空間情報プロジェクト

空間情報プロジェクトの中で取り組むここのテーマの中にもたらされる環境問題の視点を以下に示します。

①リアルタイムGIS・GPS・ICタグを用いた高度空間情報社会の実現に向けた提案
 ならびに視覚障害者のための触地図利用促進の提案

環境には自然環境、生活環境、人工環境など様々な環境がある。空間情報工学はこれらの環境に対して「地図」(電子地図)あるいは位置情報をキーワードに密接に関連している。我々のテーマは屋内外のシームレス測位を実現することにより、少子高齢化が進む日本において、身体的に障がいのある方々、高齢者の方々に安心・安全・快適を提供するためのツールを提供することを目指している。ICタグは物流の世界では完成された技術であるが位置情報を補完するための活用についてはほとんど例がない。アクティブタグおよびパッシブタグ両者の利点を生かした活用方法について実証実験を実施している。視覚障がい者のための触地図についても、2009年に国土地理院が電子国土を用いて提供を開始した触地図作成システムの活用法について検討している。

 

②気球を利用した環境観測システムの開発

地表面の環境(例えば森林や樹木など)の変化を把握する場合,上空から画像を取得し,それを解析するリモートセンシング技術は有用である。例えば異なる観測日のデータの変化を調査すれば植生の変化など環境変化を抽出することができる。しかしこの方法は2次元の面的な情報の比較でしかない。地球温暖化といった環境問題の視点からではこの機能だけでは十分ではないと考えた。なぜならば,上空から見て同じ面積でも,樹高が異なればCO2の固定量は異なるからである。そのため,将来植物のバイオマス量の計測が可能になることを念頭に地表面を3次元で計測する方法を考案することにした。 3次元情報を取得するための観測システムとして,どのようなプラットホームを採択すべきか,またどのようなセンサを搭載し,どのように制御するかがシステム構成上の課題となった。

 

③建築分野における3次元データ活用技術の活用
 1.木造伝統建築の改修工事における3次元レーザー計測データの活用
 2.歴史的景観保全のための環境アーカイヴ支援技術の構築
 3.建築教育におけるBIM(Building Information Modeling)アプローチの導入

上記のテーマはいずれも、成果物そのものに対する質向上ではなく、そのプロセス(設計・生産や維持・保全の活動)自体の質を高めようとする研究です。環境問題に対する取り組みとしては、既存の建築物や町並みに対してのきめ細かい分析や保全手法の開発が不可欠であり、新築物件に対しては効率的で無駄のない建設手法の開発と普及が求められています。建物のライフサイクルにおいて、ニーズの高い部分から一つ一つそのような建設活動の質向上を行う事がIP(Integrated Practice)に繋がり、引いては資源の有効活用や建物の品質向上に繋がっていくと考えています。