実施概要 内容+出演者 結果報告

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「悪」とは何なのか? ひるがえって「善」とは!?


近年多発する理不尽な殺人事件や、巷を騒がせているダーティーなヒーロー像を見るにつけ、ヒトの本性が「悪」へシフトしているのではないかという、茫漠とした不安に駆られます。そこで10回目を迎える今年は、あえてこの、最もコンテンポラリーでかつ困難な問題に挑むことにしました。ゲストには、人類学、霊長類学、司法精神医学、哲学、各分野から気鋭の本格派を迎えます。果たしてヒトの本性は「悪」なのか、「善」なのか 。白熱した議論にご期待ください。

 ・日時:2006年11月11日(土)13:30-18:00(13:00開場)
 ・会場:草月ホール 東京都港区赤坂7-2-21 草月会館B1F
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入場無料
 ・本プログラムは終了しました。
主催:金沢工業大学
協賛:
日本アイ・ビー・エム株式会社 / 富士通株式会社 / 株式会社東芝 /
株式会社映像センター/ サッポロビール株式会社 /
株式会社竹尾 / 凸版印刷株式会社 / 日本SGI株式会社
後援:財団法人日本科学技術振興財団

総合プロデュース:二飯田憲蔵(金沢工業大学)/ 赤羽良剛(BRAIN FORUM INC.)
 
■監修:
タナカノリユキ (アーティスト・アートディレクター・映像ディレクター)
下條信輔 (カリフォルニア工科大学教授、ERATO下條潜在脳機能プロジェクト/ 知覚心理学・認知脳科学・認知発達学)
 
■ゲスト出演者:
中谷陽二 (筑波大学大学院人間総合科学研究科教授 / 司法精神医学・精神病理学・
精神医学史)
中村美知夫 (京都大学大学院理学研究科助手 / 人類学・霊長類学)
永井均 (千葉大学人文社会科学研究科教授 / 哲学)
   
金剛地武志 (ミュージシャン・俳優)

 

   


<プログラム解説>

*内容は多少変更する場合があります。ご了承ください。



イントロ [ 現代は悪の時代か?]
出演:タナカノリユキ×下條信輔

善意よりも、明らかに悪意の目立つ時代です。それは単に「善」の枠組が壊れかけているということではありません。 たとえば敵対的買収によるIT企業の急成長、あるいは遺伝子診断や遺伝子治療など。こうした現代的な事例に見られるように境界は空洞化し、「善」と「悪」とは両義性を持ちはじめています。そして今や「善」の正体は、見極めようと目を凝らすほどに朧げとなり、ときとして偽善めいてくるのです。そこで思い切って視点を転換してみようと思います。ーー「悪」は「善」に先立つ。それゆえ「悪」を深く理解することで「善」も見えてくるーー。そんな仮説の下、監修者の対論、ショートレクチャー、ショーイングなどを織り交ぜながら、このテーマに辿り着いた動機を披露します。



基本レクチャー(1) [ いつ、誰が、犯罪者になるのか ]
出演:中谷陽二


精神鑑定で出会う人々の語りから出発し、「犯罪者」と「非犯罪者」を分かつ境界の曖昧さについて考えます。19世紀の犯罪人類学が提起した「生まれつきの犯罪者」、一面においてその現代版とも言える「サイコパス」の概念に焦点をあて、まず「罪を犯すべく運命づけられた人間」というカテゴリーについて批判的に検証。次に視点を逆転させ、特殊な状況下では誰もが邪悪な存在になり得ることを、心理実験、戦闘、カルト、人質、強制収容所といった極限状況における人間行動を例に論じる。プライバシーに抵触しない範囲で鑑定のケース事例も紹介します。



朗読 [ 悪を問う]
演出:タナカノリユキ / テキスト:下條信輔 / 朗読:金剛地武志


悪と善についての素朴な疑問、意表をつく問い、根源的な疑い。それらを可能な限り集めて構成した問題提起です。金剛地武志の朗読とタナカノリユキの光の演出でお送りします。



基本レクチャー(2) [ 自然界に「悪」は存在するか ]
出演:中村美知夫


動物界には、同種の他個体を殺すという現象はかなり広く見られます。チンパンジーには、同種のアカンボウを殺し、食べるという現象が知られており、また、複数のオスが共同で隣りの集団の個体を襲って殺すこともあります。しかし、生物学的にはこういった現象が「悪」であると判断することはできません。何が「悪」であるかは、あくまで社会的・心理的に生成されるものだからです。



基本レクチャー(3) [ 悪は善である ]
出演:永井均

「悪」には二つの対立する意味がある。「悪い天候」という場合の「悪」と「悪い行為」という場合の「悪」である。しかし、この対立は意外と見抜かれにくく、意外に知られていない。前者の「悪」はそれ自体としての悪だが、後者の「悪」は、道徳的には悪であっても、それ自体としてはむしろ善である(逆に道徳的な善は、それ自体としてはむしろ、悪である場合が多い)。どうして、そういう逆転が起こるのかを、考察したい。



総括討論 [ 悪と善の基底に見えてくるもの ]
出演:中谷陽二×中村美知夫×永井均×タナカノリユキ×下條信輔(司会)


チンパンジー社会における攻撃性や逸脱行動についての、中村報告。精神障害と責任能力について司法精神医学の立場から論じる、中谷報告。倫理の存在論的/認知論的基盤を自在に論じる、永井報告。これらは言わば、科学と社会において「悪」の現象がピラミッドのように尖鋭化したピークにあたる問題群です。それらを一覧したとき、基底に横たわる共通構造とは何でしょうか。またそうした「悪」の構造から逆照射される、「善」の新しい姿形とは。3人のゲストに監修者2人も絡み、忌憚のない討論で掘り下げます。


 
 
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