の学芸員を講師に、市民はどのようなことを期待して哲学館を訪れるのか、哲学と社会はどのような関係にあるのかという内容を、哲学館の活動を通じて講演いただきました。この講演で哲学館が県内にあることを知った学生もおり、存在を知っただけでも意味があったと思います。
4回目が友禅作家の太田先生です。このときには作品を持参いただき話をしたこともあり、かなり活発な議論もありました。
こちらが講演会に対するアンケートの結果です。概ね達人の話は役に立ちそうだという回答を得ています。3回目の数字が低いのは、授業に取り入れいきなりアンケートをとったことに原因があります。それでも役に立ちそうだという回答もみられますし、講演会の活動は新聞にも紹介されました。
前学期の終わりごろになると、学生の口から「先生、このプロジェクトって何をしたらいいのですか」という言葉が出るようになりました。学生としては指示がほしいというか、なかなか自ら発掘してくることは難しいようでした。
我々も人に話を聞くことはあっても取材ということをやったことがないことを思い、プロのライターに講師をつとめていただき、4回にわたって講習会を行いました。
この講習会では、実際に学生が達人を見つけ取材をしました。その際にどうしたら自然な表情が撮影できるのかといった写真の撮り方についてもアドバイスがありました。
3人のメンバーが取材に挑戦し、発表を行ないました。一人は野々市在住の料理研究家の料理教室に参加し、その後インタビューしました。ほかの学生は本学の警備を担当する会社の社長と、白山市のパラグライダー教室の校長にインタビューしました。
学生たちはそれぞれインタビュー結果をまとめ、講師からアドバイスをいただきました。この経験を通じてコミュニケーション能力が身に付いたと思います。
また、ミーティングで本学のキャンパスが素晴らしいという意見があったことから、学内に居る建築の教授に設計の意図などについて話しを聞きに行くなど、身近なところに能動的な学びが生まれたりしています。
地域の方との接点が少ないのが課題ではありますが、引き続きともに学ぶ場をつくっていきたいと考えております。本日はありがとうございました。