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[ 悪 / 善 ] 人はなぜ人を殺すのか

「悪」とは何なのか。ひるがえって「善」とは。

現代ほど、この問題が先鋭に問われている時代はないでしょう。政治、科学技術をはじめとする「善」の失落。対テロ戦争や宗教闘争、バイオ倫理に象徴される、善悪の境界の液状化。未成年の凶悪犯罪の急増。プロスポーツ、芸能界、ゲーム、そしてついにはIT経済の世界までを席巻した、「悪」のヒーローの台頭etc.。
社会規範と倫理の長期低落を嘆くのは、ただ旧世代の懐古趣味なのでしょうか。しかしそれは、近代文明の崩壊の予兆、はたまた生物学の必然なのかもしれません。グローバル化し振幅を増す未曾有の社会状況の中で、私たちは今これらの難問の前に、なすすべもなく立ち尽くしています。

そもそも悪/善の基準とは、ヒトという種だけに特殊なものなのでしょうか。動物界、たとえばチンパンジーの社会にも、逸脱行動はあるのでしょうか。またその逸脱行動が罪と判定され、罰を下されることもあるのでしょうか。
逸脱行動と言えば、ヒトの社会では、精神障害者の犯罪が社会問題化しています。多くの先進国で「責任能力(の欠如)」とそれに伴う「責任(免責)」とが法制化されています。が、その一方で、それを疑問視する声をマスコミが喧伝しているのもまた事実です。その背景には、どのような論理と論争の歴史があるのでしょうか。
大もとの倫理に立ち返ってみると、私たちはなぜ、人を殺してはいけないのか、という疑問が立ち現れます。なんだか、忘れてしまったような......。悪を悪と決める最終根拠はどこにあり、私たちの行動の究極の指針は、どこから得られるのでしょう。
これら学際領域を通覧したとき、私たち現代人の曇った目にも、何か縦糸横糸のようなものが見えてくるかもしれません。ヒトの本性は、果たして「悪」なのか、「善」なのか 。

[ルネッサンス ジェネレーション]では、10年目を迎える今年を機に、敢えてこの、最も困難で最もコンテンポラリーな問題に挑むことにしました。このテーマを考えるにあたり私たちは、絶対的な「善」を前提として悪を論じるようなありがちな方法論を放棄することから始めました。そして、「悪」の掘り下げから善を逆照射し、相対化することを選択したのです。人類学、霊長類学、司法精神医学、哲学という各分野からの本格派出演陣に、私たち監修者コンビも積極的に加わって、議論を徹底的に掘り下げるつもりです。
このイベントからの帰途、私たちと参加された皆さんそれぞれの心に、何らかの思考の種が芽生えることを切に願って、10回目の[ルネッサンス ジェネレーション]を贈ります。

 
監修者:下條信輔・タナカノリユキ
     
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