KITの教育DX
取組1・学修者本位の教育の実践
「学生一人ひとりの学びに応じた教育実践」

取組概要

「入学前の学習歴や面接・学力試験等の入試情報」「出席やGPA・ポートフォリオ等の修学情報」「就活期間や活動内容といった就職情報」を統合し、「学生が能動的な学修に転換した端緒や学びを深めたポイント」、また逆に「修学につまずいた要因や学習意欲を無くしたポイント」といった学びのプロセスを明らかにする。解析結果は、本学が構築するLMSを通して教職員間で共有し、より高度な学びへの発展や、修学意欲を取り戻すといった学生の修学状況に適したアドバイスを行えるように活用する。また同時に、解析結果に基づき同様なアドバイスをAIシステムからも行う。このように、学生個々人の修学状況を分析し、それに応じて様々なプログラムを提供することで、学修者本位の教育を実践する。

取組計画

①修学データベースの統合とデータの分析

eシラバス (本学独自のLMS )を「入学教育」、「リカレント教育」まで拡張し、これまで蓄積されている入学から卒業までの情報を解析することで、「学びを深めたポイント」、「つまずいたポイント」を明確にして、データを整理する。この解析に基づき、教職員が効果的に学びを支援するための情報を提供すると共に、整理したデータを修学支援を行うAIの学習に利用する。これらの結果として学生一人ひとりに応じた教育を実現し、Society 5.0において活躍できる人材を育成していく。

②修学支援AIシステムの構築

整理されたデータによって学習したAIシステムが、修学状況を提示する「自己成長シート」を通じて、修学全体に関わるアドバイスを適切なタイミングで学生に提示する。各科目では、eシラバスを通じて学生の学修状況をモニタリングし、過去のデータに基づき、つまずきポイントを検出、その状況にあったアドバイスや補習教材をAIによるシステムが提示する。

取組実績

①修学データベースの統合とデータの分析

データベースの統合化

学生の学びに関するデータが保存されているデータベース群を、全てクラウド上にコピーしてデータレイクを構築し、各データを匿名化された学生データを中心に関連付けることで、幅広い解析を実現するためのプラットフォームを構築した。本データベースは日々更新されるようになっており、リアルタイムの解析を可能としている。

データ分析

構築されたプラットフォームを用いて、2004年から現在に至るまでの学生データを大域的に解析を行った。

GPA推移

過去18年分の全学生データに対し、①1年次GPAと進級後の2年次GPA、②2年次GPAと進級後の3年次GPA、③3年次GPAと進級後の4年次GPAの関係の解析結果。

※GPA(Grade Point Average)とは成績評価(S・A・B・C・D・F)をポイント化し、平均値計算することで得られる。

出席率とGPAの関係

過去18年間の全学生の出席率(横軸)とGPA(縦軸)の関係の解析結果。

科目Aの小テスト点数

科目Aの各小テストにおける、進級者と退学者の正答率の解析結果。

GPA別達成度レポート・1週間の行動履歴内⾔語のWord Cloud解析

1-4年次のポートフォリオに記載された学生の文章の解析結果。文章中に使われる名詞の使用頻度を文字の大きさで表現している。GPA上位グループは研究・活動のほか就職や企業を意識した活動を行っている。GPA下位グループは授業・課題・勉強といった言葉が多く、授業の理解に向けた活動が多い。時間の使い方の違いが見受けられる。

明らかになった事柄
  • 入学時の学力プロファイルと1年次のGPAの間に相関関係はほとんどみられない
  • 各学年のGPA間の相関関係が強いのに対し、累積GPAと就職先のプロファイル(会社の規模、平均年収)にも相関関係はほとんどみられない
  • 本学で学生がつまずき易い科目は数理系科目であり、その科目に対してLearning Analyticsを行った結果、どの単元でつまずいているのかが明らかとなった
  • GPAが下位の学生は、上位の学生に比べると学生生活があまり多様でない

BIツール( Qlik Sense )によるデータの可視化

BIツール(Qlik Sense)によって、一般の教職員が解析されたデータを閲覧したり、簡単な解析を行えるようにしている。

②修学支援AIシステムの構築

AIによる退学予想と支援コメントのフィードバック

ある学期の必修科目の成績と、出席率のデータを基に次の学期に退学する確率を予測するシステムを構築した。ある学生が退学する可能性が高い場合、XAI(eXplainable AI)の一手法である「SHAP(SHapley Additive exPlanations)」を用いて、その理由を特定し、各理由に合わせ、フィードバックコメントを自動で提示できるようにした。

つまづきポイントをカバーするアダプティブラーニング

データの解析によって、本学の学生がつまずき易い科目、単元があることが明らかとなっている。授業を進める上で学習内容の理解に不安がある場合、オンライン上で受けることができる支援システムを構築している。このシステムでは、各単元をシステムで学んだ後、確認テストを受け、解答に間違いがあると復習教材が提示される。その後、改めて確認テストが提示され、理解度が確認されると次の単元に進むことができる。このように、このシステムでは学生の進捗にあった教材が自動で提示されるようになっている。

その他の実績は 「学修支援」を参照